婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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ハインリッヒの黒歴史

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若き次期領主、ハインリッヒ・フォン・シュバルツバルトは大型討伐が済み領主館の前庭で共に戦った討伐隊の仲間と帰還の宴を楽しんでいた。
宴には討伐隊の家族も呼ばれ、ハインリッヒも妻フェリシアと共に参加していた。
宴の主催者は領主マクスウェルで彼は豪放磊落と言う言葉が良く似合う人物で、彼が主催の宴で尚且つ領主館で行う時は敷地内に集落を作って暮らしてるドワーフやエルフがワインの飲む為に出てくる始末であった。何故なら領地で造っているワインを何樽も買って置いてあるからだ。ようはどんどん振る舞って飲ませないと溜まっていく一方なので、この時ばかりは酒好きな連中にも声を掛けて好きなだけ飲ませるのだ。お陰で毎年溜まる一方だったワインが順調に消費出来て、酒蔵でもない倉庫がやっと片付くと喜ばれたのだ。
今夜も宴は順調に進み、隊員達の家族が次々と領都の町中へと送ってくれる馬車に乗って帰りだした頃合だった。前庭には殆どの女性の姿は無く、フェリシアも義母アナスタシアと共に館の中へと消えていた。

ドワーフもエルフも女性の姿が見えなくなったのを確認すると、ワインを飲むペースを上げていく。そこへまだまだ若い隊員達が混じりだす。
当然ハインリッヒも混じっていく。


「ハイル!俺は先に休む!程々にしておけよ!」

「勿論ですよ!父上!」

若いハインリッヒは領主館での宴の恐ろしさを知らなかった。
何樽も置かれたワイン樽を囲むように輪になった男達は並々とワインを注がれたジョッキを持ち、大声で歌う。歌い終わると男達は口々に乾杯!と叫んでジョッキのワインを飲み干す。
それが延々とワイン樽の全てが終わるまで続くのだ。
何杯飲んだか分からなくなると、火照った体を少しでも冷ます為に次々と衣服を脱ぎ捨てていく。誰も彼もが一枚二枚と脱いでいき、最終的には全員もれなく素っ裸で大声で歌いワインを浴びるように飲む。
やがて肩を組みながら歌い足を上げたり腰を振ったりと踊りだしてはワインを飲む。
その乱痴気騒ぎは空が白み始めるまで続いた。

前庭に素っ裸で転がる男達と空のジョッキとワイン樽に当時の家令は事細かに報告書を作成し、領主マクスウェルとハインリッヒの妻フェリシアへと提出した。
この報告書を読んだフェリシアは自室へとって返し、シルヴァニアの武装に身を包むと鞭を携え前庭へと駆けて行き次期領主であるハインリッヒを文字通り叩き起こした。叩き起こされたのはハインリッヒだけではない、転がっていた者達全員を叩き起こし全員を連座させて説教をしたのだ。

素っ裸で説教をされた男達はあの時を振り返ると、全身が震えると言う。
ドワーフもエルフもきっちり説教され、以降若い衆にはフェリシアには気を付けろとこっそり言付けるようになった。

この説教が身に染みたのか、これ以降この乱痴気騒ぎは禁止事項とされた。


ただ、ドワーフもエルフも身内にハインリッヒは自分達を凌駕する程の剣を持っているぞと教え違う意味で尊敬されるようになったのはフェリシアも知らない事である。
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