婚約破棄されまして・裏

シュバルツバルト領・領主館 3 ルーク視点

「婿君だったら、どうしなくても優秀な者が候補としてあげられます。一番気に入った者を選べば良いだけですよ。最終決定は婿君の気分ですからね。」

「気分……ですか？そんな気分で選んで良いんですか？」

「勿論ですよ、力が拮抗している者から一番これかな？と思える者を選べば良いだけの話ですよ。ずっと側に置くのはご自分ですからね、ご自分の一番のお気に入りを選べば良いのです。」

「そうか、教えてくれてありがとう。助かったよ。」

要はセフレも出来る秘書＆サポーターか。それじゃあ、側近がずっと張り付くのも理解出来る。大型討伐後の滾るのは理解出来る。リアルだと命のやり取り感パナいからな……本能だと分かる分、止めようが無い。実際、大型討伐の後はあちこちの隊員の天幕から艶っぽい声が聞こえてたしな。
エリーゼから浮気とか裏切りとか言われ無かったって事は、必要性の高い存在だからか？
そんなことをツラツラと考えていたら馬車列の動きが止まった。

「先頭が正面玄関に着いたな。順次降りて行くから、時間は掛かるがこれで食事だな。エリーゼ様のお料理を食べる最後の機会だから、腹いっぱい食べてたらふく飲まないとな！いや、婿君はこの先いつでも食べれると思いますが今日は無礼講ですよ！」

そうか……元王都民や領主隊の者達は、これで食事が元の食事に戻るのか……

「料理を覚えて店でもやれば、繁盛するだろうにな。」

つい、ボソリと呟いてしまった。

「ソイツは良いな！女や討伐に向かない奴が料理屋やってくれれば助かるな！早速、総隊長に言わないとな！っと、明日じゃないと無理だな。今日は飲みまくるだろうからな！」

ハハハ！と笑う。料理屋か……そうだな、料理屋があれば流行るだろうし流行れば家でも作ろうと思うだろう。食材も調味料も売買されて……経済が活性化するな。ますます発展するな。
幾つかの馬車が左側に広がる草原へと進む。ワラワラと隊員が降りて天幕を作って行く。

「我等が討伐から帰って来たら、ああやって天幕を張っておくんですよ。邸に泊まれませんからな！」

「そうか……そうだな。」

じゃあ寄子貴族全員泊めるのか。セレブ感パネェ……
馬車や馬達は左側に、降りたであろう者達は右側に歩いて行く。

「向こうで夜会になる。何、難しい事は無い。婿君は泰然と構えていて良い！さて、私も戻らねばなりません。失礼！」

馬の向きを変え、馬車列の後方へと走って行った。トールの隊員か……優秀でしかも気遣いが出来る。人材育成も抜かりなしか。辺境侯として優秀なんだな……帝国が勝てる要素が少ない。

「間近で見ると迫力あるな。」

「すごいにゃ……」

「おっきいピカ……」

「そうだな。」

ノエルもルチルもシュバルツバルト領の領主館に圧倒されていた。バッキンガム宮殿とかウィンザー城とかに近いその建物を見て、帝国の皇宮はベルサイユ宮殿っぽいな……と思ったのは内緒だ。