我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

文字の大きさ
153 / 574
第二章 反撃のサナフ教国

第百五十二話 クーデター前日(一)

しおりを挟む
 あの異常な場所に関する調査は、結局、我輩が見たもの以上のことは分からず、迎えに来てくれたディアムとともに帰って、終わりとなった。ディアムとバルディスの見解では、何かを喚び出そうとしているのではないかということではあったが、それが何かは分からなかった。
 それに、あの場所にあった良くないものの気配の正体も分からず仕舞いである。何かが居るような気配はしていたのだが、どんなに探しても生きているものは何も居なかった。もしや、怨念が漂っていたのであろうかとも思ったものの、我輩、何も見えなかった。だから、きっと、本当に何も居なかったのだとは思うのだが、どうにも引っ掛かって仕方なかった。


「にゃー(うむむ)」

「そんなに唸ってどうした? タロ? またあの場所のことか?」

「にゃっ。にゃあ(そうなのだっ。どうしても、あの気配が気になるのだ)」


 異常な場所から帰ってきて、すでに二日が経っている。つまり、ラーミアとリリナがここを発って一週間が経った計算になる。そんな今、我輩はバルディスとともにルーグ砂漠を歩いていた。


「とはいってもな。ディアムも確認して何も居なかったとなると、本当に何もないとしか言いようがないぞ?」

「にゃあ……(それは分かってはいるのだが……)」


 どうしても、腑に落ちない。しかし、このことばかりを考えてもいられなかった。


「バルディスっ。ちょうど良かった! これから話し合いを行うそうなんで、一緒に行きましょう」

「あぁ、良いぞ」


 周辺の警備を行っていたはずのジルクが駆け寄ってそう言うと、バルディスは快く返事をする。


 ふむ、話し合いなら我輩も一緒に行かなければならないのだろうか?


 ひとまずは、邪険にされることもないだろうと、我輩、二人の後を着いていく。幻術で隠されていたドーム群が見えてきて、ここでの生活に慣れてきたレジスタンスの面々をチラホラと見かけるようになってくる。


「ロッダ様。バルディスとタロを連れてきましたよ」

「あぁ、入れ」


 ドームの入り口で丁寧に声をかけたジルクは、ロッダの答えに応じて入室する。そして、どうやら、我輩も呼ばれていたのだということが分かり、少しだけホッとする。人間の話は分かりづらいが、それでも除け者にされるのは嫌なのだ。


「呼び出してすまない」

「いや、俺達もちょうど戻るところだったからな」

「にゃー(獲物はしっかり狩ってきたのだ)」


 我輩の異空間の中には、今日狩ったばかりのジャイアントスコーピオンが入っている。我輩達は、このレジスタンスの食料調達をしていたというわけだ。

 ロッダとノルディが椅子に腰掛けている様子に、バルディスとジルクも同様に席に着き、話し合いが始まる。


「それで、決まったのか?」

「……あぁ」


 否。話し合いではなかった。それは……。


「明日、クーデターを決行する」


 決定事項の通達だった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


セイクリア教国からの援軍を待たずしての決行。

はてさて、クーデターは上手くいくのでしょうかね?

そして、すみませんが、明日は更新できそうにないので、次の更新は明後日となります。

それでは、また!
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...