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第2章
使命
しおりを挟む[ハルマさま、私これがいいです]
レナが持ってきた小短剣。
白鉄製で悠真の持っている黒鉄よりも頑丈で切れ味がいいのが売りだが先ほどのボウガンの方が何倍も強いはず。
それなのにレナはボウガンを選ばずに2本の小短剣を選んだ。
もしかしたら高い買い物は出来ないと遠慮をしているのだろうか?
「それがいいならいいけど……ボウガンはいいの? お金はあるし遠慮しなくてもいいよ?」
レナは「遠慮はしてない」と言わんばかり首を横に振る。
その2本の小短剣は別に特別なスキルも無ければ強い武器というわけでもない。
軽い力で素早い連続攻撃を繰り出せるのが特徴な武器なのだがリーチが短いためかなり接近しなければ敵と戦えない。
全長は柄と刃を合わせて約50cmほど。
悠真の武器よりも長さが半分以下なため、どうしても悠真よりも前で戦うことを強いられてしまう。
それに比べてボウガンは威力も高いし遠距離攻撃もできる。
しかも弓矢の補充や装填に無駄な力を入れる必要が無いため誰でも扱えるのだ。
レナは身体能力が高いため動体視力などもかなりあるはずだ。
その点を踏まえてもボウガンの方が良さそうだが……
[ハルマさまのお考えの通り、私にはボウガンが合います。しかしこのボウガンを買わない理由は私なりに色々あるんです]
「買わない理由……か。そういえばこのボウガンに使われる弓矢ってなんか細いし矢尻が鋭いよね。オプロさん、この弓矢ってボウガン専用ですよね?」
悠真の質問にオプロはゆっくりと頷く。
ボウガンという武器。
これは射出時に弓矢へかなりの負担がかかる。
そのため弓に使われる弓矢を放つと途中で折れたり軌道が大きく曲がることがあるのだ。
そのため作られたのは弓矢のベースとなる木の部分を軽い黒鉄にし、矢尻の先端に頑丈で硬い金属を混ぜるという工夫をし『強化型弓矢』を開発した。
その結果真っ直ぐ飛び、負担がかかっても折れないという素晴らしい弓矢が完成したのだが、問題はコストパフォーマンスの悪さにあった。
敵に命中すれば回収することができるのだが、外してしまえば紛失してしまうし、ダンジョン内で使用して外してしまえば壁に命中し矢尻が割れて使い物にならなくなる。
そもそもそれ以前の問題でこの弓矢は値段が高いのだ。
全体に金属を使っているので1本辺りの値段が安くても1000クレと馬鹿にならないのだ。
遠くの敵を倒す時に紛失する可能性を考えたり、弓矢が使い物にならなくなったら再び購入する必要がある。
それはとてももったいないことなのだ。
[あとは近距離戦での弱さですね。遠距離では強くても近距離ではどうしてもぶれますし外す確率が高くなります。なので私はボウガンよりもこの小短剣を選びました]
なるほど、レナもレナなりの考えがあったんだな。
「ではこの白鉄の小短剣を2本ください」
一旦オプロに武器を渡し値段を教えてもらう。
その値段は先ほどレナの服に使ったときよりもとても安いものだった。
「丁度だな……よし。購入ありがとな! このボウガンはしばらく眠っててもらうかな」
オプロがアイテム袋に武器をしまっていたので手伝おうとしたら『手伝わなくてもいい、お客様だからな』と言われ追い払われてしまった。
レナは小短剣を購入時に付いてきた皮で出来た嚢を腰に装着して収め、何度も抜いては収めてを繰り返していた。
「どう? 馴染む?」
それに対してコクリと頷くレナ。
すでにオプロはまた冒険者と雑談するために反対側に行っていたため、軽く会釈をして武器屋をあとにする。
時はもうすぐ夕方になる頃。
いつもならダンジョンに潜っているが今日はレナが奴隷屋から出た日なので控えよう。
悠真ゆっくりと街中を寄り道しながら副休亭に向かい、自室へ戻ったあとレナと2人で再びぎこちないコミュニケーションを繰り返すのであった。
-ディスヴェルク王国 オーベル城-
「もっと敵の懐に潜り込むように! そして急所である頭や胸を狙うように! モンスターは待ってはくれないぞ!」
いつもは穏やかなクリードの怒号が飛び交う中、2-3の生徒は皆集中して剣の訓練に励んでいた。
ある者は基本に忠実で攻めと守りのバランスをとる者。
ある者は自己流の構えで問答無用に切りかかる者。
そしてある者はスキルを駆使して相手を翻弄する者もいた。
「小林くん、なかなかやるね……!」
「和田こそな……!」
そんな中群を抜いて剣の扱いが上手い2人が鍔迫り合いを繰り広げていた。
木刀同士が衝突し、乾いた木の音が鳴り響き、谺響する。
それは勇者である和田と悠真に完膚なきまでに叩きのめされた小林の試合である。
いつもはサボり癖のある小林だが、悠真との試合で負けたことをきっかけに人1倍努力をした。
1人で夜な夜な闘技場を借りて素振りをしたり、クリードに自ら稽古を頼むなどとかなりの努力家になった。
その努力が実を結び、今では『聖剣術』を持つ和田といい勝負をできるまで成長した。
「決着をつけさせて貰うよ! 『勇者』!」
『勇者』のSSを持つ和田が体の後ろから眩い光を放出して目眩しをする。
『聖光』とは『勇者』の中にある『聖属性魔法』の一種で、本来は敵を浄化するために使うスキルである。
和田はその眩い光を利用して小林の意識を逸らそうとしたのだ。
だが、小林もそれで終わるほど弱くはなかった。
「『転移』!」
光を浴びつつも小林は剣を振り下げながら和田の真後ろに回り込む。
前まで目をつぶりながら止まってないと発動しなかったのだが、辛く苦しい訓練のおかげで精神が強くなり、任意のタイミングで転移できるようになったのだ。
問題点は転移する距離、転移する物の質量に比例して魔力が消費されることである。
「っ!」
真後ろに回り込まれたら普通はそのまま攻撃をくらってしまう。
だが和田は決して諦めることはなく、体を無理やり捻り小林の木刀を迎え撃つ。
しかし、小林の手には木刀が存在していなかった。
「痛っ!」
そう、小林は自身と木刀を同時に転移し、自分は和田の真後ろ、そして木刀は和田の真上へと転移させたのだ。
決着が着くと見ていた生徒達が大きな拍手をする。
そして倒れた和田に小林は手を差し伸べ、ゆっくりと立ち上がらせた。
「相変わらず和田は真面目すぎるんだよ! もっと色々と考えなきゃ」
「はは……さすが小林くんだ。でも、次は負けないからね!」
最近2人は何回も何回も試合をしており、勝ち負けの数はどちらもほとんど同じだった。
しかしよく数えると小林の方が勝ちが2回ほど多い。
これは努力の結果なのか才能が開花したかは不明だが、この成長ぶりにクリードはとても驚いていた。
「(西園寺さん見てたかな!?)」
小林がここまで努力する理由はほとんど好意を寄せている西園寺に好かれるためである。
だが当の本人は額に汗を流しながら必死に素振りをしていた。
「蓮花ちゃん、昨日から本当に元気になったね?」
蓮花に話しかけるのは女子の中で一二を争う剣の腕前を持っている箒梨奈だ。
梨奈は蓮花と小学校から高校までずっと同じで、蓮花にとって1番親しい友達であった。
「うん! みんなに迷惑かけちゃったからさ……だから私は今までやれなかった分を取り返すよ!」
何故前まで死んだような目をした蓮花がこんなに元気になったのかと2-3の全員は疑問に思ったのだが、一部の者を除いてほとんどの者は『立ち直った』と解釈して昔のように接している。
その一部の者とは蓮花が想いを寄せている悠真が関わっているだろうと睨んでいた。
梨奈との話を中断して素振りを開始する蓮花。
体中から流れた汗が服を吸着させ、体の形が見事に顕になる。
大きすぎず小さすぎずな胸の形がハッキリと見え、薄いピンクの色をした下着が薄らと見える。
それをイヤラシイ目で見る男子から守る他の女子。
だが蓮花はそんな男子達の視線には気付かず、ただ1つのことを考えて剣を振っていた。
「(きっと悠真くんなら強くなってるはず! だから次会ったとき連れてって貰えるように強くならないと……!)」
ある意味雑念とも捉えることが出来るが、小林と同じで想い人の存在が大きな原動力になっていた。
ほとんどの生徒がそうなのだが、この世界に来て皆、体が驚くほど引き締まっている。
とある男子の腹にあった肉は消え始め、腕や足腰に筋肉が付いてきた。
女子も全体的に引き締まりつつも出る所は出て、みんな普通にモデルとして活動できるレベルまでのプロポーションになりつつある。
この世界に来てまだ7日ほどだが、2-3の生徒たちは皆見違えるくらい成長した。
それはスキルの存在もあるが、主に個人個人の努力の結晶である。
そして皆内心とても緊張をしている。
そう、3日後の遠征があるからである。
皆はまだ城の庭程度しか外の世界を見たことないし、モンスターも本の絵でしか見たことがない。
その点を考えたらいかに悠真がこの世界に素早く順応したかが伺えるだろう。
「む、もうこんな時間か……訓練は終わり! あとは各個人で自主練習するなり休むなり好きにしてくれ」
クリードはエルナの世話をするためにさっさと闘技場を出てエルナのいる部屋へと早足で向かった。
今回で全ての訓練が終わり、達成感で床に寝転がる者や、3日後の遠征までの間に何があるのかと少し怖がっている者もいた。
そんな中、未だに剣を振り続ける蓮花に梨奈はゆっくりと話しかける。
「蓮花ちゃんは自主練するの?」
「うん、もう少しだけしようかな」
焦っても仕方がないことは分かっている。
だが蓮花は早く悠真に会いたかったのだ、喋りたかったのだ、そして触れたかったのだ。
「(こうなるんだったら向こうの世界でさっさと告白すれば良かったなぁ……)」
そんなことを考えながらも再び蓮花は素振りを繰り返す。
梨奈も蓮花に釣られて隣で素振りをしたり試合をしたりと繰り返し、2人は結局1時間ほど自主練習をして自室へと戻るのであった。
────────────────
訓練が終わり、シャワーを浴びて体を清めた和田の部屋の扉がノックされる。
扉を開くとそこには髪をあげてポニーテールにした伊藤がバスローブ姿で立っていた。
「どうしたの? 伊藤さん」
和田の問いに答えることなく伊藤は部屋に入り、ゆっくりと部屋の鍵を締める。
ベッドの上に腰を下ろす伊藤。
部屋は小さな朱色の明かりがついているだけでよく見えないのだが、いつもよりも伊藤の表情は柔らかく、そして色っぽくなっていた。
「っ! この声は……」
頭に小さく響く伊藤の声。
同じ部屋にいるのにも関わらず伊藤はSSである『意思疎通』を使用して和田に語りかけていた。
伊藤と和田との会話の内容は誰にも分からない、いや分かるはずがない。
ただ伊藤は和田を誘う目で語り続け、ベッドの上に大胆に倒れ込む。
頭の中で何かが湧き出てくる中ゆっくりと手を差し伸べる和田。
だが自分たちに課せられた使命が頭の中で反響し、触れる寸前で止まる。
なんとか自制することができた和田だが、内心はとても辛い状況でいた。
目の前には自分に好意を寄せてくれている伊藤……伊藤友希がいる。
彼女はスタイルが良く、顔立ちもいい。
確かに口が悪かったり喧嘩っ早いところもあるが、とても家庭的で友達想いである。
そんなギャルっぽい伊藤だが、とても一途な性格からか男あそび……援交などもしたことなく、夢は美容師とごく普通の女の子なのだ。
そして風呂上がりなのか肌もしっとりとし、髪の毛も少し濡れ、とても艶めかしい姿になっていた。
だがたとえ和田といっても立派な男子高校生だ。
卑猥なことだって考えたりもするし、色々と想像、妄想だってする。
そんな和田をバスローブをはだけだして誘惑する伊藤。
和田のなかで自制心と煩悩がぐちゃぐちゃに混ざっていき、だんだんと息が荒くなっていく。
伊藤の目も爛々と輝いていき、2人の視線が何秒も、何分も交わり続ける。
「……ごめん」
だが最後の最後で和田は自分の欲を抑え込み、心を落ち着かせることが出来た。
一線を超えてしまったら明日からどうなる?
勇者であり、クラスをまとめる自分が惚気けてしまってどうする?
ケジメをつけろ、欲に溺れるな、今私情を挟んでしまえばクラスの輪が乱れてしまうかもしれない。
そんな責任感が自身の欲を止め、一線を超えることなく終わる。
「違うんだ、嫌いなわけじゃない。むしろ嬉しいよ……でも」
和田はきっちりと伝えた。
自分には大きな責任があると。
自分にはクラスをまとめる役目があるから1人だけ溺れてはいけないと。
自分は勇者としてこの世界の命運を分けていると。
そして────
「僕は伊藤さんと付き合うことはできない」と……
如月 悠真
NS→暗視眼 腕力Ⅱ 家事Ⅰ 加速Ⅰ 判断力Ⅰ 火属性魔法Ⅰ 広角視覚Ⅰ
PS→危険察知Ⅰ 火属性耐性Ⅰ
US→逆上Ⅰ 半魔眼
SS→殺奪
レナ
NS→家事Ⅲ 房中術Ⅱ 水属性魔法Ⅰ 光属性魔法Ⅰ
PS→聴覚強化Ⅰ 忍足Ⅰ
US→NO SKILL
SS→NO SKILL
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