婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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討伐の旅 15

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重い瞼をこじ開け起きたのは、木窓から漏れてくる光を感じたからだった。

「朝……か?俺は……武装のまま寝てしまったのか。」

何もかもが気怠く、重く感じる……握りしめた拳をゆっくり開くとミヒャエルの指輪があった。
そうだ……もぅ、ミヒャエルはどこにも居ない。数少ない俺の取り巻きだった……学園に入ってから、ずっと俺の側に居たのはミヒャエルとジョシュアだけだった。
俺の取り巻きはジョシュア一人になってしまった……
ギシギシと音を立てる狭苦しいベッドから、体を起こし降り立つ。
…………何故、武装も解かずに寝たのに体は苦痛を感じないのだろう?聞いた話では、武装で休むと多少なりとも苦痛を感じるから出来る事なら武装は解いて休んだ方が良い。と言われた。
そうだ……確かミヒャエルがそう言っていた、だが苦痛は殆ど感じない……むしろ疲れが取れたような気がする。
あまり重さを感じない武装、見たことも無い革で造られている……暑さ寒さも殆ど感じない、きっとかなり高価な物なのだろう。
ふとベッドサイドの小さな棚を見ると、昨日用意して貰った湯の入った桶がそこにあった。せっかく用意してくれたのに、俺は使う事無くそのまま寝てしまったのか……俺は体を起こしベッドから立ち上がり、すっかり冷めて水になってしまった湯に浸された布を取り出し絞る。少しヒンヤリした布で顔を拭き、気分を何とか変える。二度三度と繰り返した後、布を桶に浸し武装を解く……汗をかいた体を拭きたかったからだ。
武装を解き武装の下に付けていたシャツやパンツを脱ぐと、鍛えても無い体が露わになる。
…………昨日見た帝国の皇子、がっしりしてたな……あんな大きな馬にエリーゼを先に乗せて一緒に乗って行った……エリーゼは背も高くて女らしいと余り思わなかったが、あの皇子に後ろから抱きしめられた姿はほっそりとして…………『エリーゼ様って背が高くて男の人みたい。』何かガツンと頭を叩かれたみたいな気がした……マリアンヌ……なんでマリアンヌはそんな事を言ったんだ?エリーゼは確かに背が高いが男には到底見えなかったはずだ……そうだ…………何度もそんな事を口にしていた…………マリアンヌが何度も言うから、いつしか俺もエリーゼの事を男みたいな女だと思って…………エリーゼは女だてらに剣を振るい馬に乗り男よりも賢くて……何もかも俺より出来た、だから余計に…………
ただ俺が頼りなく愚かだっただけだった。
俺はいったい…………何がどうして…………

─コンコン─
「殿下、起きてますか?朝食は食べれますか?」

扉越しに声を掛けられ、腹が空いている事に気がついた。
慌てて桶に手を突っ込んで布を絞り体を拭いていく、少しだけサッパリした体に着ていた物を順次身に付ける。
考えるのは止めだ、とりあえず朝食を食べてからだ。
俺は武装を整え、部屋に忘れ物が無いのを確認し部屋から出た。
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