13 / 51
13 来客
しおりを挟むエルホルザに来て半年ほど経っただろうか。
「来たぞソフィー!」
来客があった。
「お父様!」
だいぶ見れるようになったボロ屋から飛び出したソフィーは、そこに立つ人物を見て駆け寄った。
「わはははは! 楽しんでいるようだな!」
「はい!」
少女のようにソフィーを抱き上げるのは彼女の父親、そして俺の祖父。
勇者ジークの仲間。
マクシミリアン・アンハルト。
マックスだ。
「アンブレヒト! 楽しんでいるか?」
「はい。お祖父様」
ソフィーの次に抱き上げられた俺は、お行儀よく答える。
まさか、マックスにこんなことをされる日が来るとは。
不可思議だ。
「ふむ?」
俺を抱えたマックスが首を傾げる。
「どうかしました?」
「いやいや、大きくなったな」
ソフィーに聞かれ、マックスは笑う。
俺としては老けたなという感想だ。
最後に会ったのは、ソフィーが生まれた時だったか?
あるいはアンハルト騎士団に魔功を教える時だったか?
アルブレヒトが生まれた時に五十ぐらいのはずだから、今は五十六とかか。
仲間だった時より、全体的に質量が増えている。
太っているのではなく、筋肉の量が増したのだろう。
「お父様、まさかお一人で?」
「はっはっはっ。そうしたいが、さすがにな。騎士を何人か連れている。街には何人か滞在させているから、困った時には頼れ」
「大丈夫ですよ」
「そういうわけにはいかんのだよなぁ」
そんなことを話しながら、家の中に移動する。
一つしかないテーブルでマックスのお土産の焼き菓子を食べて、近況を語る。
しばらくすると、ソフィーが俺に部屋に戻るように言った。
大人しく従うが、部屋から耳を澄ませていれば、会話は聞こえてくる。
「アルブレヒトはどうだ? 見たところ元気そうだが」
「楽しそうですよ。いつも森で遊んでいますし、勉強もちゃんとしています」
「そうか。それならいいんだが」
「王都でなにかありましたか?」
「わからんが、なにか騒ぎが起きている。外には漏らさないようにしているようだがな。こういうのは人の動きでわかってしまうものだ」
「陛下にはお会いしました?」
「ここに来る前にな。娘の様子を見てくると言ったら、嫌な顔をされたよ。だがそれより、なにやらやつれていた。起こっている問題は、どうやらかなり深刻なようだ」
「まぁ」
「それはいいんだ。我々としては自業自得だと笑っていればいい。それより、お前と陛下のことだ。どうなんだ?」
「陛下は、私のことが気に入らないのでしょうね。なにが気に入らないのかは存じませんが」
「ふうむ。政略結婚だからな。とはいえ、うちとしては向こうに押し切られた結婚だ。こちらが罪悪感を抱く必要はない」
「お父様、アンハルトの民たちは?」
「お前は好かれていたからなぁ。怒っている者は多い。療養が必要ならアンハルト領に迎えれば良い。必要なら離縁してしまえと言っている家臣もいる。お前はどうしたい?」
「私は……離縁はどちらでもかまいませんが、このままだとアルの立場が。後継には弟もいますし」
「そうだな。アンハルト領を継ぐのはウォルフガングだ。それに第一王子の地位が厄介だな。領に引き込めば野心があると思われるか」
「それはかわいそうです」
「やれやれ、金山が見つかって財政はマシになったが、代わりに厄介ごとが増えたな」
そんな会話をしている。
ふうむ。王都というか城で騒ぎか。
……もしかして、これが原因か?
引っ越しの時に荷物に紛れさせていた剣。
フランツの部屋から迷惑料としてもらったんだが、実はけっこう大事な剣だったのかもしれないな。
たとえば、王位継承に関わるようなものとか?
いや、そんな大事なものをあんなところに飾るはずもないか。
はっはっはっ。
56
あなたにおすすめの小説
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?
大好き丸
ファンタジー
天上魔界「イイルクオン」
世界は大きく分けて二つの勢力が存在する。
”人類”と”魔族”
生存圏を争って日夜争いを続けている。
しかしそんな中、戦争に背を向け、ただひたすらに宝を追い求める男がいた。
トレジャーハンターその名はラルフ。
夢とロマンを求め、日夜、洞窟や遺跡に潜る。
そこで出会った未知との遭遇はラルフの人生の大きな転換期となり世界が動く
欺瞞、裏切り、秩序の崩壊、
世界の均衡が崩れた時、終焉を迎える。
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。
しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。
しかし――
彼が切り捨てた仲間こそが、
実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。
事実に気づいた時にはもう遅い。
道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。
“荷物持ちがいなくなった瞬間”から、
アレクスの日常は静かに崩壊していく。
短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。
そんな彼と再び肩を並べることになったのは――
美しいのに中二が暴走する魔法使い
ノー天気で鈍感な僧侶
そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー
かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。
自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。
これは、
“間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる”
再生の物語である。
《小説家になろうにも投稿しています》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる