スピード離婚した夫とリターンらぶ

鳴宮鶉子

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濡れ衣の結末 side蓮翔

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「……福岡支店に3週間出張ですか!!」

やっと凛子と誤解がとけて毎日凛子を味わえる生活が送れるようになったのに、また福岡支店に長期出張する事になりげんなりする。

「マルモのポリスターマンションを神崎工務店仲介でうちが受ける事になった。一棟建てたら後は各地に同じマンションを軒並み建てていく予定になってる」

専務をしてる拓磨さんに従わないといけないが、凛子と離れるのが嫌だ。
それに、福岡に行くと吉川がまた何かやらかしてきて凛子に誤解されるかもしれない。

「……それとだな。お前の代わりに配属させたの中津川からの報告なんだが、吉川がお前の子を妊娠してると社内で言いふらしているらしい。1人で産んで勝手に育てるのはいいが、お前の子と言い張るのは許せないな。お前の子じゃないと証明しないと後々面倒臭い事になりそうだ。
5ヶ月目に入ったら中絶ができなくなるしな……」

東京本社にいると福岡支店の事は何もわからない。
それをいい事に吉川が腹の子を俺の子と言い張って、シングルマザーをしようとしてるらしい。

「探偵に吉川と田辺課長の動向を監視させ、毎週水曜日と金曜日に田辺課長が吉川のマンションに通ってる証拠写真を撮ってる。外で手を繋いでる写真と、田辺課長が吉川のお腹を撫でてる写真もある。これを2人に見せて問い詰めたら不倫関係を認め、腹の子が田辺課長の子だと認めるだろう」

拓磨さんが茶封筒から吉川と田辺課長の2ショット写真をだして俺に見せた。

「2人を問い詰める時は俺も立ち合う。桐嶋はポリスターマンションの設計の事だけを考えろ」

女関係で修羅場を何度も経験した拓磨さんに任せたら無事に解決できるはず。

とばっちりな迷惑事から早く解放されたい。


「凛子、土日は帰ってくるから」

出張に向かう日の朝、7時半の新幹線に乗るために先に家を出る俺。
玄関で凛子を抱きしめ、唇にキスを落とす。
ついつい口膣に舌を割り入れて凛子を味わってしまい、俺と一緒に福岡支店に向かう拓磨さんが痺れを切らして迎えにきてインターフォンを連打してきた。
仕方なくキスを辞め、家から出る。

「蓮翔さん、行ってらっしゃい!!」
上目遣いに見つめてきた可愛すぎる妻を置いて出張するのが苦痛でならない。

*****
「桐嶋、今日、福岡に着いてすぐに関係者を集めて吉川と田辺課長を問い詰めるから。福岡支店に神崎社長と副社長、田辺課長が来られる。応接室ではなくミーティング室でポレスターマンションの担当割り当てと見せかけて尋問する」

新幹線の中で拓磨さんが楽しそうに、公開尋問の手順を話す。
30人以上社員と関連会社が集まる中で不倫を暴露し、腹の子が俺の子だと嘘をついた事に対して謝罪させる手筈になってるようだった。

福岡支店に到着し、ミーティング室に入る。
俺が非道なろくでなしと思ってる福岡支店の社員から冷たい目線を浴びせられ、居心地が悪い。

「……あかりだ」
拓磨さんがボソッと呟いたのが耳に入り、拓磨さんの目線の先を見ると白いスーツに空色のブラウスを着た美しい女性がいた。

拓磨さんが遊びで一夜限りの関係を持った女性だとしたら、責任をとれとか交際を迫まってきて修羅場になるかもしれない。

13時からミーティングが始まる。
拓磨さんがパワーポイント用のノートパソコンに吉川と田辺課長の不倫の証拠が入ったスライド原稿のデータを入れた。

俺と凛子を離婚の危機に陥れた仕返しと、拓磨さんは2人がこの地の建設業界会社にいられなくなるぐらいの見られたらマズイ写真と動画を用意した。


ミーティングが始まり、スクリーンに吉川と田辺課長が出張先のホテルで一夜を共にした証拠動画が流された。

吉川の部屋に訪れた田辺課長にドアを開けてすぐに抱きついてキスをする。

その動画を見て、ミーティングに参加しているクライアントとうちの社員が騒つく。

田辺課長に妻子がいる事をここにいる人達は全員知っている。
左手薬指に結婚指輪をはめていて、愛妻家として有名だった。

次々と動画が流れる。
吉川が住むマンションへ田辺課長が通ってる所や産婦人科医院に付き添ってたりもした。

『麻花《あさか》、おなかな子が俺の子だとはバレてないよな?』

『大丈夫。東京本社に戻った桐嶋課長の子だと周りに言ってるから。出張の時にフロントに合鍵を借りて中に入って身体関係を持ったと思わせるような写真を撮って、それを桐嶋課長と奥さんに見せた。奥さんはその写真を信じたみたいだから、離婚になると思う。桐嶋課長は身に覚えがないから否定すると思うけど、別に結婚を迫ったり養育費を請求するつもりないからそのままにしてる。わたし、シングルマザーで、この子を育てるから……』

産婦人科医院の帰りの2人の会話に、吉川の腹の子が俺の子だと信じてた社員達が騒然とした。

「吉川さん、お腹の子の父親を私の妹婿の桐嶋と言いふらし、あろう事か妹に嘘の浮気話をして2人を離婚に追い込もうとした。仕事とは関係ない事だが、人として信用に欠ける人だという事がよくわかった。インテリアプランナーの仕事を任せられない。本日をもって、購買部の出荷集荷業務に異動して貰う。すぐに荷物を片付けて1階の購買に行け!!」

拓磨さんが吉川に睨みつけるような冷たい眼差しを向けて言い放つと、吉川は泣きながらミーティング室から出て行った。

「……貴方、どういう事なの?」
田辺課長の奥さんらしき女性が部屋に入ってきて田辺課長に詰め寄る。

「……田辺課長、これからポリスターマンションに関するミーティングを始めるので出て行って下さい。うちの女性社員に同意とはいえ妻子持ちの貴方が手を出したのは許される事ではありません。信用に欠けるので、うちの担当を降りて下さい」

拓磨さんは田辺課長にも制裁を与えた。
愛妻家の神崎社長から「田辺、奥さんを連れて帰りなさい。明日、今後の処遇について伝える」と言われた田辺課長は顔を青白させ、感情が爆発して怒り狂って叫んでる奥さんを連れて出て行った。

無事に俺の濡れ衣が晴れ、その後、ポリスターマンションに関するミーティングが執り行われた。

「桐嶋、内装デザインに関しては凛子に仕事を任せる。だから、凛子を福岡に呼べ」

吉川の代わりに凛子に内装設計を任せる事になり、凛子に電話をかけ、出張準備をしてすぐに福岡支店にくるよう伝えた。

19時までミーティングを行われた。
ミーティングが終わり、凛子を迎えに小倉駅へ向かう。
3週間滞在するからレオパレスを借りた。
凛子と離れ離れにならず一緒にいられることが嬉しくてならない。



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