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娘が何かしてます。(フェリシア)
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朝方、お社へご挨拶に行き愛娘エリーゼと会った後私は侍女を連れて自室に戻った。
「ねぇ、エミリ。私の娘は次から次へとテイムしてるわね。しかも可愛い子達ばかり。」
差し出されたお茶をソファに深く座りゆっくりと飲んでいく。お社は炎のお使いと言われる炎狐がお住まいになってる所と繋がっている場所で、こちらに来る時に大婆様に教えて頂いた。大婆様が知っていたのではなく、里長様からの伝言だと聞かされ驚いた……このシュバルツバルトの領主の住まう地を護っているのだと教えられた。今まで炎狐様に会った事はほんの僅か、それなのに炎狐様の子供をエリーゼに託されるなんて正直喜ばしく誇らしい。あの可愛らしい炎狐様の子供……どんな名前になったのかしら?そこだけが心配だわ。だってエリーゼは、およそ名付けというものに対して実に大雑把と言うか何と言うか残念な名前を付ける事が多い。ユキも一見すると可愛らしいが雪狼の雪から取った名前だと思うと、ひねりも何にも無い事が分かってしまう。ルーク殿下とは大違い……せめてルーク殿下の半分とは言わないから可愛らしい名前を付けて頂きたいわ。
「あれ?ゾロゾロと移動して……」
「ソニア、何だと言うのです。」
「はい、エミリ様。共に旅をしていた民と兵が昨夜の宴の場所に向かっているようです。」
「……そうですね、何か作っているのでしょうか?」
確かに昨夜、コンロはそのままに戻って行ったわ。何かしら……気になるわ。お茶のカップとソーサーを脇に控えるシンシアへ渡す。
「アリエル、コンロを見て来て頂戴。」
ツイと右手を動かすとフウワリと姿を現した私のハーピーが右手に留まる。
「見てくるだけで良い?」
「ええ。」
羽ばたくように翼が動くけれど風は感じない。浮いたかと思えばスッ……と外に飛んで行く。そのまま閉めてある窓をすり抜けあっという間に姿が見えなくなる。
「さすがフェリシア様のハーピーは自由自在に飛んで行かれますね。羨ましいです。」
ポツリと呟くシンシアの言葉に、そう言えばいつからすり抜けられるようになったのかしら?と思う。
「その内、すり抜けれるようになりますよ。」
エミリの言葉に頷き、シンシアに微笑みかける。
「いつの間にか自由自在に飛んでゆけるようになるわ。大丈夫よ。」
アリエルが音も無く戻り、私の周りを一周して肩に留まる。
「主の娘が食事をふるまっていた。ずいぶんと見たことのない果物を使っていた。」
見た事の無い果物?それは何かしら甘味では無いのかしら?
「ありがとうアリエル。休んでて良いわよ。」
私の言葉を聞くと、フッと姿を消した。静かに立ち上がる。
「前庭に行きましょうか。エリーゼが朝食を作っているようよ。」
三人共頭を下げ、外に行く準備を始める。支度を済ませ足早に外へとむかう。
前庭には多くの者達で溢れかえっていた。少し見回せばえの姿は昨夜と同じ場所に居る。何故、そう思ったのか不思議だけど気配を消してみた。私が気配を消した事でエミリもシンシアもソニアも気配を消して私の後ろをついてくる。
エリーゼの近くに来たとき、嗅いだ事の無い甘い香りが漂っていた。
いやだわ、エリーゼったら私に内緒でこんな素敵な香りの物を作るのんて……ちょっとしたイタズラ心でエリーゼに抱き着いた。久しぶりに見るエリーゼの顔に笑いを堪える。
初めて飲む南国風と言う物に舌鼓を打つ。いつかこれも領民が飲めれるようになれば良い。甘いものは幸せな気持ちにしてくれる。世界は変わる……このシュバルツバルトの地から。私はそう感じ思う。
「ねぇ、エミリ。私の娘は次から次へとテイムしてるわね。しかも可愛い子達ばかり。」
差し出されたお茶をソファに深く座りゆっくりと飲んでいく。お社は炎のお使いと言われる炎狐がお住まいになってる所と繋がっている場所で、こちらに来る時に大婆様に教えて頂いた。大婆様が知っていたのではなく、里長様からの伝言だと聞かされ驚いた……このシュバルツバルトの領主の住まう地を護っているのだと教えられた。今まで炎狐様に会った事はほんの僅か、それなのに炎狐様の子供をエリーゼに託されるなんて正直喜ばしく誇らしい。あの可愛らしい炎狐様の子供……どんな名前になったのかしら?そこだけが心配だわ。だってエリーゼは、およそ名付けというものに対して実に大雑把と言うか何と言うか残念な名前を付ける事が多い。ユキも一見すると可愛らしいが雪狼の雪から取った名前だと思うと、ひねりも何にも無い事が分かってしまう。ルーク殿下とは大違い……せめてルーク殿下の半分とは言わないから可愛らしい名前を付けて頂きたいわ。
「あれ?ゾロゾロと移動して……」
「ソニア、何だと言うのです。」
「はい、エミリ様。共に旅をしていた民と兵が昨夜の宴の場所に向かっているようです。」
「……そうですね、何か作っているのでしょうか?」
確かに昨夜、コンロはそのままに戻って行ったわ。何かしら……気になるわ。お茶のカップとソーサーを脇に控えるシンシアへ渡す。
「アリエル、コンロを見て来て頂戴。」
ツイと右手を動かすとフウワリと姿を現した私のハーピーが右手に留まる。
「見てくるだけで良い?」
「ええ。」
羽ばたくように翼が動くけれど風は感じない。浮いたかと思えばスッ……と外に飛んで行く。そのまま閉めてある窓をすり抜けあっという間に姿が見えなくなる。
「さすがフェリシア様のハーピーは自由自在に飛んで行かれますね。羨ましいです。」
ポツリと呟くシンシアの言葉に、そう言えばいつからすり抜けられるようになったのかしら?と思う。
「その内、すり抜けれるようになりますよ。」
エミリの言葉に頷き、シンシアに微笑みかける。
「いつの間にか自由自在に飛んでゆけるようになるわ。大丈夫よ。」
アリエルが音も無く戻り、私の周りを一周して肩に留まる。
「主の娘が食事をふるまっていた。ずいぶんと見たことのない果物を使っていた。」
見た事の無い果物?それは何かしら甘味では無いのかしら?
「ありがとうアリエル。休んでて良いわよ。」
私の言葉を聞くと、フッと姿を消した。静かに立ち上がる。
「前庭に行きましょうか。エリーゼが朝食を作っているようよ。」
三人共頭を下げ、外に行く準備を始める。支度を済ませ足早に外へとむかう。
前庭には多くの者達で溢れかえっていた。少し見回せばえの姿は昨夜と同じ場所に居る。何故、そう思ったのか不思議だけど気配を消してみた。私が気配を消した事でエミリもシンシアもソニアも気配を消して私の後ろをついてくる。
エリーゼの近くに来たとき、嗅いだ事の無い甘い香りが漂っていた。
いやだわ、エリーゼったら私に内緒でこんな素敵な香りの物を作るのんて……ちょっとしたイタズラ心でエリーゼに抱き着いた。久しぶりに見るエリーゼの顔に笑いを堪える。
初めて飲む南国風と言う物に舌鼓を打つ。いつかこれも領民が飲めれるようになれば良い。甘いものは幸せな気持ちにしてくれる。世界は変わる……このシュバルツバルトの地から。私はそう感じ思う。
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