婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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シュバルツバルト領・領主館 2 ルーク視点

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シルヴァニア産の馬達はばらけて行った……と思ったら、各々の主を乗せてエリーゼを追って行った。たった一頭だけ、夫人の馬車に寄り添うように並走していた。

「みんな、いっちゃったにゃ……」

「にいにもいっちゃったピカ……」

え?何だって?凄まじいスピードで駆けて行ったヒナの後ろ姿があっという間に小さくなる。スゲェ……チョコ◯速ーっ……って完全に置いてきぼりだよ。一蹴りでどんだけ進むんだよ……
後ろから見慣れた領主隊の隊士が馬を進めて俺の隣に並んだ。

「婿君!」

婿君?俺の事か!……婿殿って呼ばれてたら仕事人になっちゃうな!(笑)おっといかんいかん。

「ん?」

とりあえず笑顔だ。少し年上の隊士いや隊員だな。隊員は爽やかな笑顔で俺を見た後、領主館を見た。

「行ってしまわれましたね。エリーゼ様はご幼少の頃から、あんな風にお転婆だったのですよ。でも、そのお姿こそがこのシュバルツバルト領の姫に相応しいと誰もが思っていました。王都の……一見すれば華やかな王宮に咲く華として生きていかれるなんて、私からしたらお辛いだろうと勝手に思っておりました。それを……あの愚鈍な王子が……いや、失礼。婿君も同じ皇子というお立場でしたな。婚約破棄等と……ですが、婿君が現れ新たな婚約者となられシュバルツバルト家に婿入りして下さると……婿君は我等に希望を与えてくれた。感謝してもしきれません。婿君が我等の主に繋がると聞いて、兄上が喜びまして……側近をかなり早くに選定する事となりましたからね。気合もかなり入りますよ。」

「側近……か……」

思わず呟きが漏れてしまった。仕事のパートナーであり、討伐のパーティーメンバーであり性欲処理もする。人生の殆どを自分に捧げてくれる存在の同性。俺は兄上が複数の男達にシャレにならない程の快楽を植え付けられる姿を見て尻込みしたヘタレだ。兄上だけじゃない、父上も皇帝であるお祖父様も……そうだと知らされ、その意味を知らされ俺は皇室から離れたいと望んだ。そりゃあBLってモノは知ってる、でもそれは作り物の世界でリアルじゃなかった。だが側近はリアルだ。

「そんな風に顰めっ面する事は無い。」

声を掛けられ、ハッ!とする。困ったように笑われ、俺も困り顔で笑った。

「婿君は真面目ですな。側近は絶対に抱かねばならないという訳ではありません。ただ……まぁ、その……大型の討伐後は滾りますからね、そうなる事が多いってだけで若い内だけって者が殆どらしいですよ。」

滾る……か。分からないじゃない。大型……自分よりも遙かに大きいモンスを倒した時の高揚感……あれは確かに滾る。その状況になったら分からないな……俺はその時にどうするんだろう。ため息を一つ溢し、隣の男に「そうですか?」と軽く返した。
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