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34 まだ早い
しおりを挟むマナナがいない。
「あいつ、どこ行った?」
ざっと見回しても姿がない。
耳を澄ませても、あいつの声がしない。
そもそも、俺の側からいなくなるというのがおかしい。
鍛冶屋の相手をしていて忙しかったから、失念してしまっていた。
「迷子か? 仕方ない、別れて探そう」
「わかった。合流は?」
「宿だ」
そういうことになり、俺たちは別行動でマナナを探すことにした。
「さて、どこに行った?」
考えてみるが、これがわからない。
まず、俺から離れて行動するということがなかった。
だから、あいつが俺から離れる理由がわからない。
「食い物?」
だが、あいつはそこまで食べ物に執着していない。
実際、あいつにとって食べ物って嗜好品でしかないんじゃないかと思う節がある。
俺といる時は魔力を吸われてる感があるしな。
とはいえ、吸われる一方というわけではない。
マナナからの魔力も俺に入ってくる。
なんていうか、変な循環ができあがっている気がする。
この循環になんの意味があるのかはわからないが、いまのところは問題になる感じもない。
「あっ、そうか」
あいつを探すなら、魔力の流れを追ってみればいいのか。
思いついたなら行動するのみ、意識を集中して魔力を感知する。
「おっ」
遠いな。
だが、慣れた魔力を発見した。
それに、あいつがなにに引っ張られているのかも、わかったかもしれない。
人に見られないように気配を消して、街を走る。
近くを通った人は、「今日は風が強いな」ぐらいは思ったかもしれない。
ともあれ、走っているとフラフラと歩くマナナの姿を見つけた。
「こら待て」
「う~?」
襟口を掴むと、マナナが俺を見上げる。
「なに?」って感じか?
「勝手に他所に行くな。心配するだろうが」
「うう~」
「ああ、なんか変な魔力があるな」
それが気になって、近寄って行っていたのだろう。
「……行ってみるか?」
「う~!」
うん、俺も人のことは言えないな。
マックスに伝言とか、と思ったけど、そこまでかからないだろ、という気分で、俺たちはその魔力を追ってみた。
奇妙な魔力の流れはエルホルザの街全体から、ある一点に向かっている。
人の健康を阻害しない程度に魔力を吸い取っているのか?
なんらかの魔力機構があるようだ。
こういうのは王都とか、国境の砦や要塞とか、重要拠点なんかには実はある。
いざという時に、儀式魔法のような大規模な魔法を使うために普段から魔力を貯蓄しておくというものだ。
それなら別に珍しくもないのだけど……。
「でも、この街に?」
そんなものを用意しているなら、以前の竜騒動の時にどうして使わなかった?
昔に用意して、そのまま忘れられた?
そういうこともあるかなぁと思いながら進んでいくと、たどり着いたのは街外れにある墓場だった。
「おっと?」
怪しくなってきたぞ。
公が用意したものなら、設置するのは役所やら領主や代官の屋敷だろう。
いざという時のものを隠すにしては、ここは街から離れすぎている。
「魔力の流れは……あっちか」
墓石の並ぶ方ではなく、墓守の小屋のような建物に向かっている。
「こんにちは~」
声をかけてみたけれど返事はない。
ドアは、鍵がかかっているのか。
「えい」
思い切り引っ張ったら壊れた。
不思議だね~とマナナと顔を合わせてから中に入る。
誰かが住んでいる気配はあるが、この場にはいない。
魔力を追いかけると、床の一点をすり抜けている。
触ってみたら、床板が簡単にめくれ、下に向かう階段が現れた。
秘密基地感覚だなぁと思いつつ、階段を下っていくと、人の声が聞こえた。
いや、俺たちに向かって誰何してきた。
「誰だ?」
答えずにさらに下っていく。
そこそこに広い空間があり、魔力灯の光が淡く闇を押しのけている。
そして奥にはなにやら邪悪な像があった。
「早すぎる」
俺は思わず、顔を顰めてそう呟いてしまった。
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