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第3唱 歌い手
盛り上がる騎士たち
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古竜が去ったあと、ふと気づくと、ラピスの外套がきらきらと光っていた。
「ありっ? これは……」
隣を見れば、師の黒い外套も同じく煌めいている。
クロヴィスが嬉しそうに目を細めた。
「すごいオマケをくれたぞ。古竜の鱗だ」
「古竜のウロコ?」
正確には、鱗の欠片らしい。古竜は鱗一枚ですら「軽くラピんこの身長くらいある」そうだ。
「古竜の鱗はとても貴重な薬剤になる。効能と、すぐに使える方法もあとで教えてやるから、大切に持っておけ。きっと役に立つ」
「そんなに貴重なものなら、お師匠様が持っていたほうが役立つのでは……」
「古竜が今くれたってことは、ラピんこの旅に必要なのさ。きっと。……絶対」
よくわからないまま言われた通り、鱗の入った小袋を、斜めがけした鞄の中に慎重にしまった。
その後ジークたちのもとへ戻ると、殆ど自失状態の騎士たちとディードがいた。
さすがにジークはしゃんとしているが、いつもの鉄の仮面は剥がれて目を輝かせている。
「素晴らしい体験を……させていただきました……!」
「おう。一生ラピスに感謝しろ」
「お師匠様っ。ディードたちがポーッとしてて変です、話しかけても聞こえてないみたいなんですっ」
ラピスはあわてて師の袖を引っ張ったが、クロヴィスは「まあ、そうなるだろうな」と平然としている。
師によるとその状態は『竜に魅入られた』とか『竜酔い』などと呼ばれ、よくあることらしい。
「竜の存在に慣れてないと、力に中るんだ。まして古竜の力は異次元だからな」
古竜たちが棲み処や移動中に結界を張るのは、強すぎる影響を人に与えぬためだと聞いてはいたが、こうして間近に遭遇してみると、その必要性をラピスも実感した。
「松ぼっくりを拾ってたときに会った地竜さんも、結界を張ってたのかなと思うんですけど……いきなり現れたり消えたりしてたんです。でもまだ若い竜でした」
「だったら、おぼえたての結界で遊んでたのかもな」
「そんなことあるのですか! じゃあ、お師匠様は? おうちにも、ここに来たときも、結界を使ってましたよね? 遊んでたのですか?」
「俺はおぼえたてじゃねえよ。俺の場合は居場所を隠したり、痕跡を残さないために結界を使う。こいつみたく家を訪ねて来る奴もたまにいるから」
紅玉の瞳に睨まれたジークが、困ったように眉尻を下げる。
クロヴィスは「それに」と何か言いかけたところで言葉を切って、「ったくしょーがねえな」と、虚空を見つめる騎士たちの背中をパンパン叩いて回った。
途端、皆の虚ろな瞳に光が戻って、しばしきょとんとしていたが……
ほどなく我に返った騎士たちは一転、大騒ぎになった。
「古竜だーっ! 古竜が来たーっ!」
「見た! 俺は見た! すんごかった! デカかった! デカすぎたっ!」
「うるさ……余韻に浸りたいんだから、静かに喋ってくださいよ」
ディードのみ、かろうじて冷静さを取り戻し耳を塞いでいるが、ほかの騎士たちは涙を浮かべながら飛び跳ねたり、こぶしを振り上げたりしたあげく、
「すごすぎる。ラピスくんが竜を呼んだだけでもすごかったのに、二人になったら古竜まで現れたっ! さすが伝説の大魔法使いと唯一のお弟子さんっ! 最高! 感動すぎて震える! おれ泣いていいっ!?」
「泣くのはもっと先だ! これは来るぞ、欠けた力の対処法を知る瞬間が! オレたちはきっと、奇跡の瞬間を目の当たりにする……!」
「クーロヴィス! クーロヴィスッ!」
「ラ・ピ・ス! ラ・ピ・ス!」
興奮のあまり名前を連呼するに至って、「うるせえ!」とクロヴィスの怒りの蹴りが騎士尻に炸裂した。
ぽかんとして見ているラピスの前で呻きながら尻を押さえていた面々だが、それでも熱情は冷めぬようで。
「グレゴワール様っ! 俺たちもラピスくんの護衛に任命してくださいっ」
「こうなったらほかの候補者の補助役になど回っていられません。どうか今からでも、護衛の栄誉をお与えください!」
「というか、今さらですがグレゴワール様って、めっちゃお綺麗ですね?」
群がる騎士たちにクロヴィスがキレる前に、今度はジークが部下をまとめて引き剥がし、頭に手刀を叩き込んだ。クロヴィス直伝だろうか。
しかしラピスと違って、騎士たちは「ぐおぉ」と本気で痛がっている。
その間、自分の躰をあちこち触っていたディードが気になったラピスは、「大丈夫?」と尋ねたが、「うん」と満面の笑顔が返ってきた。
「ラピスは本当にすごいな! まさかこんなに早く古竜に会えるなんて……こんな感動は初めてだよっ。それにほら、擦り傷とか打ち身の痣とかあったのが、全部消えてるんだ! 痛みもない! これってもしかして、古竜の力なんじゃない!?」
ディードの言葉に、「そういえば」と、ジークを含めたほかの騎士たちも己の身を検める。
どうやら皆も同様のようで、怪我だけでなく慢性的な足腰の痛みまで消えてしまったと、新たな驚愕が広がった。
クロヴィスは「古竜は世界を守る存在なんだから、その力に触れれば恩恵は受けるさ」と当然のように言ったが、おかげで騎士たちの憧れと熱意はさらに高まったようだった。
「偉大なる竜たちに報いるためにも、どうかラピスくんの護衛をさせてください!」
「ありっ? これは……」
隣を見れば、師の黒い外套も同じく煌めいている。
クロヴィスが嬉しそうに目を細めた。
「すごいオマケをくれたぞ。古竜の鱗だ」
「古竜のウロコ?」
正確には、鱗の欠片らしい。古竜は鱗一枚ですら「軽くラピんこの身長くらいある」そうだ。
「古竜の鱗はとても貴重な薬剤になる。効能と、すぐに使える方法もあとで教えてやるから、大切に持っておけ。きっと役に立つ」
「そんなに貴重なものなら、お師匠様が持っていたほうが役立つのでは……」
「古竜が今くれたってことは、ラピんこの旅に必要なのさ。きっと。……絶対」
よくわからないまま言われた通り、鱗の入った小袋を、斜めがけした鞄の中に慎重にしまった。
その後ジークたちのもとへ戻ると、殆ど自失状態の騎士たちとディードがいた。
さすがにジークはしゃんとしているが、いつもの鉄の仮面は剥がれて目を輝かせている。
「素晴らしい体験を……させていただきました……!」
「おう。一生ラピスに感謝しろ」
「お師匠様っ。ディードたちがポーッとしてて変です、話しかけても聞こえてないみたいなんですっ」
ラピスはあわてて師の袖を引っ張ったが、クロヴィスは「まあ、そうなるだろうな」と平然としている。
師によるとその状態は『竜に魅入られた』とか『竜酔い』などと呼ばれ、よくあることらしい。
「竜の存在に慣れてないと、力に中るんだ。まして古竜の力は異次元だからな」
古竜たちが棲み処や移動中に結界を張るのは、強すぎる影響を人に与えぬためだと聞いてはいたが、こうして間近に遭遇してみると、その必要性をラピスも実感した。
「松ぼっくりを拾ってたときに会った地竜さんも、結界を張ってたのかなと思うんですけど……いきなり現れたり消えたりしてたんです。でもまだ若い竜でした」
「だったら、おぼえたての結界で遊んでたのかもな」
「そんなことあるのですか! じゃあ、お師匠様は? おうちにも、ここに来たときも、結界を使ってましたよね? 遊んでたのですか?」
「俺はおぼえたてじゃねえよ。俺の場合は居場所を隠したり、痕跡を残さないために結界を使う。こいつみたく家を訪ねて来る奴もたまにいるから」
紅玉の瞳に睨まれたジークが、困ったように眉尻を下げる。
クロヴィスは「それに」と何か言いかけたところで言葉を切って、「ったくしょーがねえな」と、虚空を見つめる騎士たちの背中をパンパン叩いて回った。
途端、皆の虚ろな瞳に光が戻って、しばしきょとんとしていたが……
ほどなく我に返った騎士たちは一転、大騒ぎになった。
「古竜だーっ! 古竜が来たーっ!」
「見た! 俺は見た! すんごかった! デカかった! デカすぎたっ!」
「うるさ……余韻に浸りたいんだから、静かに喋ってくださいよ」
ディードのみ、かろうじて冷静さを取り戻し耳を塞いでいるが、ほかの騎士たちは涙を浮かべながら飛び跳ねたり、こぶしを振り上げたりしたあげく、
「すごすぎる。ラピスくんが竜を呼んだだけでもすごかったのに、二人になったら古竜まで現れたっ! さすが伝説の大魔法使いと唯一のお弟子さんっ! 最高! 感動すぎて震える! おれ泣いていいっ!?」
「泣くのはもっと先だ! これは来るぞ、欠けた力の対処法を知る瞬間が! オレたちはきっと、奇跡の瞬間を目の当たりにする……!」
「クーロヴィス! クーロヴィスッ!」
「ラ・ピ・ス! ラ・ピ・ス!」
興奮のあまり名前を連呼するに至って、「うるせえ!」とクロヴィスの怒りの蹴りが騎士尻に炸裂した。
ぽかんとして見ているラピスの前で呻きながら尻を押さえていた面々だが、それでも熱情は冷めぬようで。
「グレゴワール様っ! 俺たちもラピスくんの護衛に任命してくださいっ」
「こうなったらほかの候補者の補助役になど回っていられません。どうか今からでも、護衛の栄誉をお与えください!」
「というか、今さらですがグレゴワール様って、めっちゃお綺麗ですね?」
群がる騎士たちにクロヴィスがキレる前に、今度はジークが部下をまとめて引き剥がし、頭に手刀を叩き込んだ。クロヴィス直伝だろうか。
しかしラピスと違って、騎士たちは「ぐおぉ」と本気で痛がっている。
その間、自分の躰をあちこち触っていたディードが気になったラピスは、「大丈夫?」と尋ねたが、「うん」と満面の笑顔が返ってきた。
「ラピスは本当にすごいな! まさかこんなに早く古竜に会えるなんて……こんな感動は初めてだよっ。それにほら、擦り傷とか打ち身の痣とかあったのが、全部消えてるんだ! 痛みもない! これってもしかして、古竜の力なんじゃない!?」
ディードの言葉に、「そういえば」と、ジークを含めたほかの騎士たちも己の身を検める。
どうやら皆も同様のようで、怪我だけでなく慢性的な足腰の痛みまで消えてしまったと、新たな驚愕が広がった。
クロヴィスは「古竜は世界を守る存在なんだから、その力に触れれば恩恵は受けるさ」と当然のように言ったが、おかげで騎士たちの憧れと熱意はさらに高まったようだった。
「偉大なる竜たちに報いるためにも、どうかラピスくんの護衛をさせてください!」
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