アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ

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 第一次派遣隊と命名された彼らは、施設の会議室に集められた。しかし、そこに集まった人々の姿は、昨日まで現代的なスーツを着ていた官僚たちとは思えないほど変貌していた。
 外務省の田中は、装飾の多い貴族風の衣装に身を包んでいる。深い青色のベルベットに金糸の刺繍が施された上着に、白いレースのシャツ、そして革製のブーツ。まるで中世ヨーロッパの宮廷に現れた外交官のような出立ちだった。
 財務省の佐藤は、フルプレートではないが明らかに騎士風の装いをしている。金属の装飾がついた革鎧に剣を帯び、緻密な刺繍の入ったマントを羽織った姿は、まさに聖騎士そのものだ。
 国土交通省の山本も、商人風のやや実用的な衣装であるが細かな模様が散りばめられており、大商家の主人といった出立で、中世の街並みが似合いそうだ。
 一方、サミアやヨルンヘルド、クロストロフたちは、来た時の服装と同じように見えるが、実は地球で作り直されたものだった。
「皆さん、お似合いですね」
 鮎川が微笑みながら説明を始めた。
「これらの衣装ですが、見た目は中世風でも、実は最新の技術が投入されています。綿や麻に見える生地にも特殊繊維が練り込まれており、普通の刃物では切ることができないほど丈夫で、耐火性能も高いものです」
 田中が自分の袖を見ながら感心した様子で言った。
「なるほど、触った感じは普通の布なのに」
「ただし」
 鮎川は注意を促すように続けた。
「思いっきり殴られれば骨くらい折れますし、針のように鋭すぎるものや液体は通しますので、過信は禁物です」

 作戦説明が始まった。派遣隊は、大陸の東にある国の使節団が交易のきっかけづくりと物見遊山に来たという設定で通すことになった。
「まず、アガルタに到着したら近くの領主邸に挨拶に訪れます」
 鮎川は地図を広げながら説明した。
「その後、レフュランの王都に行き、可能ならば王にも謁見する予定です。そして最終的には、サミアさんたちの故郷であるナリア皇国近くまで移動し、状況を探った後、エドモンガルト門から地球に戻る計画です」
「期間はどのくらいですか?」
 山本が質問した。
「エドモンガルト門が次に開くのは七十八日後です。つまり、七十八日で調査を終えなければなりません」
 二か月半という期間は、異世界調査としては決して長くはない。むしろ短すぎるくらいだった。

「どう?この服装、似合う?変じゃない?」
 佐藤が苦笑いしながら自分の騎士装束を見下ろした。
「私は剣術の心得もないのに、こんな格好で大丈夫でしょうか?」
「佐藤さんは体格がいいのでよく似合っていますよ。それに、演技も任務のうちです」
 田中が励ますように言った。
「私たちは外交官として、この困難な任務を成功させなければなりません」
 そんな使節団メンバーの会話を聞きながら、鮎川が移動を促した。
「それでは、時間です。門の前に移動しましょう」

 鮎川の先導で到着した場所は、これまで施設内で見たことのない巨大な円形の空間だった。天井は高く、まるで大聖堂のような荘厳な雰囲気を醸し出している。
 周囲の壁には奇妙な文様が彫られ、古代文字のようにも見える複雑な図形が連続している。天井の一部は半透明の鉱石のようなもので作られており、そこからかすかな自然光が差し込んでいた。
 そして、その空間の中心に、それはあった。
 円柱の柱が左右に二本、垂直に立ち、その上にまっすぐな長方形の柱が横たわっている。まるで日本の鳥居や、ギリシャのパルテノン神殿を思わせる形状だった。
「これは……」
 息を呑む音が聞こえる。田中が驚愕の声を上げた。
「この形……世界各地で神聖な場所の入口に使われていた構造です。日本の神社もそうですし、ヨーロッパでは巨石文化にも似たものがあります。まさか、古代の人々はこの門の存在を……?」
 花巻が頷きながら説明を加えた。
「この世界では神話や伝承、聖域として残っているものの中に、異界とのつながりが密かに記録されていた可能性があります。実際、この門の構造や材質は、今の技術でも完全には解明されていません」
 サミアが前に出てきた。
「さあ、そろそろ開きます。準備してください」
 皆が静まりかえる中、門がゆっくりと起動を始めた。
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