婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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(*⌒▽⌒*)

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豪華なオーガスタ王宮の1室
薄暗い部屋には、大きく豪奢な天蓋付きベッド。
揺らめく影は二つ…………

「どうか………どうか、私の事はジークフリートと呼んで下さい………」

緩い金色の巻き毛のジークフリート王子の明るいエメラルドグリーンの瞳は、ワインで酔いしれたのか潤んでいた。
介抱する男の波打つ赤金の髪は一つに纏められ、僅かに濃いエメラルドグリーンの瞳は室内の灯りを受け煌めいて見えた。

「では、私の事はルーク……と。」

男らしい少し低い甘い声に、ジークフリート王子は頬を染め上げた。

「ルーク……様。もっと早くお会いしたかった………そうすれば、私は婚姻なぞしなかったのに……」

ジークフリート王子は介抱するルークの手を握りしめ、体を寄せていく………

「そうか?ジークフリートが婚姻していればこそ、この逢瀬は成立するのだと思っていたのだが?」

人の悪い笑顔で、殊更甘くジークフリートの耳元で囁いた。

「あぁっ………ルーク様っ!夜は短く儚い………私を……翻弄して下さい……」

ジークフリートは王子であった為に、堪える事は出来なかった。
与えられる甘い快楽が欲しくて、ルークに全てをさらけ出し波に揺れる小舟のように翻弄されたがった。
そのジークフリート王子を酔っているのを良い事に、身につけていた衣服を全て剥ぎ取りあられもない姿にさせていた男はニンマリと笑った。

「勿論だよ、ジークフリート……朝まで、うんと私のモノで翻弄してあげよう。………儚くなってしまうまでね。」

「アァッ…………ルーク様…………」

二つの影が重なり………


「様…………ナ様………………ラーラルーナ様!朝ですよ!!」

「良いところでぇっ!!………………くっ……………」

くそ…………久方ぶりのルーク皇子×ジークフリート王子の薄い本展開の良い夢だったのに…………

「今日の当番って聞いて、本当嫌だったんですからね!健康の為に早朝散歩するとか!お一人で行ってきて下さいよ!もぅ!」

うちの侍女達は私に厳しい。
ただし、私と侍女達だけの限定だ。
家族の誰かが同席している場では、侍女達はプロに徹するのだ!スバラ!!
私は、もそもそとベッドから這い出て簡単なドレスを着せて貰う。
モコモコとしたショートブーツを履いて、明るくなってきた敷地内を歩く。
健康の為に!(言い訳ですが、何か?)
良い夢だったのになぁ………残念!
仕方ない、お口直しよろしく池にでも行くか……
あそこのボート小屋はいつも誰かがやってるからな!
朝もやの中、ボート小屋に続く小径は季節を楽しめるようにと趣向を凝らした林道だ。
赤や黄色に染まる木々があちこちに植えられ、ちょっとロマンチックだ。
………………?誰か前から来る?……………

姿を表したのは、見たこともない若い男だった。

「見たことの無い顔ね?この先にある、ボート小屋には不用意に近付かないようにね。」

若い男は青い顔、涙目でフラフラとしながらも私に近寄ってきた。

「失礼ですが、若い女性が一人で行く所ではありません。」

あら?心配してくれるのね、優しい良い子ね。

「フフッ……私にどうこうするような殿方は居りませんよ。ですから心配ご無用ですわ。それに……私の事を皆知ってますから。とにかく、貴方みたいな若い男性はボート小屋には行かない事ね。」

念を押してみると、泣きそうな顔でコクコクと頷いた。

「では、失礼するわね。」

何かあったのは一目瞭然なのだが、その犯人はボート小屋に居るだろう。
真実を聞かねば!
さっさと歩き、この先にあるボート小屋へと急ぐ。
チャカチャカと早足で進む先に、朝もやに包まれたボート小屋が見えてきた。
この画ずらだけだと、ロマンチックかもね!
ボート小屋に近寄り、扉をノック……と言うかぶっ叩く。

ドンドンドン
「居るのは分かっているのよ!出てらっしゃい!!」

直ぐさま、顔見知りの男が出て来た。

「令嬢が朝っぱらから、騒がしいぞ!」

我が家の護衛騎士の1人だ。

「何だよ、おかんむりかよ?」

もう1人男が出てくる。
この男も護衛騎士の1人だ。
2人が出来上がっているのは、護衛騎士の間では有名で2人がこのボート小屋を良く使うのも有名な事だ。

「今、見たこと無い若い男とすれ違ったんですけど!」

ズバッと言う。
まどろっこしいのは無しだ。

「あぁ……アイツな。夜中に出たんだけど、着いてきててさ……ごちゃごちゃ言いだしたから、2人掛かりで教育してやったんだよ。」

2人掛かりでやったのかよ!

「そんな事、許されると思っているの?!」

「許されるだろ?」

しれっとした顔で言ったわね!

「許される訳ないでしょ!どうして私を呼ばないのよ!!」

「呼ぶわけ無いだろう!夜中だぞ!!」

即答されました。

「2人掛かりで新人教育とか!見たかった!!」

アチャーな顔をする2人。

「初々しく翻弄されるとか!萌えるでしょ!イヤイヤ言いながらも流されるとか見たかった!」

「………なんで、分かるんだよ…………」

「勘よ!!」

「あっそう………」

嘘です。私の希望です。

「あーあ、見たかったなー」

つい、心の声が漏れてしまいました。
てか……ボート小屋の中からは、ガッツリ臭いが………
一歩踏み出し、ボート小屋に入るとキッツいザーメン臭がします。

「クッサ………どんだけ出したのよ。ちゃんと空気を入れ替えときなさいよ!」

言ったと同時に後ろから羽交い締めにされた。
んー?巫山戯てんのかな?

「女が1人で来るとか、どんな目に合うか分かってんのか?」

なる程!脅してんのかな?

「目の前の杭を見なさい。」

鉄製の杭が数本転がっている、この杭はボートを繋ぐ為の杭だが予備の杭が数本置いてあるのだ。
その杭の1本を無詠唱の風魔法でヒュンっと真っ二つに切る。

「ご自慢の杭があんな風になっても良いなら、続けて良いわよ。」

パッと離され、プルプルと震える2人を見た。
さすがにぶった切る宣言は恐ろしいらしい。

「自分の杭が大切なら、気を付ける事ね。」

コクコクと頷く二人を私はニンマリと笑い、強めの風を起こし部屋の空気を外に押しだした。
勿論、無詠唱だ。

「「申し訳ありません。」」

青ざめる2人を尻目に、ボート小屋から出て行く。
私が無詠唱で風魔法を使えるのを知っているのは、護衛騎士隊長だけだったけど……そろそろバレても良いかな!

「ホーッホッホッホッ………」

仕切り直しは失敗した。
正直、ぶった切るは言い過ぎた。
リアルで切ったら、出血酷くて死んじゃうかも知れないのにね!
脅されたから、脅し返した!
そこの所は反省もしないし、後悔なんてしない!
女を力尽くで手込めにするのは、許さないわよ!!
私はクルクルと鳴り出したお腹を抱えて、自室を目指す。
あー、お腹空いた!
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