358 / 756
晩餐会の前(ハインリッヒ)
しおりを挟む
行ってしまった……可愛いノエルとルチルを連れて婿と言うより、新たな息子となるルークが行ってしまった。支度もあるし、仕方ないと分かってるが視界に入るノエルとルチルの可愛さは荒んだ俺の心に温かさと潤いと癒しをくれた。あれは良い!
「ルーク様はかなり仕事が出来ますね。仕分けられた物を見ましたが優秀です。ただの皇子としての教育ならば帝国は恐ろしい国です。仕事も出来て、豪胆で優しいときてる……エリーゼ様との婚姻が待ち遠しいですね。」
むぅ……そうなんだよな。あのバカ王子に比べたら、とんでもなく良いんだがやっぱり可愛い愛娘が……いや、あんなに幸せそうなんだから喜ばんとな。でもなぁ……せっかく領地に帰って来て、一緒に大型討伐行きたかったなぁ。俺の勇姿を見せたかったんだが、旅の間に出くわした時の姿で我慢しろって事かなぁ……
「ハイル。格好いい所を見せたかった気持ちは分かりますが、エリーゼ様は暫くこちらで過ごすのでしょう。きっと機会はありますよ。それよりも、ハインリッヒ様もお支度して大広間に先に入りませんと。口頭で伝えるのでしょう?」
そうだ!ルークの側近の事を言っておかんとな!
「勿論だ!早い所、側近を付けて慣れて貰わんとな!」
アレクと共に部屋へ戻り、アレクの手によって支度を終える。今日は愛娘の為の晩餐会だ、張り切っていかんとな!
アレクを連れて大広間に向かう。中央階段を降り始めて気がつく、エントランスホール皆が集まっている事を。眼下には着飾った寄子貴族の当主達が俺を待ち構えていた。
階段を降りきらず、数段残した所で歩みを止め見回す。
「皆、ご苦労。こうして集まってくれた事に感謝する。早速だが、晩餐会の前に言わねばならぬ事がある。」
無言で姿勢を正し、俺の言葉を待つ我が配下の貴族達。
「婿となるルークに側近を付ける。我が息子同様となる故、しっかりとした者を望む。初である事には拘らん。有能である事こそが大事である。」
「「「「「おおおお!」」」」」
「では後程、晩餐会で会おう。」
一斉に正面玄関から出て行く者達に少しだけ笑む。それぞれの子息や側近へと教育を施された者達へ伝令を飛ばさなければならないからだ。領主の子供達の側近や侍女は特別だ。エリーゼの侍女はフェリシアの子飼いの娘が早々に決められ、鍛錬を積んだ。アレクの娘でもあるがシルヴァニアの教育は厳しかった、アレクも時折何かしら言っていたようだが聞き入れられる事は無かったとぼやいていた。王族には側近は居ない……だがルークはエリーゼの婿になる。我が家に来る以上、側近を付けるのは必須だ。諦めていた我が家との繋がりを持てるかもしれない出来事にあれ等も期待していた。
どれ程の者が来るかは分からない。だが、我が家の一員になる者に付くのだ……トールの時と違って新参者は居ない。期待しても良いだろう。
言うべき事は言った。大きく息を吐き階段を戻り自室ではなく、フェリシアの部屋へと向かう。人気の無い長い廊下を歩いて行く。この本館の両端に別れた俺とフェリシアの部屋。この領主館は元々城だった。硬い守りの魔法が賭けられているから、壁一つ欠けること無く姿を変えること無くあり続けている。にも関わらず主とその妻のどちらかを、生かす為にわざと部屋が離されている。この城の主となると明かされる様々な事には驚きしかなかった。王国よりも古い歴史を持つ我が領主館と言う名の城の中、俺は最愛の妻の笑顔を見たくて歩き続けた。
「ルーク様はかなり仕事が出来ますね。仕分けられた物を見ましたが優秀です。ただの皇子としての教育ならば帝国は恐ろしい国です。仕事も出来て、豪胆で優しいときてる……エリーゼ様との婚姻が待ち遠しいですね。」
むぅ……そうなんだよな。あのバカ王子に比べたら、とんでもなく良いんだがやっぱり可愛い愛娘が……いや、あんなに幸せそうなんだから喜ばんとな。でもなぁ……せっかく領地に帰って来て、一緒に大型討伐行きたかったなぁ。俺の勇姿を見せたかったんだが、旅の間に出くわした時の姿で我慢しろって事かなぁ……
「ハイル。格好いい所を見せたかった気持ちは分かりますが、エリーゼ様は暫くこちらで過ごすのでしょう。きっと機会はありますよ。それよりも、ハインリッヒ様もお支度して大広間に先に入りませんと。口頭で伝えるのでしょう?」
そうだ!ルークの側近の事を言っておかんとな!
「勿論だ!早い所、側近を付けて慣れて貰わんとな!」
アレクと共に部屋へ戻り、アレクの手によって支度を終える。今日は愛娘の為の晩餐会だ、張り切っていかんとな!
アレクを連れて大広間に向かう。中央階段を降り始めて気がつく、エントランスホール皆が集まっている事を。眼下には着飾った寄子貴族の当主達が俺を待ち構えていた。
階段を降りきらず、数段残した所で歩みを止め見回す。
「皆、ご苦労。こうして集まってくれた事に感謝する。早速だが、晩餐会の前に言わねばならぬ事がある。」
無言で姿勢を正し、俺の言葉を待つ我が配下の貴族達。
「婿となるルークに側近を付ける。我が息子同様となる故、しっかりとした者を望む。初である事には拘らん。有能である事こそが大事である。」
「「「「「おおおお!」」」」」
「では後程、晩餐会で会おう。」
一斉に正面玄関から出て行く者達に少しだけ笑む。それぞれの子息や側近へと教育を施された者達へ伝令を飛ばさなければならないからだ。領主の子供達の側近や侍女は特別だ。エリーゼの侍女はフェリシアの子飼いの娘が早々に決められ、鍛錬を積んだ。アレクの娘でもあるがシルヴァニアの教育は厳しかった、アレクも時折何かしら言っていたようだが聞き入れられる事は無かったとぼやいていた。王族には側近は居ない……だがルークはエリーゼの婿になる。我が家に来る以上、側近を付けるのは必須だ。諦めていた我が家との繋がりを持てるかもしれない出来事にあれ等も期待していた。
どれ程の者が来るかは分からない。だが、我が家の一員になる者に付くのだ……トールの時と違って新参者は居ない。期待しても良いだろう。
言うべき事は言った。大きく息を吐き階段を戻り自室ではなく、フェリシアの部屋へと向かう。人気の無い長い廊下を歩いて行く。この本館の両端に別れた俺とフェリシアの部屋。この領主館は元々城だった。硬い守りの魔法が賭けられているから、壁一つ欠けること無く姿を変えること無くあり続けている。にも関わらず主とその妻のどちらかを、生かす為にわざと部屋が離されている。この城の主となると明かされる様々な事には驚きしかなかった。王国よりも古い歴史を持つ我が領主館と言う名の城の中、俺は最愛の妻の笑顔を見たくて歩き続けた。
169
あなたにおすすめの小説
〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····
藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」
……これは一体、どういう事でしょう?
いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。
ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した……
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全6話で完結になります。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
(完結)私より妹を優先する夫
青空一夏
恋愛
私はキャロル・トゥー。トゥー伯爵との間に3歳の娘がいる。私達は愛し合っていたし、子煩悩の夫とはずっと幸せが続く、そう思っていた。
ところが、夫の妹が離婚して同じく3歳の息子を連れて出戻ってきてから夫は変わってしまった。
ショートショートですが、途中タグの追加や変更がある場合があります。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます
珠宮さくら
恋愛
ローザンネ国の島国で生まれたアンネリース・ランメルス。彼女には、双子の片割れがいた。何もかも与えてもらえている片割れと何も与えられることのないアンネリース。
そんなアンネリースを育ててくれた乳母とその娘のおかげでローザンネ国で生きることができた。そうでなければ、彼女はとっくに死んでいた。
そんな時に別の国の王太子の婚約者として留学することになったのだが、その条件は仮面を付けた者だった。
ローザンネ国で仮面を付けた者は、見るに堪えない顔をしている証だが、他所の国では真逆に捉えられていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる