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「これは無理ですね」
佐野が、エドモンガルドの丘を見上げながら呟いた。
目の前に聳え立つのは、もはや丘というより絶壁と呼ぶべき険しい崖だった。サミアの地震魔法によって大きく抉られ、岩肌が剥き出しになっている。
「早めに着いて正解でした」
田中が額の汗を拭った。
「では、予定通り裏から回り、崖を上から降りるということで、いいですね」
伊賀﨑が地図を確認しながら言った。
「しょうがないですね」
山本が不安そうに崖を見上げた。
「でも、かなり高さがありますよ」
「大丈夫です」
前田が軽く笑った。
「十メートルちょっとでしょう。ロープがあれば問題ありません」
「そうそう。訓練でもっと高いところから降りたことありますから」
佐野が自信満々に答えた。
田中、佐藤、山本の文官三人は諦めた表情で顔を見合わせた。自衛官たちの身体能力と、自分たちの運動能力の差を痛感する。
「では、行きましょう」
佐野、伊賀﨑、前田の自衛官三人が先頭に立ち、藪を切り拓きながら裏側から山頂を目指し始めた。
文官三人は、必死にその後を追った。
一方、ナリアの皇都に残った六人は、二手に分かれて行動を開始していた。
「では、我々は穏健派の領主のもとへ向かいます」
クロストロフが地図を確認しながら言った。
「この地に詳しい私たち三人が、プロネスの貴族たちを連れて行くのが最善でしょう」
サミア、ヨルンヘルム、クロストロフの三人は、パン屋で匿われていたプロネス族の貴族たちを伴って、穏健派という領主サザルンの下に向かうことになった。
「我々は皇宮への侵入を試みます」
久世が頷いた。
「近代兵器の知識がある三人で行動するのが、安全でしょう」
ユリナス、久世、瀬崎の三人が、皇帝たちの救出を担当する。
「夜目の効くプロネスへの警戒もありますから」
サミアが付け加えた。
「日中、堂々と行動しましょう。かえってその方が怪しまれません」
サミアたちは、プロネス族の兵士が兵舎として使っている宿屋から、こっそり服を手に入れた。それを貴族たちに着せる。
「これなら、プロネスの兵士に見えるでしょう」
ヨルンヘルムが満足そうに頷いた。
皇都を出る時、門番のプロネス族の兵士が呼び止めた。
「待て。お前たちは何者だ」
「こいつらが怪しい動きをしていたので、街から追い出すところだ」
サミアが堂々と答えた。
兵士は一瞬疑わしそうな目を向けたが、やがて頷いた。
「そうか。ご苦労だな」
無事に皇都を出た六人は、テンジーク近くにある穏健派領主サザルンの城を目指して歩き始めた。
その頃、ユリナスたち三人は、すでに皇宮の中にいた。
パン屋からの秘密の通路は、まだ使えた。石造りの狭い階段を降り、暗い地下道を進む。
「二百年前と変わっていませんね」
ユリナスが懐かしそうに呟いた。
「ここを通って、よく宮殿から遊びに出たものです」
地下道を抜けると、宮殿内部の迷路のような空間に出た。神木の根が壁を突き破り、何度も修繕された跡が複雑な構造を作り出している。
「ここはもっと広かったはずなんですが……」
ユリナスが狭い穴の前で首を傾げた。
「それは二百年前の話で、ユリナスさんもまだ小さかったんじゃないですか」
久世が苦笑いしながら言った。
「そうかもしれませんね」
ユリナスが照れくさそうに笑った。
三人は狭い穴を這うように抜けていく。体格のいい瀬崎の服が岩に引っかかり、破れるような音がした。
「大丈夫ですか?」
「ええ大丈夫です、服の縫い目が少しほつれただけです。さすが、この生地は丈夫ですね」
やがて、後宮の前の中庭のような場所に出た。
そこには、プロネス族と地球の軍服を着た兵士が数名、警備に当たっていた。兵士の数は多くはないが、中庭には花壇の草花程度しか身を隠すものがない。
「これでは近づけませんね」
久世が壁の陰から様子を窺った。
「ここから兵士に見つからずに後宮に入るのは、不可能なようです」
「一旦、戻りましょう」
ユリナスが提案した。
「作戦を練り直す必要があります」
三人は来た道を引き返し、宿に戻った。
佐野が、エドモンガルドの丘を見上げながら呟いた。
目の前に聳え立つのは、もはや丘というより絶壁と呼ぶべき険しい崖だった。サミアの地震魔法によって大きく抉られ、岩肌が剥き出しになっている。
「早めに着いて正解でした」
田中が額の汗を拭った。
「では、予定通り裏から回り、崖を上から降りるということで、いいですね」
伊賀﨑が地図を確認しながら言った。
「しょうがないですね」
山本が不安そうに崖を見上げた。
「でも、かなり高さがありますよ」
「大丈夫です」
前田が軽く笑った。
「十メートルちょっとでしょう。ロープがあれば問題ありません」
「そうそう。訓練でもっと高いところから降りたことありますから」
佐野が自信満々に答えた。
田中、佐藤、山本の文官三人は諦めた表情で顔を見合わせた。自衛官たちの身体能力と、自分たちの運動能力の差を痛感する。
「では、行きましょう」
佐野、伊賀﨑、前田の自衛官三人が先頭に立ち、藪を切り拓きながら裏側から山頂を目指し始めた。
文官三人は、必死にその後を追った。
一方、ナリアの皇都に残った六人は、二手に分かれて行動を開始していた。
「では、我々は穏健派の領主のもとへ向かいます」
クロストロフが地図を確認しながら言った。
「この地に詳しい私たち三人が、プロネスの貴族たちを連れて行くのが最善でしょう」
サミア、ヨルンヘルム、クロストロフの三人は、パン屋で匿われていたプロネス族の貴族たちを伴って、穏健派という領主サザルンの下に向かうことになった。
「我々は皇宮への侵入を試みます」
久世が頷いた。
「近代兵器の知識がある三人で行動するのが、安全でしょう」
ユリナス、久世、瀬崎の三人が、皇帝たちの救出を担当する。
「夜目の効くプロネスへの警戒もありますから」
サミアが付け加えた。
「日中、堂々と行動しましょう。かえってその方が怪しまれません」
サミアたちは、プロネス族の兵士が兵舎として使っている宿屋から、こっそり服を手に入れた。それを貴族たちに着せる。
「これなら、プロネスの兵士に見えるでしょう」
ヨルンヘルムが満足そうに頷いた。
皇都を出る時、門番のプロネス族の兵士が呼び止めた。
「待て。お前たちは何者だ」
「こいつらが怪しい動きをしていたので、街から追い出すところだ」
サミアが堂々と答えた。
兵士は一瞬疑わしそうな目を向けたが、やがて頷いた。
「そうか。ご苦労だな」
無事に皇都を出た六人は、テンジーク近くにある穏健派領主サザルンの城を目指して歩き始めた。
その頃、ユリナスたち三人は、すでに皇宮の中にいた。
パン屋からの秘密の通路は、まだ使えた。石造りの狭い階段を降り、暗い地下道を進む。
「二百年前と変わっていませんね」
ユリナスが懐かしそうに呟いた。
「ここを通って、よく宮殿から遊びに出たものです」
地下道を抜けると、宮殿内部の迷路のような空間に出た。神木の根が壁を突き破り、何度も修繕された跡が複雑な構造を作り出している。
「ここはもっと広かったはずなんですが……」
ユリナスが狭い穴の前で首を傾げた。
「それは二百年前の話で、ユリナスさんもまだ小さかったんじゃないですか」
久世が苦笑いしながら言った。
「そうかもしれませんね」
ユリナスが照れくさそうに笑った。
三人は狭い穴を這うように抜けていく。体格のいい瀬崎の服が岩に引っかかり、破れるような音がした。
「大丈夫ですか?」
「ええ大丈夫です、服の縫い目が少しほつれただけです。さすが、この生地は丈夫ですね」
やがて、後宮の前の中庭のような場所に出た。
そこには、プロネス族と地球の軍服を着た兵士が数名、警備に当たっていた。兵士の数は多くはないが、中庭には花壇の草花程度しか身を隠すものがない。
「これでは近づけませんね」
久世が壁の陰から様子を窺った。
「ここから兵士に見つからずに後宮に入るのは、不可能なようです」
「一旦、戻りましょう」
ユリナスが提案した。
「作戦を練り直す必要があります」
三人は来た道を引き返し、宿に戻った。
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