我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第三章 セイクリア教国の歪み

第二百七話 悲しい定め

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「ふにゃん? (終わったか?)」

「にゃっ(うむ、終わったのだっ)」


 セイクリアから注意を受けた我輩は、ひとまずおもしろ現象がセイクリアの仕業なのだと分かり、すっきりした顔でブチに返す。


「……ふにゃ? (……まだ、色々探すのか?)」

「にゃあ(当たり前なのだ)」


 ブチは何やら帰りたいらしいが、我輩、ここで情報を掴みたいのだ。申し訳ないが、我輩が迷子にならないために、ブチには一緒に居てもらいたいのだ。

 我輩、また通気孔を見つけてピョンっと飛び上がる。この世界に来てから、我輩、良く通気孔を利用するようになったなと思いながら、ズリズリ進むと、今度は前方に人の気配がした。


 うむ、慎重に行くのだ。


 まずは、顔をちょこんっと出して、左右の確認。


 ベッドに一人、誰か居るのだ。


 しかし、そのベッドの住人は眠りについていて、我輩に気づく様子はない。これは、放っておいても良さそうだ。
 次に、我輩、自慢の鼻をヒクヒクとさせ、異常がないかを確認する。


 ……良い匂いがするのだ。


 どこからともなく漂ってくる料理の匂いにうっとりとした我輩は、途中でハッと我に返り、最後の確認を、耳をピンっと張って物音の確認をする。


 寝息しか聞こえない。大丈夫そうなのだ。


 そう判断すると、我輩、頭をググッと前に出し、前足を使って体を押し出す。そうして、地面に華麗な着地をした我輩は、小さな声でブチに呼び掛ける。


「にゃー(ブチ、ここは安全なのだ)」


 そう言えば、必ず返事が来るはずで、我輩、ブチの言葉を待つ。しかし……。


「……ふにゃぁ(……詰まった)」


 返ってきたのは、泣きそうなブチの鳴き声だった。
 どうやらブチは、我輩がサリアーシャと初めて会った時と同じ現象に苛まれたらしい。我輩、どうしてもその過去を思い出して、辛い思いが込み上げる。プリティーなボディが詰まるのは、とても悲しいものがあるのだ。


「にゃ。にゃー(分かったのだ。我輩が、少し穴を広げるのだ)」


 通気孔は、我輩達にとって楽しい場所であると同時に、せまいみちが仕掛けられている場所でもある。同胞が罠にかかったとあれば、助けるのが紳士の勤め。我輩、『悪食』の能力で、ブチをすぐさま悲しい思いから救出する。


「……ふにゃ(……ありがとよ)」

「……にゃあ(……どういたしましてなのだ)」


 通気孔から無事脱出したブチは、我輩の目を見て全てを悟ったような表情になりつつもお礼を言ってくる。


 ……悲しくなんて、ないのだっ。


 そのうち、自分の体がプリティー過ぎるという悲しい定めの下、通気孔に詰まった者を集めた、『通気孔に詰まった会』でも結成した方が良いのだろうかと意識を飛ばしながら、我輩、ひとまずは情報収集のために動くことにするのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


……今回のタイトルは、『デブは辛い』ということを言いたかったものになります。

初めてタロが通気孔で詰まったお話は、『第五話 必殺っ』を参照してください。

それでは、また!
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