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respected person
しおりを挟む「無症状や軽症であっても、胸部CT検査では約半数に異常陰影が認められ、その約3分の2は症状が変化することなく回復したが、残る約3分の1は悪化した。CT検査で肺に新型コロアの患者に類似する陰影があっても、PCR検査では陰性となるケースもある。無症状や軽症だからと軽視できない。何より陰性になったからと直ぐに退院させる事でウイルスを撒き散らす事になりかねない」
重症患者は感染症指定医療機関で人工呼吸管理または集中治療室に入院してる治療を受けている。
幸田医科大学医療センターで受け入れている患者さんは軽症もしくは無症状と濃厚接触者。
重症患者の受け入れをしてなかったのもあり、陰性化に時間はかからなかった。
ウイルスが陰性化するまでに要する期間が主要評価項目で第2相臨床試験を行った。
具体的には、投与開始からウイルス量をモニタリングし、RT-PCR検査でウイルスの陰性化が確認されるまでに要する日数を、オルビガンを投与した人と標準治療のみの日で比較する。
オルビガンを投与したグループ150人と、標準治療のみのグループ100人と比べ、ウイルスが消失した期間がオリビガン投与グループが7日間、標準治療のみのグループが15日だった。
胸部画像による改善率では、オルビガン群投与グループが95.4%で、標準治療のみのグループが64.2%と、オルビガンが効果がある事が一目瞭然だった。
陰性化した後も再発が起きないかの確認で2週間経過観察を行い、その間に抗体検査をし、完治した患者さんから高度免疫グロブリン製剤の開発とワクチン開発をするために血漿の採取させて貰った。
新型コロアウイルスに感染すると、8割の人は風邪症状がダラダラと続きますが自然に良くなり、2割の人が肺炎症状が重症化して入院が必要となり、そして約5%の人が集中治療を必要とするほど重症になる。
しかし、全ての人がこの確率で重症化するわけではなく、特定の重症化リスク因子を持つ人は、持たない人に比べて重症化しやすいことが分かっている。
幸田医科大学医療センターで受け入れた患者さんが全員陰性化し、経過観察期間を経て3月15日に退院していった。
医療に携わったスタッフ全員、2次感染する事なく、無事受け入れ治療を終えた。
医師でもなく看護師でもない、創薬研究員として治験の立ち合いをしていたから、患者さんの経過データをとるために検査に携わってた。
海外青年協力隊時代に1年半一緒に派遣された仲ではある。
治験責任医師が柴田先生だから常に隣にいた。
患者さんが陰性化して院内の緊張が治まり、患者さんや医療スタッフから、私と柴田先生が恋人同士なのではという噂が流れ、困った。
36歳の柴田先生と34歳の私。
全くそういう関係ではない。
日本に帰国後、京都大学の救命救急センターに勤務し、救急医療に携わりながら35歳で助教授になった柴田先生。
柴田先生が学会等で東京に出てこられた時に、夕ご飯を食べに連れていって貰ってたけど、彼とは友人として接してる。
私と柴田先生の仲を完全に誤解し、不機嫌極まりないオーラを放ってた。
一徹とは元の関係には戻れない。
私が一方的に別れを告げ、彼の前から去るために海外青年協力隊になりアフリカに経った事を、まだ怒ってるようだった。
8年前に姿を眩ませ、離れ離れになってたから、もう関係は終わってる。
私はそう、思ってた。
「藤宮さん、お帰りなさい!!」
1ヶ月半ぶりのオリパス製薬研究センター。
幸田医科大学医療センターでコロア患者と濃厚接触をしていたため、2週間自宅待機でリモートワークでオルビガンの第2相臨床試験の結果レポートを作成していた。
「コロアに感染しなくてよかったな!!」
幸田医科大学医療センターに入院していた患者さんは軽症患者と無症状患者で、医療行為は健康観察ぐらいで看護の必要がなく、隔離病棟で自立生活を送る事ができたから、最低限の接触のみで済んだから、感染は間逃れた。
「オルビガンの有効性は認められたな。安全性も高いから、PCR陰性でも発症が疑われる患者に早期に投与し、ウイルスをばら撒くのを食い止めたいな」
無感染で入院していた患者50人が院内でのPCR検査で陽性がでた。
その患者に対し、すぐにオルビガンを投与を始めたところ、最短で3日間で体内からウイルスが無くなった。
オルビガンは、インフルエンザやコロアなどのRNAウイルスのRNAポリメラーゼという酵素を阻害する効果がある。
体内に入ったウイルスの増殖を食い止め消滅させる事から、早期に投与する事が大事で、重症化した患者には効果がない。
コロアウイルスは体内に入ってからの増殖が早く、発症してしまうと持病がある人だと手遅れだったりする。
「エメラルドプリンス号のコロア患者者の8割が無症状もしくは軽症だった事から、感染してても気付かない人が多い事は目に見てわかる。大流行してる地域の住民に対して、オルビガンを配って飲ませて、感染拡大を食い止めたいな!!」
「田坂センター長、それは辞めた方がいいです。動物実験で胎児の死亡や奇形の子どもが生まれてるから」
動物実験で初期胚の致死及び催奇形性がでてるが、それは投与による薬害なとこがある。
「藤宮、男性の治験者から精子もっと集められなかったか?」
「……無理ですよ。柴田先生が交渉して下さったからなんとか24人から提供して貰えました」
24人の精子の運動量は誤差の範囲で問題がなかった。
だが調査人数が少なく、人に対して問題ないと言い切る事ができない。
「第3相臨床試験の対象者は、精子を提供してくれる人を優先しよう」
幸田医科大学医療センターの患者に関しては、退院後に再発はなかった。
だけど、他の病院で治療を受けていた患者が5人退院後に再発した。
そして2週間の検疫の後にPCR検査を受け陰性だからと自宅に戻った乗客のうち15人が感染していた。
20人の乗客がクラスターとなり、生活園で感染が拡大しているようだった。
「中国人観光客が春節で日本に大勢きてたから、その時にコロアウイルスを日本に持ち込まれたのもある。エメラルドプリンス号の検疫と乗客の治療に携わった日本DMAT、よくやった!!」
総括DMATとしてPCR陽性者の治療と搬送のサポートをされた柴田先生の判断は流石だった。
国籍なき医師団としても活動をされていて、京都大学で救急医療学助教授をされてる。
海外青年協力隊として一緒にエポックウイルス感染者の治療に携わった柴田先生。
感染病救急治療の専門医師として、活躍されてる。
それと引き換え私は、医師を辞めて薬学部に入り創薬研究員になり、まだ何も成果を上げてない。
第3相臨床試験が始まったら多くの感染者の方に治験に協力して頂き、治療をし感染拡大を食い止めたい。
そして、早期にオルビガンを医療用医薬品として承認させる。
「田坂センター長、オルビガンの生産はどんな感じですか?」
「pandemic状態だからな、余ったら海外に輸出したらいいから、フル稼働で生産してる。だから、感染が疑われる患者に投与しても問題ない!!」
インフルエンザ治療薬として医療用医薬品と承認されているから、コロアが中国で流行し始めた時点で田坂センター長が上に掛け合い、全ての生産工場で急ピッチで生産を始めてた。
材料も海外から掻き集めるようにすぐに輸入し、日本でも材料の生産を始めてる。
「第2相臨床試験の治験薬として第1種第2感染症指定医療機構に送りつけた」
早期に投与を開始し、体内でウイルスを増殖させない。
だけど、PCR検査薬の生産が間に合ってなく、検査機関も限られていて、重症化してから病院に担ぎ込まれる事があり、手遅れ状態らしく、コロアで多くの命が亡くなってる。
うちもPCR検査薬の生産量を増産させた。他の医薬品メーカーもPCR検査薬を急ピッチで生産している。
でも、コロアは感染力が強いのもあり、爆発的に感染者が増えているのもあり、生産が間に合ってない。
感染症の8割が無症状もしくは軽症。だから発症者が1人でもいたら周りも黒だと思った方がいい。
無症状のコロア患者が疾患に気づかずに菌をばら撒き、大流行させてる。
すぐに検査ができ大量生産ができる抗体検査キットも現在開発中で、エメラルドプリンス号の感染者に使い有効性が認められた事から体外診断用医薬品としての承認を取得し、病院の外来や空港検疫などで活用されるようになった。
体外診断用医薬品だからすぐに承認され、これで感染者の封じ込めができれば、感染を止められるかもしれない。
「藤宮、今から出れる?」
背後から声が聞こえ、振り向くと柴田先生がいた。
「藤宮くん、今日から柴田先生と関東圏の第1種と第2種の感染症指定医療機構に行ってきてくれ。なるべくはリモート対応で感染しないよう気をつけて第3相臨床試験の治験を進めてくれ!!」
医療用医薬品の承認を早期に得るためだけでなく、治験としてコロア患者に飲ませ早期に回復させようとしてる。
ミーティング室に籠り、柴田先生と院内感染が起きたりしている医療崩壊仕掛けてる医療機関に電話をかけ、時に病院に駆けつけた。
応援ありがとうございます!
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