30 / 84
30
しおりを挟む
第一次派遣隊と命名された彼らは、施設の会議室に集められた。しかし、そこに集まった人々の姿は、昨日まで現代的なスーツを着ていた官僚たちとは思えないほど変貌していた。
外務省の田中は、装飾の多い貴族風の衣装に身を包んでいる。深い青色のベルベットに金糸の刺繍が施された上着に、白いレースのシャツ、そして革製のブーツ。まるで中世ヨーロッパの宮廷に現れた外交官のような出立ちだった。
財務省の佐藤は、フルプレートではないが明らかに騎士風の装いをしている。金属の装飾がついた革鎧に剣を帯び、緻密な刺繍の入ったマントを羽織った姿は、まさに聖騎士そのものだ。
国土交通省の山本も、商人風のやや実用的な衣装であるが細かな模様が散りばめられており、大商家の主人といった出立で、中世の街並みが似合いそうだ。
一方、サミアやヨルンヘルド、クロストロフたちは、来た時の服装と同じように見えるが、実は地球で作り直されたものだった。
「皆さん、お似合いですね」
鮎川が微笑みながら説明を始めた。
「これらの衣装ですが、見た目は中世風でも、実は最新の技術が投入されています。綿や麻に見える生地にも特殊繊維が練り込まれており、普通の刃物では切ることができないほど丈夫で、耐火性能も高いものです」
田中が自分の袖を見ながら感心した様子で言った。
「なるほど、触った感じは普通の布なのに」
「ただし」
鮎川は注意を促すように続けた。
「思いっきり殴られれば骨くらい折れますし、針のように鋭すぎるものや液体は通しますので、過信は禁物です」
作戦説明が始まった。派遣隊は、大陸の東にある国の使節団が交易のきっかけづくりと物見遊山に来たという設定で通すことになった。
「まず、アガルタに到着したら近くの領主邸に挨拶に訪れます」
鮎川は地図を広げながら説明した。
「その後、レフュランの王都に行き、可能ならば王にも謁見する予定です。そして最終的には、サミアさんたちの故郷であるナリア皇国近くまで移動し、状況を探った後、エドモンガルト門から地球に戻る計画です」
「期間はどのくらいですか?」
山本が質問した。
「エドモンガルト門が次に開くのは七十八日後です。つまり、七十八日で調査を終えなければなりません」
二か月半という期間は、異世界調査としては決して長くはない。むしろ短すぎるくらいだった。
「どう?この服装、似合う?変じゃない?」
佐藤が苦笑いしながら自分の騎士装束を見下ろした。
「私は剣術の心得もないのに、こんな格好で大丈夫でしょうか?」
「佐藤さんは体格がいいのでよく似合っていますよ。それに、演技も任務のうちです」
田中が励ますように言った。
「私たちは外交官として、この困難な任務を成功させなければなりません」
そんな使節団メンバーの会話を聞きながら、鮎川が移動を促した。
「それでは、時間です。門の前に移動しましょう」
鮎川の先導で到着した場所は、これまで施設内で見たことのない巨大な円形の空間だった。天井は高く、まるで大聖堂のような荘厳な雰囲気を醸し出している。
周囲の壁には奇妙な文様が彫られ、古代文字のようにも見える複雑な図形が連続している。天井の一部は半透明の鉱石のようなもので作られており、そこからかすかな自然光が差し込んでいた。
そして、その空間の中心に、それはあった。
円柱の柱が左右に二本、垂直に立ち、その上にまっすぐな長方形の柱が横たわっている。まるで日本の鳥居や、ギリシャのパルテノン神殿を思わせる形状だった。
「これは……」
息を呑む音が聞こえる。田中が驚愕の声を上げた。
「この形……世界各地で神聖な場所の入口に使われていた構造です。日本の神社もそうですし、ヨーロッパでは巨石文化にも似たものがあります。まさか、古代の人々はこの門の存在を……?」
花巻が頷きながら説明を加えた。
「この世界では神話や伝承、聖域として残っているものの中に、異界とのつながりが密かに記録されていた可能性があります。実際、この門の構造や材質は、今の技術でも完全には解明されていません」
サミアが前に出てきた。
「さあ、そろそろ開きます。準備してください」
皆が静まりかえる中、門がゆっくりと起動を始めた。
外務省の田中は、装飾の多い貴族風の衣装に身を包んでいる。深い青色のベルベットに金糸の刺繍が施された上着に、白いレースのシャツ、そして革製のブーツ。まるで中世ヨーロッパの宮廷に現れた外交官のような出立ちだった。
財務省の佐藤は、フルプレートではないが明らかに騎士風の装いをしている。金属の装飾がついた革鎧に剣を帯び、緻密な刺繍の入ったマントを羽織った姿は、まさに聖騎士そのものだ。
国土交通省の山本も、商人風のやや実用的な衣装であるが細かな模様が散りばめられており、大商家の主人といった出立で、中世の街並みが似合いそうだ。
一方、サミアやヨルンヘルド、クロストロフたちは、来た時の服装と同じように見えるが、実は地球で作り直されたものだった。
「皆さん、お似合いですね」
鮎川が微笑みながら説明を始めた。
「これらの衣装ですが、見た目は中世風でも、実は最新の技術が投入されています。綿や麻に見える生地にも特殊繊維が練り込まれており、普通の刃物では切ることができないほど丈夫で、耐火性能も高いものです」
田中が自分の袖を見ながら感心した様子で言った。
「なるほど、触った感じは普通の布なのに」
「ただし」
鮎川は注意を促すように続けた。
「思いっきり殴られれば骨くらい折れますし、針のように鋭すぎるものや液体は通しますので、過信は禁物です」
作戦説明が始まった。派遣隊は、大陸の東にある国の使節団が交易のきっかけづくりと物見遊山に来たという設定で通すことになった。
「まず、アガルタに到着したら近くの領主邸に挨拶に訪れます」
鮎川は地図を広げながら説明した。
「その後、レフュランの王都に行き、可能ならば王にも謁見する予定です。そして最終的には、サミアさんたちの故郷であるナリア皇国近くまで移動し、状況を探った後、エドモンガルト門から地球に戻る計画です」
「期間はどのくらいですか?」
山本が質問した。
「エドモンガルト門が次に開くのは七十八日後です。つまり、七十八日で調査を終えなければなりません」
二か月半という期間は、異世界調査としては決して長くはない。むしろ短すぎるくらいだった。
「どう?この服装、似合う?変じゃない?」
佐藤が苦笑いしながら自分の騎士装束を見下ろした。
「私は剣術の心得もないのに、こんな格好で大丈夫でしょうか?」
「佐藤さんは体格がいいのでよく似合っていますよ。それに、演技も任務のうちです」
田中が励ますように言った。
「私たちは外交官として、この困難な任務を成功させなければなりません」
そんな使節団メンバーの会話を聞きながら、鮎川が移動を促した。
「それでは、時間です。門の前に移動しましょう」
鮎川の先導で到着した場所は、これまで施設内で見たことのない巨大な円形の空間だった。天井は高く、まるで大聖堂のような荘厳な雰囲気を醸し出している。
周囲の壁には奇妙な文様が彫られ、古代文字のようにも見える複雑な図形が連続している。天井の一部は半透明の鉱石のようなもので作られており、そこからかすかな自然光が差し込んでいた。
そして、その空間の中心に、それはあった。
円柱の柱が左右に二本、垂直に立ち、その上にまっすぐな長方形の柱が横たわっている。まるで日本の鳥居や、ギリシャのパルテノン神殿を思わせる形状だった。
「これは……」
息を呑む音が聞こえる。田中が驚愕の声を上げた。
「この形……世界各地で神聖な場所の入口に使われていた構造です。日本の神社もそうですし、ヨーロッパでは巨石文化にも似たものがあります。まさか、古代の人々はこの門の存在を……?」
花巻が頷きながら説明を加えた。
「この世界では神話や伝承、聖域として残っているものの中に、異界とのつながりが密かに記録されていた可能性があります。実際、この門の構造や材質は、今の技術でも完全には解明されていません」
サミアが前に出てきた。
「さあ、そろそろ開きます。準備してください」
皆が静まりかえる中、門がゆっくりと起動を始めた。
30
あなたにおすすめの小説
異世界ランドへようこそ
来栖とむ
ファンタジー
都内から車で1時間半。奥多摩の山中に突如現れた、話題の新名所――「奥多摩異世界ランド」。
中世ヨーロッパ風の街並みと、ダンジョンや魔王城を完全再現した異世界体験型レジャーパークだ。
26歳・無職の佐伯雄一は、ここで“冒険者A”のバイトを始める。
勇者を導くNPC役として、剣を振るい、魔物に襲われ、時にはイベントを盛り上げる毎日。
同僚には、美人なギルド受付のサーミャ、エルフの弓使いフラーラ、ポンコツ騎士メリーナなど、魅力的な“登場人物”が勢ぞろい。
――しかしある日、「魔王が逃げた」という衝撃の知らせが入る。
「体格が似てるから」という理由で、雄一は急遽、魔王役の代役を任されることに。
だが、演技を終えた後、案内された扉の先にあったのは……本物の異世界だった!
経営者は魔族、同僚はガチの魔物。
魔王城で始まる、まさかの「異世界勤務」生活!
やがて魔王の後継問題に巻き込まれ、スタンピードも発生(?)の裏で、フラーラとの恋が動き出す――。
笑えて、トキメいて、ちょっと泣ける。
現代×異世界×職場コメディ、開園!
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
【アラウコの叫び 】第2巻/16世紀の南米史
ヘロヘロデス
歴史・時代
【毎日07:20投稿】 動画制作などを視野に入れてる為、脚本として使いやすい様に、基本は会話形式で書いています。
1500年以降から300年に渡り繰り広げられた「アラウコ戦争」を題材にした物語です。
マプチェ族とスペイン勢力との激突だけでなく、
スペイン勢力内部での覇権争い、
そしてインカ帝国と複雑に様々な勢力が絡み合っていきます。
※ 現地の友人からの情報や様々な文献を元に史実に基づいて描かれている部分もあれば、
フィクションも混在しています。
HPでは人物紹介や年表等、最新話を先行公開しています。
公式HP:アラウコの叫び
youtubeチャンネル名:ヘロヘロデス
insta:herohero_agency
tiktok:herohero_agency
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる