執着溺愛男からの猛烈的な求愛〜私、結婚はしませんよ!!〜

鳴宮鶉子

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元彼に再会と隠し子がばれ

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「椎名ちゃん、瀬戸工の仕事受けてくれない?瀬戸工の担当が変わって、小泉のセンスの無さを苦言されコテンパに出社拒否を始めた。4人目だよ。椎名ちゃんの元勤め先だろ?頼む!!」

土下座する勢いで内装設計部インテリア課の中里課長が私の元にやってきた。

「……大手ゼネコンの瀬戸工、ブラックなんだな。あんな鬼畜設計士がいる会社に2年も勤めてたら、力つくわ。うちの製品、もう頭に入っただろ!!お願いだ、あの鬼畜とのヒアリングに行ってくれーー!!」

住宅機器メーカーLIVING&LIFEに入社して半年が経った。
トイレ、キッチンといった水回り機器はもちろん、窓、ドア、外構や照明機器など幅広い商品を扱ってるメーカーだから、全ての商品を頭に叩き込むのは無理だけど、商品データのタブレットの操作方法を覚え、なんとかクライアントの要望を聞き出し検索をして提案するまでになり、戸建て住居のメーカーとリフォーム設計会社の担当を任されるようになった。

「……大手ゼネコンの仕事を引き受けるにはまだ経験が浅いから無理です。他を当たって下さい」

「ベテラン2人が担当を外されたんだ。32歳で部長を勤めてるだけあって手強い!!独身らしいから、綺麗どころに担当させて大型契約を取りたい所だが、泣かされてメンタルやられて、もう、跡がない!!」

「中里課長が直接担当をなさったら良いのでは?」

「……無理だ。億ションのタワーマンションの内装設備の発注だから、女性目線で提案した方がいい」

よれたスーツを着た50前の狸の置物みたいな後頭部が寒そうなおっさんのセンスでは無理だと言い切ったうちの課の最高責任者。

「ーー中里課長!!瀬戸工の瀬戸部長が来られました。第1応接室に御通ししました!!」

「時間ピッタシに来た!!椎名ちゃん、頼む!!」

瀬戸部長という響きにビビり、無理だと首を横に振るも、代わりに受けもてるインテリアプランナーがいなくて、仕方なく、第1応接間に向かった。

瀬戸部長……瀬戸という名字の幹部社員は何人もいる。

「失礼します。お待たせ致しまして申し訳ございません」

タブレットを手に持ち、応接間に入り、目の前に座っている男性と目が合い、固まる。

「ーー椎名じゃん!!実家家業を手伝うって言ってたのに、LIVING&LIFEでインテリアプランナーしてたんだ!!」

瀬戸工時代の同期で同じチームだった大倉くんが私に話しかけてきた。

「瀬戸部長、椎名なら安心して任せられますね。担当が5回も変わったから他のメーカーに依頼かけようかと思ってたところだったよ」

入室した際、かなり機嫌が悪そうな表情を浮かべていた瀬戸部長。
無表情に呆然と目を見開き、私を見つめる。

まさかの元彼上司の昂輝がこんなにも早く私の前に仕事を関して現れるとは思わなかった。

「大倉くん。私、まだ中途採用で入って半年だから半人前だよ。期待しないで」

形だけの名刺交換をし、2週間もの間話が先に進まなかった横浜駅側に建築予定の45階建525戸の億ションタワーマンション建築のトイレ、バス、キッチン水回り機器と備え付けのインテリア照明の要望を聞き、タブレットで予算内でマンションの外装と壁紙と床材と間取りに合う商品のカタログを作り、印刷をして2人に渡した。

「さすがだ、椎名!!これだよこれ!!」

大倉くんがぺらぺらページを開き、唸る。昂輝が建築する高級感のある仕様のマンションならこれという商品をカタログに入れ込んだ。

「社に戻ってこれで検討しましょう。同じようなマンションをこれから全国に24棟建てる予定だからそれを見据えて発注かけるから。工事監査にいかないといけないから瀬戸部長、そろそろ行きましょう!!」

私と大倉くんが打ち合わせで話しているのを昂輝は黙って座って聞いてるだけだった。

2人をオフィスビルの外まで送り届け、ほっとする。
中里課長に要望を聞き出しカタログ作成まで終わった事を伝えたら、小躍り踊って喜んでた。

そのせいで、瀬戸工の担当を任される事になり、私は顔を引きつらせる。

部長が内装設計をする事はまず無いから、大倉くんとこれから打ち合わせをしていく事を願う。

「椎名ちゃん、瀬戸工さんきたよ」

狸の置物……でなくご機嫌でえびす顔した中里課長が私の席まできた。
全国25ヶ所に建築予定のブルジョワ仕様のタワーマンションのトイレ、バス、キッチン水回り機器と備え付けのインテリア照明をうちが全て任される事になり、金のなる木だと中里課長はウハウハしてる。

ブルジョワ仕様だからシステムキッチンは300万円クラス。
バスもジャグジーがついてるもので100万円以上する。
それを1万戸以上の発注を受ける事になるから、単純計算でうちの平均年間売上高の4分の1の金額になる。

大口発注だから値引きして見積もりをするため、今日の打ち合わせは中里課長も同席する。
大倉からのアポだったけど、大きなお金が動くから昂輝も同行するとかで、前の日からそわそわしてた。

『椎名、昼前の打ち合わせだから、ランチに行こうや!!』

江東区大島にオフィスビルがある。昂輝も一緒だと思うと断りたい。
だけど、上顧客様からのお誘いを無碍にはできず、もはや接待と割り切り、日本橋の料亭を予約した。
元同期と元上司とのプライベートのランチという位置つけに、中里課長の同席は断った。

中里課長は口が軽いし、空気を読まない。
私に息子がいる事をいうかもしれない。

お金がお金が動くから今回の打ち合わせでは昂輝が発言していて、中里課長は蛇に睨まれた蛙状態でかなり値引きさせられ利益率が3%にされてた。
5%はとるつもりだったから、後で専務取締役からお叱りを受けるはず。

「椎名、メシにいこう!!」

魂が抜けて無表情になり、本当に狸の置物化してしまうのではというぐらい憔悴した中里課長課長を応接室に置いて、事前に予約していた日本橋の料亭へ向かう。

ランチタイムは時間が限られてる。
だから、事前に2人が居酒屋で好んで食べてたメニューを参考に料理を注文しておいた。

「椎名、接待じゃないんだから、ここまでしなくて良かったのに!!」

「そういうわけにはいかないよ。ランチタイムだからお酒は飲めないのは残念だけど、料理を愉しもう!!」

江戸川寿司と穴子ご飯とだし巻き卵などが載った豪華な御膳。
経費で落としたいけど、利益率3%だと申請しにくい。
1万円のコースを3人前、自腹切るしかないとため息をつく。
こっそりデイトレードで月に45万円以上は稼いでる。
でも、実家のこじんまりとしたHealing Homeを中堅企業にしたい私のは、そのための資金を蓄えないといけない。
それに、大輝に最高レベルの教育を受けさせてあげたい。

滅多に口にしない豪勢な料理に舌鼓を打つ。
紬さんも、3年間勤めたら、LIVING&LIFEを退職して、Healing Homeで仕事をさせてくれるはず。

「椎名、末長く宜しくな!!水回り機器はLIVING&LIFEが1番いい。窓、ドア、外構もこれからはLIVING&LIFEにお願いしようかな」

大倉くんが上機嫌に厚みのある出汁の効いただし巻き卵を頬張りながら言った。

昂輝は無言で料理を口に運んでた。
利益率が悪いから発注数を増やされてもと思い、愛想笑いを浮かべた。

仕事中だから食事を終えるとすぐに解散した。
支払いは昂輝がしてくれた。
タクシー代も『経費で落とす』とタクシーチケットを出してくれて、かなり助かった。

「……えっ、システムキッチンとインテリア照明にオリジナリティーを!?利益率3%でですか?」

「……大口発注だからね。専務は納得されてる。高級感を出すために既存の物にアレンジを加えないとって、瀬戸工からも要望あるし引き受けた。で、椎名ちゃん、横浜のタワマン、外装はできあがってるから、中に入って、どんなカラーがいいかみてきて!!専務も帯行して下さるから!!」

杉宮将生専務ことマサくんはLIVING&LIFEの御曹司で次期社長候補。
ダンディーでカッコいい48歳だけど、なぜか独身。
なぜか紬さんを慕っていて、うちによく出入りしていて、私が小さい頃はお世話係をしてくれた。

「遥ちゃん、今日は直帰ね。帰りに紬さんと大輝くんと待ち合わせして、オリエンタルスターホテル銀座で中華を食べて帰ろう」

多忙な専務だから、夕方に視察する事になり、気遣いで家族団欒ディナーを企画してくれた。
紬さんは大輝の世話があるから仕事をセーブしていて、いきなりのマサくんの提案にのってくれて、わざわざ横浜まで出てきてくれると承諾してくれた。

「1日くらい残業しなくても大丈夫だよ。遥ちゃんに小さな子供がいるの知ってるのに、中里が許容範囲以上の仕事押し付けてくるの?」

「……大丈夫です。お気遣いありがとうございます。大輝が喜びます」

私に対しては極上に甘いけど冷酷非道といわれてるマサくんに、狸でなく中里課長の仕事しなさ過ぎを伝えたら、僻地送りか首斬りが残虐な制裁を与えそうで、首を横に振り、週なかの水曜日のディナーに了承した。

水・金曜日は規則ではNO残業デー。
横浜駅徒歩5分の所に半分だけ建ったタワマンがあり、マサくんと一緒に中に入る。

「低層階は2LDKか。でも、リビングダイニングは広いな」

億ションタワマンは億いかない低層階でも金持ちしか住まない。
マンションの階の違いでランク付けされて社長夫人や政治家夫人がマウンティングするタワマンに、一般階級の住民は恐れて住まない。

だから、キッチンに関して同じ物を入れる事にしてる。

「遥ちゃん、キッチンなんだけど、料理しないマダムもいるし、場所とるから統一するより、選べるようにした方がいいと思うな」

紬さんが全く料理しない人だから、我が家はキッチンが無駄なスペースになってた。

「……検討します。でも、リビングダイビングがこんなに広かったら、キッチンスペースが狭いとバランス的に悪い気がします」

「……だな」

ブルジョワ仕様マンションに戸惑う。
マサくんはLIVING&LIFEの御曹司だから慣れてる気はしたけど、今もうちに夜中にきて夜明け前に出て行ってるからこじんまりとした一軒家に慣れてしまってる。

10歳年上の子持ちの紬さんの事を溺愛してるマサくん。
2人の関係を知って、居心地が悪く、私は大学進学と共に昂輝が1人暮らししてるマンションに転がり込んだ。

私の父親がマサくんではないのはわかってる。
でも、LIVING&LIFEの幹部社員の誰かが私の父親だという事だけはわかってる。


「杉宮将生専務自らの視察、ありがとうございます」

まさかの昂輝登場。港区芝から車を飛ばせて駆けつけたらしい。

悠長に中を視察していた事を後悔する。

「瀬戸工コーポレーション、建築設計建築部部長の瀬戸昂輝です。いつもお世話になっております」

昂輝がマサくんに名刺を差し出す。
初対面だったのか、大輝と瓜二つな昂輝の顔立ちを見て、マサくんは固まってる。

「……こちらこそお世話になってます。クリスタルスタータワーマンションの内装機材を任せて下さりありがとうございます」

一応マサくんは専務だからか、立場的に上らしく、昂輝はペコペコしてた。
仕様変更など、狸でなく中里課長が頼りないからマサくんが契約に関して動いてるようで、昂輝は丸め込まれてるようだった。

「キッチンは3種類とカラーも3種類選べるようにする。後、バスもカラーを変えよう」

マサくんが面倒臭い提案をするのを何も言わずに聞いてた。
製造現場泣かせだと思ってしまうけど、住む住民の事を考えると選択肢を広げ、納得がいく住処を創りあげないといけない。

「瀬戸部長。この後、予定がなければ、ディナーに行きませんか?クリスタルスターホテルの“我爱你”を予約してる。遥と遥の息子の大輝も食が細く大半残してしまう。店に悪いから来てくれたらありがたい」

マサくんのせいで、私に2歳になる息子がいる事を昂輝に知られてしまった。


しかもiPhoneを取り出し、いつ撮ったかわからない大輝の写真を昂輝に見せた。

輪郭や意志の強い目元は昂輝そっくり。
遺伝子検査しなくても誰がみても昂輝が父親だとわかるぐらい瓜二つ。

「……ありがとうございます。ご相伴にあずかります」

オリエンタルスターホテルの最上階で大輝に対面し、昂輝は固まってた。
クローンみたいに自分にそっくりな大輝と会い、遺伝子検査をしなくても息子だとわかるからか、大輝によって皿に山盛りに盛り付けられたレバーとピーマンを昂輝は嬉しそうに完食してた。
マサくんに1つは食べるよう言われても、昂輝に甘えてお残ししまくり、デザートのマンゴープリンは昂輝の分も食べてた。

遺伝子的に惹かれるものがあるのか、大輝はすぐに昂輝に懐き、昂輝の膝の上に座り、好物だけ食べてた。

紬さんはこっそりそっくりな2人の2ショット写真を撮り、大輝が野菜を食べない事に対して怒ってるマサくんを放置してた。

「……大輝、はしゃぎ過ぎて寝ちゃった。朝まで起きないわ」

大輝の口の周りと手を紬さんが拭く。
まだ上手に食べれなくてエビチリのソースが口についてた。
そのまま昂輝の膝の上で寄りかかるよう寝てしまい、昂輝の白いカッターシャツが汚れてしまった。

「瀬戸部長、すみません。カッターシャツを汚して」

立ち上がり昂輝に寄り掛かって眠る大輝を抱きあげようとするも、昂輝が渡してくれなかった。

「……大輝、起きて。新幹線に乗って帰るよ!!」

紬さんとマサくんは久しぶりのデートで、この後、BARに移動し、今夜はホテルに泊まると思う。
だから、2人の邪魔にならないよう、食事が終わったら、大輝と早々に新幹線で東京駅まで行きタクシーで江東区大島の自宅まで帰るつもりでいた。

「……遥、車で送っていく。新幹線の方が速いが抱っこして連れて帰るの大変だろ」

「大丈夫。大輝、12kgしかないから、抱っこして連れて帰れる。それに……チャイルドシートついてないと警察に捕まるよ」

昂輝に送っていくと言われ困る。
2人きりになると大輝の事を色々聞かれそうだから受け答えに困るからなんとしても断りたかった。

「……じゃあ、車は明日取りにくる。家まで送っていく」

断りたいのに、昂輝が大輝を抱っこしたまま立ち上がり、マサくんと紬さんに挨拶をして店から出ていくから着いていくしかない。

『瀬戸部長、遥ちゃんと大輝くんの事、頼むね』

昂輝の事を信頼おける人間だと思ったのか、マサくんは娘と孫のような私と大輝の事を任せた。
私と昂輝が大学の先輩後輩の関係で元上司で部下な事をマサくんは知ってる。
大輝が昂輝の息子だという事に気づいていて、最初から私と昂輝をくっつけようとしてるのかもしれない。

眠ってる大輝を起こさないよう、昂輝は無言で新横浜駅まで歩き、新幹線に乗り込む。
2人がけの席に隣り合わせで座ると、昂輝が大輝を愛しそうに見つめながら小声で話し出した。

「……遥、大輝って俺の子だよな?どっからどう見ても俺にそっくりだ」

否定したくてもできない。だけど、肯定したくなくて、何も言わずにいた。

昂輝が私の方を見る。

「……遥は酷いな。俺との間にできた子供を1人で育ててたなんて。俺も一緒に大輝を育てたかった」

昂輝は私との間に意図的に子供を作り、私を繋ぎとめようとしてた。

「遥が会社を辞め全てを捨てて俺の前から居なくなったから、それほど俺の事が嫌になったんだと思って、諦めようとした。側にいてやる事もできない、繋ぎ止める事ができない。だけど、俺はどうやっても遥の事を忘れる事ができなかった。がむしゃらに仕事をして遥の事を考えないようにしても忘れられなかった。息子がいるとわかった今、遥の事を諦める事はできない。遥、ずっと側にいるから、俺と結婚して」

真剣な眼差しで言われるも、応じる事ができない。

「……結婚はできない。大輝は昂輝の子だけど、私の子として育てたい。だから、そっとしておいて欲しい」

「……なんでだよ。俺が瀬戸工の次期社長だから結婚できないって思ってるのか?立場は関係ないって昔も言ったよな。32歳になっても結婚しないというかできない。遥以外の女を愛する事がらできないから。俺は一生独身で跡取りも残せない」

責め立てるように言われひるむも、昂輝の身内が私なんかを認めるわけないから、それ以降、私は何も言わずにいた。

新幹線が東京駅に停まる。
下車して八重洲中央口タクシー乗り場に行くも、昂輝が大輝を抱っこしたまま離そうとしないからタクシーに乗れない。

「昂輝、ここまででいいよ。大輝を渡してくれないかな?」

「嫌だ。明日は仕事休みだろ?俺の方は調整する。ウチにきて。これからの事を話し合おう」

腕を掴まれ無理矢理タクシーに乗せられてしまった。
そして、昂輝は運転手さんに芝にあるタワーマンションまで走るよう指示した。





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