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一行は、安全のため、いったんテンジーク近くまで移動し、その国境近くを経由するコースを選んだ。
「日程的にはギリギリですが」
田中が地図を見ながら言った。
「状況を確認するためには仕方がありません」
「安全が第一です」
クロストロフが頷いた。
「タリアで得た情報から判断すると、このコースなら大丈夫でしょう」
その判断は正しかったようだ。一行は特に問題なく、ナリア皇国の皇都ルクナーダまでたどり着いた。
しかし、皇都の様子は微妙に変わっているようだった。街自体は大きく変わっていないが、人々の表情が違う。怯えたような、不安そうな顔をして、足早に行き交っている。
「様子がおかしいですね」
佐藤が周囲を警戒しながら呟いた。
やがて、街の中心部に進むと、皇宮が見えてきた。
「なにあれ!」
サミアが叫んだ。
「大切な神木が倒されている!」
一行が皇宮と呼ばれた巨大な建造物を見上げた。
「バベルの塔だ……」
山本が驚愕の声を上げた。
まさにその姿は、伝説にあるバベルの塔そっくりだった。円筒形の構造物が何段も積み重ねられ、全体で円錐形をしている建物は巨大で、小さな山と言ってもいいくらいの大きさだった。
しかし、その壁面は至る所で崩れている。瓦礫が散乱し、建物の一部は完全に崩落していた。そして、そのあちこちには、木を切り倒した後であろう巨大な切り株も見えている。
「この宮殿には」
ユリナスが悲しそうな表情で説明した。
「神木が植えられていました。ナリアの民は、それを信仰の対象にしているのです」
「世界樹ですか?」
山本が尋ねた。
「そうですね。我々は、ここに植えてあった木やそれを含めた宮殿全体を、ユグドラシルと呼んでいます」
ユリナスが答えた。
「九つの世界を繋ぎ、世界の中心に位置している木であるという言い伝えがあります」
「ユグドラシル……」
田中が息を呑んだ。
「北欧神話に出てくる世界樹が、本当にここにあった……」
その神聖な木々が、無残にも切り倒されている。サミアの目には涙が浮かんでいた。
「待ってください」
双眼鏡で様子を見ていた瀬崎が声を上げた。
「崩落した宮殿の一部から、金色に輝く二本の金属製の砲身のようなものが出ています」
「見せてください」
田中が双眼鏡を受け取り、確認した。
「これは……」
「アークかもしれません」
佐藤が緊張した声で言った。
一行の中に緊張が走った。もしあれが本当にアークであれば、事態は想像以上に深刻だ。
「どちらにしても、宮殿の中の様子を知らなければなりません」
クロストロフが決然と言った。
「まずは皇都で宿を取り、調査を始めましょう」
一行は街中の宿屋に部屋を取った。そして、慎重に情報収集を開始した。
すると、情勢はすぐに判明した。
「プロトアの一部勢力が蜂起したようです」
ユリナスが集めた情報を整理しながら説明した。
「彼らは、この世界で自分たちは不当に虐げられていると主張しています。それは、ナリアであっても同じだと」
「真のアガルタの支配者であるのはプロトアであるはずだ、と」
クロストロフが苦い表情で続けた。
「そして、神の国から来た仲間と共に、ナリアをプロトアに解放するために戦っている、と人々に宣伝しているのです」
「神の国……」
久世が眉をひそめた。
「ルラで聞いた『神の国の復活』と関係がありそうですね」
「すでに皇帝や中心となる貴族たちは、プロトアに捕えられています」
ヨルンヘルムが兵士たちから得た情報を伝えた。
「そのため、ナリアの兵士も迂闊に宮殿に攻め入ることができない状況が続いているようです」
「金色の砲身についての情報は?」
田中が尋ねたが、誰も首を振った。
「それについては、誰も知らないようです」
その時、佐野が窓の外を指差した。
「あれを見てください」
皇都の上空に、三角形の謎の飛行物体が浮かんでいた。
「ドローンにしては巨大すぎる……」
瀬崎が呟いた。
「小型のビジネスジェット機程度の大きさはありそうですね」
「UFO……?」
山本が信じられないという表情で見上げた。
しかし、一瞬にして、その姿は消えた。まるで空気に溶け込むように。
「消えた……」
「光学迷彩か何かでしょうか」
久世が困惑した表情で言った。
「いずれにせよ、我々の予想を超える技術が投入されているようです」
その夜、一行は今後の行動について話し合った。
「日程の問題があります」
田中が時計を見ながら言った。
「エドモンガルドの門が開く時間に間に合わなくなりそうです」
「一旦、地球に戻りましょう」
佐藤が提案した。
「状況を報告し、次の対策を考える必要があります」
「私は残ります」
ユリナスが静かに、しかし強い意志を込めて言った。
「助けなければならない人がいます。それに、金色の砲身がアークであったら、そのままにしておくのは危険すぎます」
「ユリナス……」
「私も残ります」
サミアが頷いた。
「これは私たちの国のことです」
「俺たちも残る」
クロストロフとヨルンヘルムも立ち上がった。
「何かあったら、テンジークに逃げます。大丈夫です」
「しかし」
田中が心配そうに言った。
「地球からの兵がいる中、近代兵器に不慣れな四人では……」
「では、自分たちも残ります」
久世と瀬崎が前に出た。
「みなさんの安全な帰還のため、3名はみなさんに同行し、私たち2名は、ユリナスさんたちと行動を共にしたいと思います」
「君たちが?」
「はい」
瀬崎が真剣な表情で頷いた。
「大丈夫です。もし何かあったら、山﨑さんを頼りますから」
久世が笑顔で言った。
田中は深く息を吸い、二人の目を見つめた。
「分かった。君たちを信じる」
こうして、一行は二手に分かれることになった。
田中、佐藤、山本、佐野、伊賀﨑、前田は地球に戻り、状況を報告する。
ユリナス、サミア、クロストロフ、ヨルンヘルム、久世、瀬崎は皇都に残り、状況の監視と可能であれば救出作戦を試みる。
「必ず戻ってきてください」
田中が六人に告げた。
「約束します」
ユリナスが微笑んだ。
「日程的にはギリギリですが」
田中が地図を見ながら言った。
「状況を確認するためには仕方がありません」
「安全が第一です」
クロストロフが頷いた。
「タリアで得た情報から判断すると、このコースなら大丈夫でしょう」
その判断は正しかったようだ。一行は特に問題なく、ナリア皇国の皇都ルクナーダまでたどり着いた。
しかし、皇都の様子は微妙に変わっているようだった。街自体は大きく変わっていないが、人々の表情が違う。怯えたような、不安そうな顔をして、足早に行き交っている。
「様子がおかしいですね」
佐藤が周囲を警戒しながら呟いた。
やがて、街の中心部に進むと、皇宮が見えてきた。
「なにあれ!」
サミアが叫んだ。
「大切な神木が倒されている!」
一行が皇宮と呼ばれた巨大な建造物を見上げた。
「バベルの塔だ……」
山本が驚愕の声を上げた。
まさにその姿は、伝説にあるバベルの塔そっくりだった。円筒形の構造物が何段も積み重ねられ、全体で円錐形をしている建物は巨大で、小さな山と言ってもいいくらいの大きさだった。
しかし、その壁面は至る所で崩れている。瓦礫が散乱し、建物の一部は完全に崩落していた。そして、そのあちこちには、木を切り倒した後であろう巨大な切り株も見えている。
「この宮殿には」
ユリナスが悲しそうな表情で説明した。
「神木が植えられていました。ナリアの民は、それを信仰の対象にしているのです」
「世界樹ですか?」
山本が尋ねた。
「そうですね。我々は、ここに植えてあった木やそれを含めた宮殿全体を、ユグドラシルと呼んでいます」
ユリナスが答えた。
「九つの世界を繋ぎ、世界の中心に位置している木であるという言い伝えがあります」
「ユグドラシル……」
田中が息を呑んだ。
「北欧神話に出てくる世界樹が、本当にここにあった……」
その神聖な木々が、無残にも切り倒されている。サミアの目には涙が浮かんでいた。
「待ってください」
双眼鏡で様子を見ていた瀬崎が声を上げた。
「崩落した宮殿の一部から、金色に輝く二本の金属製の砲身のようなものが出ています」
「見せてください」
田中が双眼鏡を受け取り、確認した。
「これは……」
「アークかもしれません」
佐藤が緊張した声で言った。
一行の中に緊張が走った。もしあれが本当にアークであれば、事態は想像以上に深刻だ。
「どちらにしても、宮殿の中の様子を知らなければなりません」
クロストロフが決然と言った。
「まずは皇都で宿を取り、調査を始めましょう」
一行は街中の宿屋に部屋を取った。そして、慎重に情報収集を開始した。
すると、情勢はすぐに判明した。
「プロトアの一部勢力が蜂起したようです」
ユリナスが集めた情報を整理しながら説明した。
「彼らは、この世界で自分たちは不当に虐げられていると主張しています。それは、ナリアであっても同じだと」
「真のアガルタの支配者であるのはプロトアであるはずだ、と」
クロストロフが苦い表情で続けた。
「そして、神の国から来た仲間と共に、ナリアをプロトアに解放するために戦っている、と人々に宣伝しているのです」
「神の国……」
久世が眉をひそめた。
「ルラで聞いた『神の国の復活』と関係がありそうですね」
「すでに皇帝や中心となる貴族たちは、プロトアに捕えられています」
ヨルンヘルムが兵士たちから得た情報を伝えた。
「そのため、ナリアの兵士も迂闊に宮殿に攻め入ることができない状況が続いているようです」
「金色の砲身についての情報は?」
田中が尋ねたが、誰も首を振った。
「それについては、誰も知らないようです」
その時、佐野が窓の外を指差した。
「あれを見てください」
皇都の上空に、三角形の謎の飛行物体が浮かんでいた。
「ドローンにしては巨大すぎる……」
瀬崎が呟いた。
「小型のビジネスジェット機程度の大きさはありそうですね」
「UFO……?」
山本が信じられないという表情で見上げた。
しかし、一瞬にして、その姿は消えた。まるで空気に溶け込むように。
「消えた……」
「光学迷彩か何かでしょうか」
久世が困惑した表情で言った。
「いずれにせよ、我々の予想を超える技術が投入されているようです」
その夜、一行は今後の行動について話し合った。
「日程の問題があります」
田中が時計を見ながら言った。
「エドモンガルドの門が開く時間に間に合わなくなりそうです」
「一旦、地球に戻りましょう」
佐藤が提案した。
「状況を報告し、次の対策を考える必要があります」
「私は残ります」
ユリナスが静かに、しかし強い意志を込めて言った。
「助けなければならない人がいます。それに、金色の砲身がアークであったら、そのままにしておくのは危険すぎます」
「ユリナス……」
「私も残ります」
サミアが頷いた。
「これは私たちの国のことです」
「俺たちも残る」
クロストロフとヨルンヘルムも立ち上がった。
「何かあったら、テンジークに逃げます。大丈夫です」
「しかし」
田中が心配そうに言った。
「地球からの兵がいる中、近代兵器に不慣れな四人では……」
「では、自分たちも残ります」
久世と瀬崎が前に出た。
「みなさんの安全な帰還のため、3名はみなさんに同行し、私たち2名は、ユリナスさんたちと行動を共にしたいと思います」
「君たちが?」
「はい」
瀬崎が真剣な表情で頷いた。
「大丈夫です。もし何かあったら、山﨑さんを頼りますから」
久世が笑顔で言った。
田中は深く息を吸い、二人の目を見つめた。
「分かった。君たちを信じる」
こうして、一行は二手に分かれることになった。
田中、佐藤、山本、佐野、伊賀﨑、前田は地球に戻り、状況を報告する。
ユリナス、サミア、クロストロフ、ヨルンヘルム、久世、瀬崎は皇都に残り、状況の監視と可能であれば救出作戦を試みる。
「必ず戻ってきてください」
田中が六人に告げた。
「約束します」
ユリナスが微笑んだ。
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