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14 祖父との一週間
しおりを挟むマックスがやってきて一週間が過ぎた。
ボロ屋には泊まる部屋がなかったので、彼は夕暮れ前には街に戻る。
「代官には言い聞かせておいた」
やってきた次の日にマックスはそう言った。
代官に渡される王家からの生活費の額は常に記録していたので、ソフィーはそれをマックスに渡していた。
それを使ったのか、それとも別の方法を使ったのか。
とにかく代官はマックスの年相応の地位と実力による圧力を受けて屈服してしまったようだ。
それでなにが変わるのか知らないが、あいつが勝ち誇っていないのならそれでいいか。
それから、マックスは俺にプレゼントを持ってきていた。
剣だ。
「本当なら、お前の体に合わせてちゃんと作ってやりたいんだが」
無念そうにしている。
確かに体に合わせた大きさにするのが一番だが、俺は大体の武器が使えるので問題はない。
師匠からは武器なんてその辺りに転がっている石や枝でもかまわないと教えられている。
もちろん、優れた武器があるならそれを使いこなせるようにしておいた方がいいが、武器がなければなにもできないという思考となることは、師匠から禁じられていた。
それはそれとして剣だ。
六歳児の俺の体に合わせた長さなので、長めの短剣ぐらいの大きさになっている。
「よし、早速訓練だ!」
「はい!」
というわけで、マックスから剣の振り方などを習う。
正直に言う。
素人の振りをするのがしんどい。
それと孫と遊べると嬉しそうにしているマックスの顔を見るのも辛い。
仲間のそんな顔を見るのが辛い。
あの時の凛々しいお前はどこに行ったと問いたい。
「おおっ! さすがは俺の孫だ。筋がいいな!」
「ありがとうございます!」
それでも俺は祖父孝行に努めた。
エルホルザに来て初めて疲れた一週間だったかもしれない。
「アルブレヒトには剣の才があるな」
「ありがとうございます」
褒められる度にちょっとだけ罪悪感が湧いてしまう。
「……世が世なら、お前は勇者にだってなれたかもしれないない」
「勇者、ですか?」
いきなりなにを言い出す?
「ああ、俺はかつて勇者と共に戦っていた。ソフィーには聞いたか?」
「はい。お祖父様はとても強いと」
「ああ、俺は強いぞ。国で一番の自負がある。だが、あいつには敵わない」
敵わない?
マックスがそんなことを言うとは思わなかった。
なによりも負けず嫌いな男だったはずだ。
俺から剣や魔功を習うのも、かなりの苦渋の選択をしたような顔だった。
そして、一度選択すれば割り切ってしまう男でもあった。
だが、俺……勇者ジークのことは、競争相手、いつか追い抜く存在だと思っていたはずだ。
「勇者様は、お祖父様よりも強いのですか?」
「もう死んだからな。競うこともできん」
寂しそうな顔の理由は、そういうことか。
「残念ですね」
「ふん。貴族仕事で忙しい俺を笑い、士官を嫌って諸国を騙し、一人修行を続けるような狡賢い奴だ。どうせ、腐ったものでも食べて腹を壊したんだろう」
ううん、それは否定できない。
ただ、どうやって死んだのかはいまだに思い出せないんだよな。
「まぁ、死んだ奴のことはいいか。そいつとは冥府に行った時にでも改めて勝負すればいいんだから。それより今は、お前だ。アルブレヒト」
「はい」
「お前は強くなれ。俺よりもな」
「頑張ります!」
そんな風に、過ごした。
一週間が過ぎるとマックスは帰ることとなった。
「また来る」
そう告げて、騎士と共に去っていく彼らを見送ったその夜……。
街に魔獣が襲いかかった。
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