19 / 84
19
しおりを挟む
鮎川がパソコンの画面を切り替えると、世界地図が表示された。しかし、それは普通の地図とは違っている。各地に光る点が多数表示されているのだ。
「地球上には、たくさんの『門』と呼ばれるものがあります」
「門……?」
「はい。それぞれの門は、別の一つの惑星へと繋がっているのです。我々はその惑星のことをアガルタと呼んでいます」
結衣は理解が追いつかずに、ただ画面を見つめていた。
「例えば、出エジプト記で、モーゼはどうやって海を渡ったと思いますか?」
鮎川の質問に、結衣は戸惑った。
「神の奇跡で……海が割れたと習いましたが」
「実際には、門を使って別のルートで移動した可能性があります。失われた十支族が日本に来たという説もありますが、それも門を使えば説明がつきます」
画面が切り替わり、複数の惑星が線で結ばれた図が表示された。
「地球をはじめ、いくつかの星がアガルタをハブとして繋がっています。そのハブには、それらの星からのさまざまな人種や生き物が住んでいます」
「人種……?」
「ええ、中には、額にツノがあったり、耳が少し尖っていたりする人種もいるんです」
花巻が髪の毛を持ち上げて、耳を見せた。
「ほら、僕なんか少し耳が尖っている感じでしょ?」
言われてみると、確かに花巻の耳は一般的な人よりも先端が尖っているように見える。結衣は今まで気づかなかった自分にも驚いたが、あまりにも急な話についていけず、頭が混乱しそうだ。
「交流のなかったはずの古い時代の東西の物語や神話に、同じように地底に別の世界があるといった話があったり、似た容姿の異形の生物が登場したりするのは、それが事実だからなんです」
結衣の頭の中で、今まで読んだことのある様々な神話や伝説が蘇った。確かに、世界中の神話には似たような要素が多く含まれている。
「そして、アガルタには空気中にも、植物や生物の中にも、たくさんのマナがあります」
鮎川は再び画面を切り替えた。今度は、顕微鏡で見たような微細な世界が表示されている。
「これは、ハブ星になった初期に、感染症対策などのために散布されたのではないかと思われています」
「感染症対策……?」
「はい。異なる星から来た生物が共存するためには、免疫システムの調整が必要だったのでしょう。マナが、それぞれの生物の体内環境を最適化していると考えられます」
結衣は自分の手のひらを見つめた。この中に、そんな小さな機械が無数に存在しているなんて。
「そして、人によっては、自分の意思でそのマナに指示を出し、さまざまな現象を起こすことができるのです」
「現象……というと?」
「つまり、魔法が現実のものとして異世界には存在するということです」
花巻が補足した。
「僕がこの前持って来ていた指輪も、そうした現象を補助する目的で作られたものでした。結衣ちゃんが触れた時に反応したのは、結衣ちゃんの中のマナが指輪と共鳴したからなんです」
結衣は混乱していた。魔法が現実に存在する?
自分の血液の中にマナがある?
どれも信じがたい話だった。
「でも、どうして私にそんなものが……?」
その時、祖父が口を開いた。
「結衣、お前の家系について話したことがあったね」
「それって……秦氏のこと?」
「そうだ。我々の遠い祖先にあたる秦氏は、実は異世界から来た一族なんだ」
祖父の言葉に、結衣は絶句した。
「異世界から……?」
「秦氏は古代日本に渡来し、様々な技術や文化を伝えた一族として知られています。しかし、その『技術』の中には、現代の科学では説明のつかないものも多く含まれています。つまり、秦氏の一族はアガルタから来た。または、アガルタである程度の期間過ごしていたのではないかと我々は考えています」
鮎川がパソコンで資料を表示した。そこには古い文献のコピーが映し出されている。
「また、古い日本の資料には、秦氏一族の中には、異界からやって来る魔獣などと対峙していた者もいたという記録があります」
「魔獣……」
結衣の頭に、ある言葉が浮かんだ。
「それって、陰陽師……?」
「ああ、まさにそれだよ」
祖父も頷いた。
「陰陽師として知られる人々の中には、実際にマナを操って超常的な現象を起こしていた者がいたのでしょう。それは陰陽道(魔法)と呼ばれていましたが、実際にはマナを操る高度な技術だったのです」
結衣は自分の手を見つめた。この手に、そんな力が眠っているというのだろうか。
「遠い祖先の血を引く結衣さんには、きっとそれと同じ力があるのではないかと思います」
鮎川の言葉に、結衣は戸惑いを隠せなかった。
「でも、私、魔法なんて使えません」
「それは、まだ使い方を身につけていない、つまり覚醒していないからかもしれません。それに、僕もここではほとんど魔法は使えません。地球にあるナノマシンの数はアガルタに比べてすごく少ないんです」
花巻が優しく言った。
「でも、指輪に触れた時に体の中を何かが流れるような感覚があったってさっき言ってたでしょう。多分それは結衣さんのマナは他への干渉ができる。つまり条件さえ合えば魔法が使えるってことですよ」
「地球上には、たくさんの『門』と呼ばれるものがあります」
「門……?」
「はい。それぞれの門は、別の一つの惑星へと繋がっているのです。我々はその惑星のことをアガルタと呼んでいます」
結衣は理解が追いつかずに、ただ画面を見つめていた。
「例えば、出エジプト記で、モーゼはどうやって海を渡ったと思いますか?」
鮎川の質問に、結衣は戸惑った。
「神の奇跡で……海が割れたと習いましたが」
「実際には、門を使って別のルートで移動した可能性があります。失われた十支族が日本に来たという説もありますが、それも門を使えば説明がつきます」
画面が切り替わり、複数の惑星が線で結ばれた図が表示された。
「地球をはじめ、いくつかの星がアガルタをハブとして繋がっています。そのハブには、それらの星からのさまざまな人種や生き物が住んでいます」
「人種……?」
「ええ、中には、額にツノがあったり、耳が少し尖っていたりする人種もいるんです」
花巻が髪の毛を持ち上げて、耳を見せた。
「ほら、僕なんか少し耳が尖っている感じでしょ?」
言われてみると、確かに花巻の耳は一般的な人よりも先端が尖っているように見える。結衣は今まで気づかなかった自分にも驚いたが、あまりにも急な話についていけず、頭が混乱しそうだ。
「交流のなかったはずの古い時代の東西の物語や神話に、同じように地底に別の世界があるといった話があったり、似た容姿の異形の生物が登場したりするのは、それが事実だからなんです」
結衣の頭の中で、今まで読んだことのある様々な神話や伝説が蘇った。確かに、世界中の神話には似たような要素が多く含まれている。
「そして、アガルタには空気中にも、植物や生物の中にも、たくさんのマナがあります」
鮎川は再び画面を切り替えた。今度は、顕微鏡で見たような微細な世界が表示されている。
「これは、ハブ星になった初期に、感染症対策などのために散布されたのではないかと思われています」
「感染症対策……?」
「はい。異なる星から来た生物が共存するためには、免疫システムの調整が必要だったのでしょう。マナが、それぞれの生物の体内環境を最適化していると考えられます」
結衣は自分の手のひらを見つめた。この中に、そんな小さな機械が無数に存在しているなんて。
「そして、人によっては、自分の意思でそのマナに指示を出し、さまざまな現象を起こすことができるのです」
「現象……というと?」
「つまり、魔法が現実のものとして異世界には存在するということです」
花巻が補足した。
「僕がこの前持って来ていた指輪も、そうした現象を補助する目的で作られたものでした。結衣ちゃんが触れた時に反応したのは、結衣ちゃんの中のマナが指輪と共鳴したからなんです」
結衣は混乱していた。魔法が現実に存在する?
自分の血液の中にマナがある?
どれも信じがたい話だった。
「でも、どうして私にそんなものが……?」
その時、祖父が口を開いた。
「結衣、お前の家系について話したことがあったね」
「それって……秦氏のこと?」
「そうだ。我々の遠い祖先にあたる秦氏は、実は異世界から来た一族なんだ」
祖父の言葉に、結衣は絶句した。
「異世界から……?」
「秦氏は古代日本に渡来し、様々な技術や文化を伝えた一族として知られています。しかし、その『技術』の中には、現代の科学では説明のつかないものも多く含まれています。つまり、秦氏の一族はアガルタから来た。または、アガルタである程度の期間過ごしていたのではないかと我々は考えています」
鮎川がパソコンで資料を表示した。そこには古い文献のコピーが映し出されている。
「また、古い日本の資料には、秦氏一族の中には、異界からやって来る魔獣などと対峙していた者もいたという記録があります」
「魔獣……」
結衣の頭に、ある言葉が浮かんだ。
「それって、陰陽師……?」
「ああ、まさにそれだよ」
祖父も頷いた。
「陰陽師として知られる人々の中には、実際にマナを操って超常的な現象を起こしていた者がいたのでしょう。それは陰陽道(魔法)と呼ばれていましたが、実際にはマナを操る高度な技術だったのです」
結衣は自分の手を見つめた。この手に、そんな力が眠っているというのだろうか。
「遠い祖先の血を引く結衣さんには、きっとそれと同じ力があるのではないかと思います」
鮎川の言葉に、結衣は戸惑いを隠せなかった。
「でも、私、魔法なんて使えません」
「それは、まだ使い方を身につけていない、つまり覚醒していないからかもしれません。それに、僕もここではほとんど魔法は使えません。地球にあるナノマシンの数はアガルタに比べてすごく少ないんです」
花巻が優しく言った。
「でも、指輪に触れた時に体の中を何かが流れるような感覚があったってさっき言ってたでしょう。多分それは結衣さんのマナは他への干渉ができる。つまり条件さえ合えば魔法が使えるってことですよ」
31
あなたにおすすめの小説
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
【アラウコの叫び 】第1巻/16世紀の南米史
ヘロヘロデス
歴史・時代
【毎日07:20投稿】 1500年以降から300年に渡り繰り広げられた「アラウコ戦争」を題材にした物語です。
マプチェ族とスペイン勢力との激突だけでなく、
スペイン勢力内部での覇権争い、
そしてインカ帝国と複雑に様々な勢力が絡み合っていきます。
※ 現地の友人からの情報や様々な文献を元に史実に基づいて描かれている部分もあれば、
フィクションも混在しています。
また動画制作などを視野に入れてる為、脚本として使いやすい様に、基本は会話形式で書いています。
HPでは人物紹介や年表等、最新話を先行公開しています。
公式HP:アラウコの叫び
youtubeチャンネル名:ヘロヘロデス
insta:herohero_agency
tiktok:herohero_agency
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
異世界ランドへようこそ
来栖とむ
ファンタジー
都内から車で1時間半。奥多摩の山中に突如現れた、話題の新名所――「奥多摩異世界ランド」。
中世ヨーロッパ風の街並みと、ダンジョンや魔王城を完全再現した異世界体験型レジャーパークだ。
26歳・無職の佐伯雄一は、ここで“冒険者A”のバイトを始める。
勇者を導くNPC役として、剣を振るい、魔物に襲われ、時にはイベントを盛り上げる毎日。
同僚には、美人なギルド受付のサーミャ、エルフの弓使いフラーラ、ポンコツ騎士メリーナなど、魅力的な“登場人物”が勢ぞろい。
――しかしある日、「魔王が逃げた」という衝撃の知らせが入る。
「体格が似てるから」という理由で、雄一は急遽、魔王役の代役を任されることに。
だが、演技を終えた後、案内された扉の先にあったのは……本物の異世界だった!
経営者は魔族、同僚はガチの魔物。
魔王城で始まる、まさかの「異世界勤務」生活!
やがて魔王の後継問題に巻き込まれ、スタンピードも発生(?)の裏で、フラーラとの恋が動き出す――。
笑えて、トキメいて、ちょっと泣ける。
現代×異世界×職場コメディ、開園!
35歳バツイチオッサン、アーティファクト(美少女)と共に宇宙(ソラ)を放浪する
エルリア
SF
35歳バツイチ。
長年勤めていた清掃会社をクビになり、その日のうちに家族にも見放され。
更にはしがない辺境のボロ商店を運営していた親が急に亡くなり、急遽その船を引き継ぐことに。
そんな中、船の奥を片づけていると倉庫の奥にヒューマノイドを発見。
それが実はアーティファクトと呼ばれる超文明の遺産だと判明したその時から彼の新たな目標が決定した。
そうだ、自分だけの星を買おう。
そこで静かに余生を過ごすんだ、そうだそうしよう。
かくして、壮大すぎる夢に向かって万能美少女ヒューマノイドとの旅が始まったのだった。
剣客逓信 ―明治剣戟郵便録―
三條すずしろ
歴史・時代
【第9回歴史・時代小説大賞:痛快! エンタメ剣客賞受賞】
明治6年、警察より早くピストルを装備したのは郵便配達員だった――。
維新の動乱で届くことのなかった手紙や小包。そんな残された思いを配達する「御留郵便御用」の若者と老剣士が、時に不穏な明治の初めをひた走る。
密書や金品を狙う賊を退け大切なものを届ける特命郵便配達人、通称「剣客逓信(けんかくていしん)」。
武装する必要があるほど危険にさらされた初期の郵便時代、二人はやがてさらに大きな動乱に巻き込まれ――。
※エブリスタでも連載中
【アラウコの叫び 】第2巻/16世紀の南米史
ヘロヘロデス
歴史・時代
【毎日07:20投稿】 動画制作などを視野に入れてる為、脚本として使いやすい様に、基本は会話形式で書いています。
1500年以降から300年に渡り繰り広げられた「アラウコ戦争」を題材にした物語です。
マプチェ族とスペイン勢力との激突だけでなく、
スペイン勢力内部での覇権争い、
そしてインカ帝国と複雑に様々な勢力が絡み合っていきます。
※ 現地の友人からの情報や様々な文献を元に史実に基づいて描かれている部分もあれば、
フィクションも混在しています。
HPでは人物紹介や年表等、最新話を先行公開しています。
公式HP:アラウコの叫び
youtubeチャンネル名:ヘロヘロデス
insta:herohero_agency
tiktok:herohero_agency
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる