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サロンにて 3
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「あら?私、何かおかしな事を言ったかしら?」
旦那様のお顔から、血の気が引いてますわ。
「フェリシア……その………本気だろうか?」
そんな青い顔して、聞いて来るなんて……フフッ、おかしな旦那様。
「本気ですわ。………今までエリーゼがジークフリート殿下と一緒に居るとき、どんな顔をしていたか覚えてらっしゃるかしら?」
「それ……は…………覚えている………」
歯切れが悪くてよ、でも私だって聞かれれば歯切れが悪くなったでしょうね。
それ位、エリーゼはあの王子に対して何か……そう、好意の欠片も無かった気がする。
感情をあらわにする事も無く、淡々と付き合っていた。
表面上は。
でも、アニスからの報告では毛嫌いしてるのではないか?と思うような言葉が度々洩れていた……と聞いている。
だがルーク殿下は違う。
私が望んでいるのは、エリーゼの幸せであり輝かしい笑顔ですのよ。
ふ……と、ルーク殿下と目が合う。
ニッコリと微笑み、ルーク殿下をヒタと見据えた。
「ルーク殿下は、お嫌でしたか?」
殿下は緊張した面持ちではあったが、嫌そうなお顔では無かった。
「嫌ではありません。ですが、私で良いのか?と思う気持ちはあります。………ですが、私には特別な感情を向ける相手も今までいませんでした。あんな風に楽しい一時を過ごせる方はエリーゼ嬢が初めてです。私は……私は、夫人のお話をお受けしたいと思ってます。」
「では、決まりね。仮初めでも何でも、お相手が帝国の皇子様ならば王国の貴族は手出し出来ませんわ。………ホホホ………そうね、身の程知らずはシュバルツバルトのみでは無くゴルゴダ帝国とも事を構える覚悟だと受け取られても仕方ないでしょうしね。」
そう、この申し出が孕むモノは決して甘い物ではない。
帝国はシュバルツバルトとの更に強い繋がりが、シュバルツバルトは帝国に与する可能性が高い事を……
王国は既に、帝国に対する強いカードを失った。
この申し出が更に王国を追い詰めるだろうが、構う事は無い。
グレースは確かに可愛いが、私は私の愛する家族こそが一番大切なのだ。
家族が愛するシュバルツバルトの領地も、私達を慕い仕える者達も大切なもの。
私はその全ての為ならば、王国を追い詰める事も厭わぬ。
「では、決まりで良いでしょう。」
さぁ、愛する旦那様……頷いて下さいませ。
僅かに瞠目した後、ルーク殿下を見つめた。
「ルーク殿下、我が愛する娘を頼みます。」
「ありがとうございます。エリーゼ嬢のお心に添える様、努力致します。」
立ち上がり、深々と頭を下げたルーク殿下に息子達は口々に宜しくと声を掛けていた。
「エリーゼを宜しくね。」
「……簡単にエリーゼを輿入れさせると思うなよ……」
旦那様は、泣きそうな顔で呟きましたが余計な事言わないで欲しいわ。
「さて、私は失礼しますわ。」
私は一礼し、サロンの隅で佇んでいたエミリを連れサロンから出た。
後は殿方ばかりで話し合いしたら良いわ。
だって旅の間は、殿方は討伐しながらになるでしょう?
………こんなに領地に帰る旅が心待ちになるなんて…………ね…………
旦那様のお顔から、血の気が引いてますわ。
「フェリシア……その………本気だろうか?」
そんな青い顔して、聞いて来るなんて……フフッ、おかしな旦那様。
「本気ですわ。………今までエリーゼがジークフリート殿下と一緒に居るとき、どんな顔をしていたか覚えてらっしゃるかしら?」
「それ……は…………覚えている………」
歯切れが悪くてよ、でも私だって聞かれれば歯切れが悪くなったでしょうね。
それ位、エリーゼはあの王子に対して何か……そう、好意の欠片も無かった気がする。
感情をあらわにする事も無く、淡々と付き合っていた。
表面上は。
でも、アニスからの報告では毛嫌いしてるのではないか?と思うような言葉が度々洩れていた……と聞いている。
だがルーク殿下は違う。
私が望んでいるのは、エリーゼの幸せであり輝かしい笑顔ですのよ。
ふ……と、ルーク殿下と目が合う。
ニッコリと微笑み、ルーク殿下をヒタと見据えた。
「ルーク殿下は、お嫌でしたか?」
殿下は緊張した面持ちではあったが、嫌そうなお顔では無かった。
「嫌ではありません。ですが、私で良いのか?と思う気持ちはあります。………ですが、私には特別な感情を向ける相手も今までいませんでした。あんな風に楽しい一時を過ごせる方はエリーゼ嬢が初めてです。私は……私は、夫人のお話をお受けしたいと思ってます。」
「では、決まりね。仮初めでも何でも、お相手が帝国の皇子様ならば王国の貴族は手出し出来ませんわ。………ホホホ………そうね、身の程知らずはシュバルツバルトのみでは無くゴルゴダ帝国とも事を構える覚悟だと受け取られても仕方ないでしょうしね。」
そう、この申し出が孕むモノは決して甘い物ではない。
帝国はシュバルツバルトとの更に強い繋がりが、シュバルツバルトは帝国に与する可能性が高い事を……
王国は既に、帝国に対する強いカードを失った。
この申し出が更に王国を追い詰めるだろうが、構う事は無い。
グレースは確かに可愛いが、私は私の愛する家族こそが一番大切なのだ。
家族が愛するシュバルツバルトの領地も、私達を慕い仕える者達も大切なもの。
私はその全ての為ならば、王国を追い詰める事も厭わぬ。
「では、決まりで良いでしょう。」
さぁ、愛する旦那様……頷いて下さいませ。
僅かに瞠目した後、ルーク殿下を見つめた。
「ルーク殿下、我が愛する娘を頼みます。」
「ありがとうございます。エリーゼ嬢のお心に添える様、努力致します。」
立ち上がり、深々と頭を下げたルーク殿下に息子達は口々に宜しくと声を掛けていた。
「エリーゼを宜しくね。」
「……簡単にエリーゼを輿入れさせると思うなよ……」
旦那様は、泣きそうな顔で呟きましたが余計な事言わないで欲しいわ。
「さて、私は失礼しますわ。」
私は一礼し、サロンの隅で佇んでいたエミリを連れサロンから出た。
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