アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ

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 王の質問は核心を突くものだった。
「貴国もそのような武器を持っているのでしょうか?」
 使節団のメンバーは一瞬緊張した。正直に答えるべきか、曖昧にごまかすべきか。
 田中が慎重に答えた。
「我が国にも様々な技術がございますが、それを他国への侵略に使うつもりはありません」
「そうですか」
 王は安堵の表情を見せた。
「では、貴国がこの地域にそういった武器で攻撃してくる意思はないということですね?」
「もちろんです」
 田中が断言した。
「我が国は平和を愛する国です。他国を侵略するつもりは一切ありません」
「それを聞いて安心いたしました」
 王が微笑んだ。
「できるなら、これからも友好的な関係を結んでいきたいと思います」
「我が国としても、そうありたいと考えております」
 田中が答えると、謁見の間の雰囲気が和やかになった。
 山﨑が前に出て発言した。
「陛下、この使節団は信頼に値します。私が保証いたします」
「山﨑殿の言葉なら間違いありません」
 王が頷いた。
「長年の友人として、貴殿を信頼しています」

 話は次第に具体的な情報交換に移っていった。
「実は、最近気になることがあります。今回のことと関係はないのかもしれませんが」
 王が眉をひそめた。
「この王国の領内で、瘴気の濃い森が発見されました」
「瘴気の森?」
 山本が聞き返した。
「ええ、近づくと体調を崩す者が続出し、奇怪な現象も報告されています」
 ユリナス(花巻吾郎)が口を開いた。
「それは恐らく、始祖種である我々の祖先が遺した遺物の影響でしょう」
「遺物?」
 王が興味深そうに聞いた。
「はい。古代の技術で作られた装置が、長い年月を経て不安定になっているのかもしれません。古い文献に似たような記述が残されています」
 ユリナスは説明を続けた。
「そういった場所は、遺物を求めプロネス族も狙ってくる可能性があります。早めに調査した方がよろしいでしょう」
「なるほど」
 王が考え込んだ。
「確かに、そのような場所を放置しておくのは危険ですね」
「よろしければ我々も調査いたしましょう」
 ユリナスが申し出た。
「ナリア方面への調査は、我々が向かう途中で行います」
 王は感謝の表情を見せた。
「それはありがたい。しかし、危険な任務です」
「構いません」
 クロストロフが力強く答えた。
「我々の大切な故郷を救うためです」

 王は立ち上がり、威厳に満ちた声で宣言した。
「わかりました。ナリアとの外交上の問題もあるため、その森までの間に限りますが、バナー程度になるが護衛につけましょう」
 使節団は驚いた。バナーといえば現代の一小隊、多ければ五十人近い兵力になる。それほど重要な任務だと王が認識しているということだろう。
「また、移動のための物資などの援助も申し出ます」
 王の好意に、田中が深々と頭を下げた。
「ご厚意、心より感謝いたします」
「いえいえ、我々も利益を得ることになるのです」
 王が微笑んだ。
「貴国との友好関係、そして領内の危険な場所の調査。互いに利益のある協力関係です」
 謁見は成功裏に終わった。使節団は王から必要な情報と支援の約束を取り付けることができた。
「それでは、明日から準備を始めましょう」
 王が最後に言った。
「この大地の住む皆のため、一日も早く真実を明らかにしていただきたい」
 使節団は深々と一礼し、王城を後にした。
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