最強勇者は二度目を生きる。最凶王子アルブレヒト流スローライフ

ぎあまん

文字の大きさ
33 / 51

33 鍛冶屋と

しおりを挟む


 宿屋での夜に情熱的なイベントなどもちろんあるはずもなく、ただマックスの奥さんへの惚気だけを聞かされただけだった。
 茶化すんじゃなかった。

「お前、鍛冶屋に行ったらその足で帰れ。なっ、お前の足なら三日もかからないだろ?」

 そんなに奥さんが好きなら離れるな。

「そういうわけにはいかん。ソフィーからの返信を受け取っていない」
「返信?」
「いつも手紙を運んでいる。あいつ、母さんからの手紙の返事には時間がかかるんだ」
「ああ」

 そういえば、マックスが来ている日はよく自分の部屋で頭を抱えているな。
 手紙を書いていたのか。

「まぁ、そんなことはいい。まずは鍛冶屋の件を終わらせよう」

 朝食は朝市の屋台通りで済ませる。
 ハムのサンドイッチとスープ。

 エルホルザの街は特に見応えのあるようなものではない。
 傾斜の浅い坂がたくさんある街だ。
 牧畜が盛んな地区なだけあって、市場には肉と乳製品が多い。
 それらを目当てにやってきた行商人もいる。
 旅人には面白みの少ない街だ。
 後、荒事が好きな連中にとってもそうだろう。

 まぁ、そういう連中が近づかないように街道の管理はしっかりされているのだろう。
 だからこそ、先日の竜の時には対処が遅れたのだろうが。

「こっちだ」

 マックスは屋台で料理を頼むついでに、鍛冶屋の場所を聞いていた。
 朝市のあった場所からそれなりに歩いていると、濃い熱気が漂ってくる。
 槌を打つ音はまだ聞こえない。
 いまは炉を温めている最中か。

「いらっしゃい。あん、なんだい旦那。うちは、あんたみたいな立派な騎士を相手にするところじゃないよ」

 店に行くと、入り口で茶を飲んでいた男がそう言った。
 マックスの背負っている大剣を見て、騎士だと判断したようだ。
 間違ってはいない。

「いや、今日の用は俺じゃない。これを作って欲しいんだが」
「あん?」

 マックスの出したクナイを眺めて、鍛冶屋は鼻息を吹く。

「武器か? にしてはそれほど手が込んでないな。鋳造でも良さそうだ」
「それでいいからたくさん作って!」
「なんだ、この坊ちゃんにか?」
「初めての武器だ」
「はん? まぁ、難しくなさそうだからいいけどよ」
「どれくらいかかる?」
「とはいえ初めてだ。型を作って、何度か試して、とりあえず一本目は三日後ってところか。完成品は七日目だな」
「なら、完成品を十本だ」

 マックスが金貨をテーブルに詰むと、鍛冶屋は目を見開いた。

「もらいすぎだ」
「なら、その分、いいものを作れ」
「やれやれ」
「できたら、丘のボロ屋に届けてくれ」
「丘のって、あんた王妃様の騎士か?」
「こいつはその王妃様の子だ」
「はぁっ⁉︎」

 すっ頓狂な声をあげて、鍛冶屋は改めて俺を凝視し、そして笑った。

「こいつはすげぇ! じゃあ、王子様の初めての武器を献上することになるのか! そいつは気張らないとな!」

 ガハハと笑う鍛冶屋に肩をバンバン叩かれる。
 なんでこういう、豪快おっさん系はすぐに人を叩くのか。
 謎だ。
 それから、しばらく見本のクナイを眺めたり、俺の体付きを確認したり、実際に振ってみたりとかさせられた。
 普段は鍋やら包丁やら作っているのに本格的だなと棚に並んでいる商品を見て思っていると、そもそもは武器の鍛冶屋だったそうだ。
 ただ、いろいろあってこの街に流れて鍋やらを作るようになったそうだ。

「たまにはサビ落としをしないとな!」

 とか言っていたが、クナイとはいえ久しぶりに武器を作れるのが嬉しいらしい。
 解放された時には太陽がほぼ真上に来ていた。
 マナナは途中で飽きて離れたぐらいだ。

「悪かった。マナナ!」

 鍛冶屋を出てから名前を呼ぶ。

「……おや?」

 返事がない。
 マナナがどこかに行ってしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸
ファンタジー
天上魔界「イイルクオン」 世界は大きく分けて二つの勢力が存在する。 ”人類”と”魔族” 生存圏を争って日夜争いを続けている。 しかしそんな中、戦争に背を向け、ただひたすらに宝を追い求める男がいた。 トレジャーハンターその名はラルフ。 夢とロマンを求め、日夜、洞窟や遺跡に潜る。 そこで出会った未知との遭遇はラルフの人生の大きな転換期となり世界が動く 欺瞞、裏切り、秩序の崩壊、 世界の均衡が崩れた時、終焉を迎える。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

処理中です...