婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

文字の大きさ
244 / 756

青氷の薔薇 2 注意!このお話は過去のお話です!

しおりを挟む
外は既に夕暮れだが、カーテンは引かれ室内は魔道具の明かりで満たされていた。

「フェリシア様は交換留学の件で旦那様に直談判なさるのですか?」

エミリはいまだフェリシアの真意が読めず、迷いながら聞いている。そんなエミリを見て、フェリシアは内心で『エミリは可愛いわね。』等と全く違う事を考えていた。

「まぁね。もし、本当だったら私王国に行ってみたいと思って。」

サラリと思いも寄らない事を言われ、エミリは笑顔が張り付いたまま呆然とフェリシアを見つめた。少したってやっと何を言われたか理解し、フェリシアが何を考えているのか真意を探らなければとフェリシアに対してキツい眼差しで見詰める。

「エミリ、そんな怖い目で見ないで頂戴。こんな下らない策を講じる愚かな王国民を見てみたいと思ったのよ。だって余りにも愚かでしょう。」

クスクスと笑いながら話すフェリシアは上機嫌にしか見えなかった。だが、それは決してフェリシアという娘を知らない者の見解だ。フェリシアは曰く策士だと言う者もいれば、フェリシアは恐ろしい術を持つ敵にしてはならない悪女だと言う者もいる。
策士で悪女で敵対する者は徹底的に潰しに掛かる、そこらの男よりも恐ろしい術者こそがフェリシアと言う娘だ。

「何をお考えか、このエミリにだけは教えて下さるのでしょう?」

真剣な面持ちでフェリシアをヒタと見詰めるエミリの目に、恐れは無かった。それはエミリが自分かフェリシアかどちらかが死ぬまで側に居ると誓った間柄だったからだ。
特殊な環境と術を使う女だけの組織『シルヴァニア・ファミリー』に属し、魔法とは違う術でもって人の生死を問う。その組織においてフェリシアは上から数えた方が良い程の術者であり、エミリはその術に惚れ込み己の全てをフェリシアに捧げる事を『シルヴァニア・ファミリー』の組織の本拠地であるシルヴァニア公爵領・シルヴァニア山の山頂近くに切り開かれた通称里と呼ばれる場所で誓ったのだ。
このシルヴァニア山はまだ帝国になるよりも遥か昔からシルヴァニア一族が住む高山で、その高さは普通の山よりも遙かに高い山で国境の山程高いと言われている。
フェリシアはエミリに微笑み、一口紅茶を飲んでから告白する。

「別に、だって学園のめぼしい他家の令嬢とは遊び飽きてしまったのよ。分かるでしょう?もう私に盾突く娘はいないし、使える娘も手に入れてしまったのよ。新しい娘を手に入れれるのなら、それに越したことは無いでしょう?先々を考えれば、言いなりになる娘が王国に居たら便利でしょう?」

それは、ある意味帝国からの刺客でしか無い発言だった。だがエミリはなる程と頷いた。フェリシアは帝国の裏を統べる『シルヴァニア・ファミリー』の里長様・次長様に次ぐ大婆様の孫娘なのだ。

「分かりました。では、交換留学の話が本当ならば私もお連れ下さい。」

「勿論よ、エミリが居なかったら私詰まらなくて死んでしまうわ。」

幼い頃から里で一緒に様々な事を学んだ間柄でもあるのだ、離れないと誓っても言葉で確認するのが大切な事を二人は良く知っていた。
しおりを挟む
感想 3,411

あなたにおすすめの小説

完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。 『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』 『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』 公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。 もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。 屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは…… *表紙絵自作

見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます

珠宮さくら
恋愛
ローザンネ国の島国で生まれたアンネリース・ランメルス。彼女には、双子の片割れがいた。何もかも与えてもらえている片割れと何も与えられることのないアンネリース。 そんなアンネリースを育ててくれた乳母とその娘のおかげでローザンネ国で生きることができた。そうでなければ、彼女はとっくに死んでいた。 そんな時に別の国の王太子の婚約者として留学することになったのだが、その条件は仮面を付けた者だった。 ローザンネ国で仮面を付けた者は、見るに堪えない顔をしている証だが、他所の国では真逆に捉えられていた。

〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····

藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」 ……これは一体、どういう事でしょう? いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。 ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した…… 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全6話で完結になります。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

(完結)私より妹を優先する夫

青空一夏
恋愛
私はキャロル・トゥー。トゥー伯爵との間に3歳の娘がいる。私達は愛し合っていたし、子煩悩の夫とはずっと幸せが続く、そう思っていた。 ところが、夫の妹が離婚して同じく3歳の息子を連れて出戻ってきてから夫は変わってしまった。 ショートショートですが、途中タグの追加や変更がある場合があります。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

俺が悪役令嬢になって汚名を返上するまで (旧タイトル・男版 乙女ゲーの悪役令嬢になったよくある話)

南野海風
ファンタジー
気がついたら、俺は乙女ゲーの悪役令嬢になってました。 こいつは悪役令嬢らしく皆に嫌われ、周囲に味方はほぼいません。 完全没落まで一年という短い期間しか残っていません。 この無理ゲーの攻略方法を、誰か教えてください。 ライトオタクを自認する高校生男子・弓原陽が辿る、悪役令嬢としての一年間。 彼は令嬢の身体を得て、この世界で何を考え、何を為すのか……彼の乙女ゲーム攻略が始まる。 ※書籍化に伴いダイジェスト化しております。ご了承ください。(旧タイトル・男版 乙女ゲーの悪役令嬢になったよくある話)

処理中です...