俺が信長で、幼馴染が吉乃と濃姫!? ~転生幼馴染トリオ、本能寺フラグ回避して戦国スローライフ目指します

月影 流詩亜

文字の大きさ
18 / 57
第四章: 内なる敵、外からの脅威

第16話 揺れる尾張、それぞれの戦い

しおりを挟む

【視点は大地(信長)です。】


 親父、織田信秀の病状が悪化の一途を辿るにつれ、那古野城内の空気は目に見えて険悪になっていった。
 俺、織田信長に対する家臣たちの視線は、以前にも増して冷ややかで、侮りが含まれているのを感じる。

 特に林秀貞や柴田勝家といった宿老たちは、俺が廊下を通るだけで、わざとらしく顔を背けたり聞こえよがしに弟・信行の「聡明さ」を褒め称えたりする始末だ。

(完全に舐められてるな、こりゃ……)

 うつけの仮面は、こういう時には厄介だ。
 彼らは、俺を織田家を背負って立つ器では無いと本気で思っているのだろう。
 そして、その代わりとして品行方正な弟・信行を担ぎ上げようとしている。

 このままでは、史実通り血を見る争いは避けられない。 

 何とかしなければ……。

 そう思いつつも、具体的な行動を起こせずにいた俺は、意を決して弟の信行と直接顔を合わせることにした。
 話し合えば、あるいは……そんな淡い期待も、正直ゼロではなかった。

 城の一室で向き合った信行は、噂通り礼儀正しく穏やかな青年だった。

 歳は俺より二つ下。
 涼やかな顔立ちは母上によく似ていて、物腰も柔らかい。

「兄上、わざわざお呼び立ていただき、恐縮に存じます」

 深々とお辞儀をする信行に、俺はどう切り出したものか迷った。

「……いや、まあ、なんだ。 最近、お前の周りが騒がしいと聞いてな」

 探るような俺の言葉に、信行は少し困ったように微笑んだ。

「はは……母上様や、林様たちが何かと気にかけてくださる故、ご心配をおかけしているのかもしれませぬ。
 それがしは、ただ兄上のご快復うつけが治ること?と、父上のご回復を祈るばかりにございますが」

 その言葉に嘘はないのかもしれない。
 だが、彼の瞳の奥には野心の色とも、あるいは周囲の期待に流されているだけのような戸惑いの色とも取れる複雑な光が揺らめいていた。

 結局、俺は弟の本心を探り当てることはできず、当たり障りのない会話だけで、その場は終わってしまった。
 同腹の兄弟なのに離れて生活していたせいか、その微妙な距離感が俺たちの間には確かに存在していた。

 一方、空と海も、それぞれのやり方でこの状況を打開しようと動いてくれていた。

 空(吉乃きつの)は宣言通り、母上 土田御前に接触を試みたらしい。
 だが、結果は芳しくなかった。

「全然ダメだった……。『側室風情が差し出がましい!』って追い返されちゃって……」

 密会の場で、空は悔しそうに唇を噛んでいた。
 側室という立場の低さ、そして何より母上の俺に対する根深い嫌悪感が、空の真っ直ぐな想いを阻んでいるようだった。

 それでも諦めきれない空は、奥の侍女たちを通じて、どうにか母上の気持ちを変えられないかと画策しているらしいが、前途は多難に見えた。

 彼女の焦りが、俺にも痛いほど伝わってきた。

 対照的に海(帰蝶きちょう)は冷静だった。
 彼女は感情で動くのではなく、緻密な計算に基づいて、水面下で布石を打ち始めていた。

「林秀貞と柴田勝家の間には、以前から微妙な対立関係があるようです。
 そこに、信行様への期待度の違いという情報を流し、彼らの結束に揺さぶりをかけています」

 海は淡々と報告する。

「また、信行派の中でも日和見的な家臣もおります。
 彼らに、楓を通じて『殿(信長)はうつけにあらず、深慮遠謀あり』といった噂を流し、疑念を植え付けています。
 同時に、まだどちらにも与していない中立派の家臣には、ささやかな便宜を図るなどして、恩を売っています」

 まさに、月影の策士私(作者)じゃ無いよだ。
 直接的な対決を避けながら情報操作や切り崩しによって、信行派の足元を静かに、しかし確実に揺るがそうとしている。

 空の情と、海の理。

 二人のやり方は違えど、俺を、そして織田家を守ろうとしてくれている気持ちは同じだ。
 そのことが苦悩する俺にとって、どれほどの支えになっているか分からない。

 だが、最終的に決断を下すのは、俺自身だ。

 弟を殺すのか? 

 それとも、別の道を探すのか?

 史実の結末(信行粛清)が、何度も頭をよぎる。

 それが、最も確実で、手っ取り早い方法なのかもしれない。

 だが、俺はその道を選びたくなかった。

 殺さずに、この家督争いを終わらせる方法……海が言っていた、『権力を奪い、監視下に置く』という方法を軸に、俺は考えを巡らせていた。

 具体的にどうすれば、遺恨を最小限に抑えつつ、信行を無力化できるのか……

 そんな俺の葛藤を嘲笑うかのように、親父の容態が急変したという知らせが飛び込んできた。
 もう、時間がない。
 信行派の家臣たちも、いよいよ本格的に俺の廃嫡に向けて動き出すだろう。

 内なる敵との対決は、もう目前に迫っている。

 俺は、うつけの仮面の下で固く拳を握りしめた。

 空の想いも、海の知恵も、全て力に変えて、この戦国の世で、俺だけの「正解」を見つけ出してやる。

 当主として、兄として、転生者として……

 俺の覚悟が今、試されようとしていた。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

戦国鍛冶屋のスローライフ!?

山田村
ファンタジー
延徳元年――織田信長が生まれる45年前。 神様の手違いで、俺は鹿島の佐田村、鍛冶屋の矢五郎の次男として転生した。 生まれた時から、鍛冶の神・天目一箇神の手を授かっていたらしい。 直道、6歳。 近くの道場で、剣友となる朝孝(後の塚原卜伝)と出会う。 その後、小田原へ。 北条家をはじめ、いろんな人と知り合い、 たくさんのものを作った。 仕事? したくない。 でも、趣味と食欲のためなら、 人生、悪くない。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜

美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊  ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め… ※カクヨム様にも投稿しています ※イラストはAIイラストを使用しています

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

処理中です...