生殺与奪のキルクレヴォ

石八

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第1章

リーデの街巡り

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「ところでさ、1つ聞きたい事というか確認があるんだけど……いいかな?」

 ふと思い出したのでとある確認を得るために悠真は不意に話しかける。

 レナは少しだけ不思議そうな顔をするが、すぐさま真面目な表情になり、コクリと頷いた。


「実を言うと僕は神の塔を全攻略しようと思うんだ。だから血なまぐさい戦闘だとかみすぼらしい野宿を強制することになる。それでもレナは着いてきてくれるかな?」

 レナは少し考え、紙を見せてくる。
 しかしその返答はレナにとってあまり当てはまらなかったのか、最初の文だけを読んだところでレナに取り上げられた。

 軽く見ただけなので曖昧なのだが、そこには着いていくことに対して問題はないという文と神の塔を何故攻略するのかと書いてあった気がする。

 再びレナが紙を見せてくる。
 そこには着いていくことに対して問題はないとだけ書いてあった。


 レナなりに余計な詮索はしない方がいいと考えたのだろうか。
 実際まだ自分が『ルザイン』だと誰にも教えていない。

 個人的な考えだが、自分の身を明かすのは信用できる人以外にしておいた方が得策だと言える。

 実際ルザインという存在が有名なのか、はたまた童話的な存在かは不明だ。

 だが異世界、いや別世界から来た者だとバレたら明らかに厄介事に巻き込まれる可能性は高くなる。

 ──正直厄介事は個人的に嫌いだ。
 今だってデッグと契約したことを全て捨て、レナを連れて何処かへ逃げ出したい気分だ。

 ……さすがにこれは身勝手か。


「さすがに長居は迷惑かな。僕はもう行くね?」

[はい、ありがとうございました。迎えに来るまで待ってますね]

 相変わらず返答が早い。
 それにそんな文にそんな顔で言われたら帰りたくなくなってしまうじゃないか。


「じゃ、またね」

 ドロックモンキーが復活するのはあと1週間後だ。
 それまでダンジョンを潜るのもありだが……しばらく休養を取ってもいいかもしれない。

 手を振るとレナは小さく振り返してくれる。

 心の奥に出来た謎の感情を押し殺しつつ、デッグに一言お礼を言い、悠真は賑やかな大広間へと歩き出した。



────────────────



 悠真が大広間に出ると、丁度ショーが終わったようで、拍手喝采が巻き起こっていた。

 別にショーなどに興味はないためチラリと横目見てピエロを確認するだけで終わった。

 見た目は白塗りの肌に赤いメイク。
 まるでどこかのファーストフード店のマスコットキャラクター? のような容姿だった。

 後ろポケットから水入り瓶を取り出して喉を潤す。


「そういえばこの石だけ使わなかったんだっけ」

 モンスタートラップの部屋で赤い石と青い石を全て使ってしまったと後悔していたのだが、水を補充するための青い石が1つだけ残ってることを確認した。

 そして1つの選択肢が悠真の頭の中を過ぎる。


 この石は換金用の宝石だったはず。
 つまりこの石を売れば多少だがお金に替えることが可能ということだ。

 そして過去にあったことを思い出した。

 ギルドはモンスターの素材を買い取ってくれる。
ならこのような換金用アイテムも買い取ってくれるはずだ、と。

 悠真は微かな記憶を頼りにし、この街にある[炎水]という名のギルドに向かうのであった。



──────────────



 30分ほど迷い、なんとかギルドを見つけることが出来た。

 悠真は扉のない玄関口を潜り、カウンターへと向かう。

 そこにはこの間会話を交えたカウンターのお姉さんが悠真に気づき、柔らかな笑顔になる。


「あなたはこの間の……もしかして冒険者登録ですか?」

「いや、冒険者登録はしないって決めました。なので今回はダンジョンで手に入れた物の換金をお願いしたいんです。モンスターの素材以外でも大丈夫ですよね?」

 悠真の疑問にお姉さんは「大丈夫ですよ」と答えてくれた。

 カウンターに換金用の石を取り出そうとしたのだが止められ、どこかで別の場所へと案内された。


 案内されている途中、ギルドの廊下にクエストとは違った紙色の紙が沢山張り出されていた。


[非道の強姦魔:ドグ・ジグラー 報酬金36万クレ]


[最近現れた大剣と盾を持つ新人狩りの2人組:名は不明 報酬金1人15万クレ]


[強者を狙い勝負を仕掛ける道化師:名は不明 報酬金58万クレ]


 なるほど、つまりこの紙に書かれている者達は悪事を働かせた賞金首らしい。

 1番上のドグ・ジグラーは仮面をしているが顔写真はある。
だがその下の2つは写真どころか名前も不明なので防ぎようがないだろう。

 そんなことを考えているとカウンターのお姉さんに早く来るように呼ばれ、その場を後にした。



 案内されて着いた所はかなり広めの空間で、何やら不思議な匂いが漂っている。

 中に人が沢山居て、モンスターの素材を広げている者、素材の売買値段を上げてもらうための交渉をしてる者がいた。


「リコルが此処に顔を出すなんて珍しいな。なんかあったか?」

 案内してくれたお姉さんに『リコル』と呼ぶのは大柄で、とても筋肉質な男だった。

 腕がとても太く足も筋肉質だ。
 そしてはだけた胸元には何かに斬られたような跡が出来ており、昔は冒険者として活動していた可能性もある。


「紹介しますね。こちらがバルバさん。モンスターの素材からダンジョンで見つけた宝物や装備等を適当な値段で値踏みしてくださるとても素晴らしいお方です」

 リコルの紹介に少し照れているのか、横頬を指で掻きながら高笑いしていた。

 バルバの紹介が終わったリコルは、丁寧にお辞儀をしてカウンターへと帰ってしまった。


「紹介があった通り、儂はバルバだ。お前さんは……『キサラギ ハルマ』ってんだな。さぁ、早速こっちで換金してやる」

 そのままバルバの後を素直に着いていく。

 ところで何故自分の名前が知られているのだろうか?
 リコルにも話していないし自分の名を明かした記憶もないのだが。


「お前さん、不思議な顔をしてるな? ははっ! 最初はみんな驚くってもんよ」

 クルッとこちらへ振り向き、バルバは目をカッ! と開く。


「これが儂のUSユニークスキルの[鑑定眼かんていがん]だ。普通は素材の種類や物の価値を見定めるんだがちょっと工夫して人の名前までなら見れるようになったってことだ」

 微かだがバルバの右目が赤く光っている。
 この状態が鑑定眼の発動時なのだろう。

 それよりも便利なスキルだな。
 だが今の自分に物の価値なんて分かってもどうしようもない。

 個人的には物の名や詳細が分かるようなスキルが欲しいところである。


 そう考えていると、バルバは小さな机と椅子がある所に案内してくれた。

 そこに素材を出せと言われたので、悠真は青い石を1つ。

 そして腕にはめている黒い金属で出来たガントレットを取り外し、机に並べた。


「これは水魔石だな、大きめは少し大きい位、だが状態が良いから1つ400クレだな。このガントレットは……黒鉄だな。売れば2万4000クレになるが今のお前さんの装備なら売らない方が得策だな」

 確かにその通りだ。
 短い間だがこのガントレットにはかなり助けられた。

 とりあえず水魔石を売って400クレを受け取り、ガントレットを腕にはめた。

 そして袋から黄色い瓶の回復薬を取り出そうとしたが、何かあった時のためにとっておいた。


「その袋はアイテム袋か! 透明な石が付いているということはEランクのアイテム袋だ。……どうだ? 内容量は減るがFランクのアイテム袋に交換すれば5万クレは出せるぞ。金が欲しいならな」

 そしてバルバは石が付いていないアイテム袋を取り出して机に置いた。


 この案はかなり良いものだと個人的に考える。

 確かに内容量は減る。
 だがFランクのアイテム袋の最大容量は10kgであり、十分な性能だろう。

 今は無一文なため、食費も無ければ宿泊料金も無い。
 それにもしドロックストーンを納品できなかった場合の資金集めと考えてもいいだろう。


「そうですね……バルバさんの提案を呑もうと思います」

 そう言って悠真はアイテム袋から回復薬を全て取り出し、空になったアイテム袋をバルバに渡した。

 そしてバルバからFランクのアイテム袋と5万クレを受け取り、回復薬を再び収納した。


「ところでお前さん。これから何をするんだ? ギルドに登録して冒険者稼業か?それとも商人になって商売でもするのか?」

 冒険者稼業に商人……か。
 正直どちらにも興味はない。

 自分の最終目標は神の塔を全て攻略し、魔王を倒すことだ。
 そして今の目標はレナをデッグから買い取ることである。

 ルザインとして一方的に呼ばれたため、神の塔なんて無視してこの世界を謳歌してもいいのだ。

 だがせっかく大きな目標が出来たのだ。
 それに今まで何事にも逃げてきた自分を戒めるチャンスだろう。

 まぁ、とりあえず神の塔を攻略しないとしてもレナを助けることは第1優先事項である。


 なので悠真はバルバに神の塔を攻略することが目標だと答えた。


「神の塔って……あの神の塔か。あれはルザインっていう勇者一行以外の者は攻略した前例が無いらしいぞ? それでもお前さんは挑むのか?」

 ルザインの存在を知っているのか。
 つまりルザインは神話だとかではなく、童話に近い昔話てきなものに出てくる者達なのだろう。

 バルバの目を見て悠真は無言で頷く。


「それでも……自分には目標があるんでその目標を成し遂げるために神の塔を攻略するだけです」

「……そうか。お前さんの目に嘘偽りは無いようだな。儂は密かに応援しているからな!」

 バルバに背中を押され、お礼を言うと他に仕事があるのかすぐに立ち去ってしまった。


 ギルドを出ると空は綺麗なオレンジ色に染まっていた。

 悠真は体を休めるために宿へ──ではなく、心もたない武器を変えるために武器屋へと向かった。



────────────────



 カンッカンッと金属を打つ音が響く。
 工房内を除くと、汗を流したながら必死に金槌を振るうドワーフの姿があった。


「む? お客さんか! ちょっと待ってな! もうすぐ終わるからよ!」

 悠真に気づいたドワーフは、金槌を打つ手を止めずに顔だけこちらに向け、待つようにと言われた。

 この武器屋の名前は『オプロの武器屋』という名の安直な名前だった。

 予想だがこの武器屋の店主の名はオプロというのだろう。

 オプロは打ち終わった武器を白い液体に浸けて水場はと運んでいく。


「どわっ!?」

 この街に来た時にも見た豪快な転びを見せて液体と武器を街に流れる水場に落とす。

 武器と桶を慌てて回収するオプロ。
 本当にこの街の水って飲んでいいのだろうか。

 このようなものを見てると不衛生だとしか考えられなくなる。


「すまねぇな! 俺はオプロってんだ! お客さん、今日が初めてだよな? ここでは武器の購入と武器の発注、つまりオーダーメイドが出来るぞ!」

 武器の購入は既に作られた武器をお金を払い買うことで、発注はお金と素材、そして武器種を指定することで武器を手に入れることだろう。

 悠真は武器の購入と言うと、オプロに蒸し暑い工房内へと案内された。


「ちょっと失礼するぞ」

 そう言われるといきなりオプロに腕や肩などを揉まれるように触られる。

 そして何か考えているのか顎を指に置き、そして工房内へ向かっていってしまった。



 そして待つこと約5分。
 オプロは武器を3本抱えて持ってきてくれた。


「お前さんの筋肉ならこの2つの短剣がオススメだ。そしてあまりオススメはしないが重めの大剣を持ってきた」

 1つ目の短剣は装備しているガントレットと同じで黒鉄で出来た短剣だ。

 2つ目の短剣は白く、1本目の短剣よりも長めの短剣であり、素材は白鉄というらしい。

 大剣は持ってみたのだが重すぎて振るうことは出来なかったため、オプロに返上した。


「この大剣を扱うのはまだ後だな……ちなみに黒い方は2万クレ、白い方は2万3000クレだ。白い方は長いだけでなく、黒い方よりも頑丈で硬いのが特徴だ」

 白鉄よりも安くて軽く、そして扱い易い黒鉄の短剣を選ぶか、黒鉄よりも高めだが長くて頑丈な白鉄の短剣……悩みどころだ。


「そうだな、じゃあ……黒鉄の短剣にします」

 選んだ理由は軽めで扱い易いからである。
 あとは白よりも黒の方が好きという理由もあるのだが。


 その後、オプロに2万クレを払い、黒鉄の短剣を受け取り悠真は武器屋を後にする。

 そして悠真が向かったのは体を休める宿ではなく、そのままリーデダンジョンへと赴いたのであった。



















如月 悠真

NS→暗視眼 腕力Ⅰ 家事Ⅰ 加速Ⅰ 判断力Ⅰ 火属性魔法Ⅰ 広角視覚Ⅰ

PS→NOSKILL

US→逆上Ⅰ

SS→殺奪
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