最強勇者は二度目を生きる。最凶王子アルブレヒト流スローライフ

ぎあまん

文字の大きさ
2 / 51

02 王の家庭家庭

しおりを挟む


 いろいろと考えることはあるけれど、考えたところで答えが出るわけでもない。
 神でも出てきて事情を説明してくれればいいのだが、神なんて究極魔法を手に入れた時に会って以来、姿を見せてくれたことはない。

 とはいえ、神なんて人間の事情にそう首を突っ込んで欲しくない。
 俺に起きている異常は、俺が知らないだけで、実はそれほど珍しくないことなのかもしれない。

 このまま王子として生きるのもいいかもしれない。
 俺の記憶があることをわざわざ、マクシミリアン……マックスに教える必要もないだろう。
 社交の時期にだけ王都にやってきて、祖父顔で俺を嬉しそうに見ているあの顔に向かって、「おいマックス、なんて顔をしてやがる」なんて言ってやるのは、とてもひどい話でしかない事ぐらい、俺にだってわかる。
 まぁ、かつての仲間にデレデレの祖父顔で迫られるのは割と辛いのだが。

 ともあれ年を跨ぎ、六歳となった。
 それなりに走り回ることもできるようになった。
 さすがに肉弾戦は無理だろうが、ある程度の魔法を使っても問題ないぐらいにはなった。
 全力は……さすがにダメだろうが。
 後は、生まれながらに魔力が多めだとは思われている。
 しかし実はこれでも、魔力を隠している状態だったりする。
 昔、魔族の領域に潜入しなければならないことがあった時に身につけた。
 あいつらは人間の魔力を嗅ぎ分けるのがうまかったから、身につける必要があった。
 それ以来、たびたび訓練をして磨いてきた。
 魔族は特に魔力に優れた種族だったのだが、そのためか五感の全てで魔力に頼ったところがあり、この隠蔽方法が、戦闘で俺の動きを認知させづらくさせることができると気付いたからだ。

 そういうわけで、俺はちょっと魔力多めの子供として周囲に認知されている。
 王子なんていう、生まれた時から多くの他人に期待される人間ともなると、なにか優秀さを感じさせる特徴があるというのは、重要なことのようだ。

「さすが、魔力に優れた第一王子様」
「アルブレヒト殿下は魔力に優れておいでですから」

 みたいな言葉はよく聞く。
 褒めて育てるのは大切だと聞くが、褒めるばかりもどうなのだろうかとも思う。
 まぁうちは、母であるソフィーがマックス譲りの肉体派で、俺が走っているとすぐに混ざってこようとしたり、ことあるごとに運動する遊びに全力で応じようとするし、その時には結構口汚くなるので、褒められるだけで育つというのとは、なにか違うかもしれない。

 母といえば、彼女の夫であり、俺の今生の父のことも語らなければならないだろう。
 父の名前はフランツ。
 ヴァルトルク王国の王だ。
 銀色の髪の優男で、ソフィーに対して苦手意識があるような雰囲気だ。
 押しの強いソフィーの対処法がわからなくて困っているという感じか。
 それでも内政の手腕は良いらしく、マクシミリアンが褒めていた。
 子供の相手の仕方もわからないらしく、俺を前にしてもどうしていいのかわからない顔をしているので、顔が会った時は丁寧に挨拶して、後は放っておくことにしている。
 小さな子供が礼儀正しく挨拶する様は、王宮に勤める者たちにとって何かの金銭に触れるらしく、周りの評判もいい。
 フランツも対処法がわからなくとも、自分の子供が褒められて嫌な気分はしないという顔をしている。
 それだけなら家族への接し方を知らないけど仕事はできる父親という結論で終わってしまうのだが、残念ながら彼は王だ。
 王だから、というよりは上流の人間だからというべきか。

 彼には複数の妻がいる。
 ソフィーは第一王妃。正妃だ。
 さらに第二と第三の王妃、側室がおり、さらに愛人も複数いる。
 ソフィーと結婚し、俺が生まれる前後の王太子時代は一人だったのだが、その後に先代王が病気で亡くなり、彼が継いでからは一気に増えた。
 周囲の貴族が一気呵成に新王フランツに女性を紹介し、彼がそれに応じた形だ。
 外交、大丈夫なんだろうか?
 内省の話はよく聞くが、外交の話は聞かないな。
 まぁ、誰か優秀な人物がいるのだろう。

 王が優秀である必要はないと、いつだったか仲間たちが言っていた気がする。
 マックスだったか、あるいは他の誰かだったか。
 先代王は優秀な人物で、俺を最初に勇者と認めてくれた人物だった。
 その後、周辺国家にも勇者だと認めてもらのは、苦労した。その時に吐いた愚痴に仲間の誰かが答えたのが、前述の言葉だ。

 そんな風に子種をそこら中にばら撒いているフランツだが、いまのところ出来ている子供は俺を含めて三人だけだ。
 ソフィーと結婚したのが彼女が十五の時で、俺が生まれたのが十八だというから、子供を作りにくい体質なのかもしれない。
 俺自身、結婚していないからよくわからないが。

 ともあれ、フランツはそういう男だ。
 王としては、それなりに有能。
 父親としては、仕事ができて裕福だからまぁ許されるというぐらいの人物だ。

 さて、次に出てくるのは、俺の弟妹とその母親たちだ。

 まずは弟のエーリッヒ。
 第二王妃カタリーナの子供で俺の二歳下。

 次に妹のソフィア。
 第三王妃マリアの子供で最近生まれたばかり。
 マリアがソフィー大好きで、生まれた子供が女だと知るやソフィアにすると決めたのだそうだ。
 俺としてはややこしいだけなんだが、親同士が仲が良いのはいいことだ。
 マリアは腹になにか隠しているような人物には見えないし、頻繁にこちらに遊びに来る。
 妊婦の時も、子供が生まれると、まだ首の座っていないソフィアを連れてくる。

 おかげで、今年で四歳のはずのエーリッヒよりもソフィアの顔の方がよく見ているという状態だ。

 なのでこれは、エーリッヒの母親カタリーナが関わっているのだろうなと、俺は思っている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸
ファンタジー
天上魔界「イイルクオン」 世界は大きく分けて二つの勢力が存在する。 ”人類”と”魔族” 生存圏を争って日夜争いを続けている。 しかしそんな中、戦争に背を向け、ただひたすらに宝を追い求める男がいた。 トレジャーハンターその名はラルフ。 夢とロマンを求め、日夜、洞窟や遺跡に潜る。 そこで出会った未知との遭遇はラルフの人生の大きな転換期となり世界が動く 欺瞞、裏切り、秩序の崩壊、 世界の均衡が崩れた時、終焉を迎える。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

処理中です...