俺が信長で、幼馴染が吉乃と濃姫!? ~転生幼馴染トリオ、本能寺フラグ回避して戦国スローライフ目指します

月影 流詩亜

文字の大きさ
14 / 57
第三章:うつけの仮面の下で

第13話 月影の姫は静かに策を練る

しおりを挟む

【視点は海(帰蝶)です。】


 わたくし……帰蝶きちょうこと、元・藍井海がこの那古野城に嫁いでから、季節は少しずつ移ろい始めていた。
 表向きは、美濃から来た物静かな正室として、日々を穏やかに過ごしている。
 侍女たちに囲まれ、茶を|嗜《たしなみ、書を読む。

 夫である信長様(大ちゃん大地)が「うつけ」と呼ばれる行動を繰り返しても、眉一つ動かさないポーカーフェイスは、もはや得意技と言ってもいいかもしれない。

 けれど、水面下では休む暇などなかった。大ちゃん、そして空との再会と、あの夜に結んだ秘密の同盟。
 わたくしたちが生き残るためには、感傷に浸っている時間はないのだ。
 わたくしの主な役割は、情報収集とその分析、そして大ちゃんへの助言。
 特に、実家である美濃・斎藤家の動向は注視しなければならない。 信頼できる侍女の楓を通じ、密かに美濃と連絡を取り、情報を集めていた。

『……父上(道三)と兄上(義龍)との溝、深まるばかりなり』

『義龍様、父上を排斥せんとする動きありとの噂……』

 届く書状の内容は、まかんばしくないものばかりだった。
 父・道三と兄・義龍の対立。
 史実を知らないわたくしでも、これが危険な状況であることは理解できた。

 わたくしを信長様に嫁がせた父の真意は? 

 そして、斎藤家の未来は……? 

 胸が締め付けられる思いがするが、今は感情に流されるわけにはいかない。
 定期的に行われる大地、空との密会。そこで共有される情報は、わたくしの分析に不可欠なものだった。

「ねえ海! 奥でね、〇〇って家臣が最近お金に困ってるって噂だよ!」
空が持ち前の情報網で得た、一見他愛ない噂話。

「大地が集めた城下の商人たちの動きと、美濃からの情報にある、兄上派の家臣の動き……それらを合わせると、その〇〇という家臣が、兄上側と内通している可能性も考えられますね」

 わたくしは、集まった断片的な情報をパズルのように組み合わせ、全体像を読み解こうと試みる。
 空の集める情報の「速さ」と「広さ」、わたくしの分析力。それぞれの長所を活かすことで、単独では見えてこなかったであろう危険の芽や、利用できるかもしれない状況が見えてくる。

「その件、もう少し楓に詳しく調べさせてみます。大ちゃんも、その家臣の動きには注意してください」

「ああ、分かった。助かるよ、海」
大地は、わたくしの助言を素直に聞き入れるようになっていた。

 最初は半信半疑だったようだけれど、いくつかの分析が実際に状況と合致するにつれ、わたくしを参謀役として頼るようになってきている。
 ただ、頼りになる参謀役であると同時に、彼の「正室」として、言わなければならないこともある。

「……大ちゃん。いえ、殿」
二人きりで茶を飲んでいた時、わたくしは切り出した。

「その言葉遣い、家臣たちの前ではお控えになった方がよろしいかと存じます。『マジか』『ヤバい』……そのような現代の言葉は、いつか貴方の足元を掬いかねません」

「げっ……聞いてたのかよ」
大地は気まずそうに視線を逸らす。

「うつけを演じるのは結構。 ですが、最低限の礼儀作法と、上に立つ者としての威厳は必要です。
 いざという時に、誰も貴方についてこなくなりますよ」

「……うっせーな、分かってるよ」
 彼は面倒くさそうに言いながらも、わたくしの指摘が的を射ていることは理解しているようだった。

 彼の人の良さや型破りな発想は魅力だけれど、この戦国時代で生き抜くためには、それだけでは足りない。
 時には非情な決断も、計算された立ち居振る舞いも必要なのだ。
 わたくしがそれを教えるのも、正室としての役目だろう。
 そんな日々の中、時折不思議な感覚に襲われることがあった。
 例えば、空が何か新しい情報を掴んで興奮している時、遠く離れた部屋にいるわたくしの胸が、ふと高鳴るような気がしたり。
 あるいは、大地が何か大きな決断を迫られて苦悩している時、言いようのない不安がわたくしの心をよぎったり。

(……これが、双子のシンクロ、というものなのかしら)

 現代にいた頃は、あまり意識したことはなかったけれど。この極限状況が、わたくしたちの間に眠っていた特別な繋がりを目覚めさせているのかもしれない。
 まだ曖昧で、確証はないけれど、この感覚は、いつかきっと、わたくしたちを助ける力になる……そんな予感がした。

 わたくしは、静かに、しかし着実に、自分の役割を果たし始めている。
 美濃の動向を探り、情報を分析し、大地を支え、空と連携する。

 来るべき動乱の日に備えて、月影の姫は、ただ静かに、深く、策を練り続けるのだ。

 わたくしたち三人が、共に未来を掴む、その日まで。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

戦国鍛冶屋のスローライフ!?

山田村
ファンタジー
延徳元年――織田信長が生まれる45年前。 神様の手違いで、俺は鹿島の佐田村、鍛冶屋の矢五郎の次男として転生した。 生まれた時から、鍛冶の神・天目一箇神の手を授かっていたらしい。 直道、6歳。 近くの道場で、剣友となる朝孝(後の塚原卜伝)と出会う。 その後、小田原へ。 北条家をはじめ、いろんな人と知り合い、 たくさんのものを作った。 仕事? したくない。 でも、趣味と食欲のためなら、 人生、悪くない。

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

処理中です...