婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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青氷の薔薇 注意!このお話は過去のお話です!

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広く大きな屋敷は来る者にその権勢を見せつけるような煌びやかな造りをしていた。

ここはゴルゴダ帝国帝都皇宮に程近い広大な敷地を持つシルヴァニア公爵家帝都邸である。

「お父様がお帰りになったら呼んで頂戴。直々にお聞きしたい事があるから。朝日が昇る前でれば、呼ぶように。良いわね。」

シルヴァニア公爵邸の中、公爵家令嬢フェリシアは僅かに甘さを感じる声でニコリともせずに公爵執事長にそう伝えるとクルリと踵を返し自室へと向かって行った。
フェリシア・ド・シルヴァニアはシルヴァニア公爵家末の姫らしい、美しく高貴で華やかな容姿をしておりその容姿故に青氷の薔薇と呼ばれていた。
フェリシアの髪はプラチナブロンドで瞳は青紫色だが、フェリシアが好んで着るドレスが青色だったために多くの帝国貴族がシルヴァニア公爵家の末の姫と言えば青薔薇の如くと言いだした事が所以だった。
だが、青氷の薔薇と言われるのは華やかな顔立ちなのにどこか冷たい雰囲気のためいつの間にか青い氷のようだと噂され、いつしか青氷の薔薇と言われるようになった。

この時、フェリシアは十五才になって間もない頃。帝国では十二才から十五才の間に通う学園と十六才から十八才の間に通う学院があり、フェリシアは学園最後の年ある噂を聞きつけ父親であるシルヴァニア公爵家当主その人に直談判する為に執事に伝言を頼んだ。


噂は王国とより良い関係を築く為、若者を三年間交換留学させる。
と言うものだった。


「愚かしい事を考える。高々三年間で懐柔出来ると思ってるのかしら?」

フェリシアは己の自室で紅茶を飲みながら、そう呟いた。その言葉には刺を纏っていた。

「フェリシア様、その様な事は言ってはなりません。王国は必死なのですよ。」

そう応えたのは幼い頃から共にいるエミリ・ド・クローブ、同い年でシルヴァニア家の遠縁にあたるクローブ子爵家の娘だった。
ニヤリと冷淡な微笑みを浮かべたフェリシアは、公爵家令嬢に相応しく優雅な仕草で紅茶を飲み下す。

「腰抜けばかりのオーガスタ王国に何が出来ると言うのかしら?ジリ貧なのは自分達のせいでしょうに。」

エミリは皮肉気に微笑みながら、空になったフェリシアのカップに紅茶を注ぐ。

「如何にも気弱で愚かしいこと、でも交換すると言う事はこちらに来た者が懐柔されるとは思わないのかしら?それとも懐柔されても良いような小物を寄越すのかしら?」

フェリシアはそう愚痴ると、テーブルの対面にエミリに座るように手で指し示す。エミリは慣れたもので、自分の分の紅茶をカップに注ぐとフェリシアの対面席に座った。
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