婚約破棄されまして・裏

異変（アンネローゼ）

側妃として数日過ごしてきた。ここ毎日、問題だらけと言うか問題しかない正妃のあの子がやって来る。その気持ちは分かる。あの子の部屋は驚く程寒い。こちらに付いてくる者以外は正妃の部屋で待機するのではなく、女官や侍女達が待機している部屋で待つようにさせた。寒さで病気になるような事があっては困るのだ。そろそろあの子がやって来る時間だわ……

「アンネローゼ様、正妃様がやって参りました。」

来た……何であの子は先触れを出さないでいきなり来るのか……

「お通しして。それとミネルバに連絡を、私の部屋に来るように……と。」

「畏まりました。」

私一人であの子の面倒を見るのは難しいわ。

「お早うございます！アンネローゼ様。」

立ち上がり礼をする。

「お早うございます、正妃様。ですが、いきなりやって来るのは礼儀がなっておりませんわよ。」

「ごめんなさい。その……
先触れと言うのに慣れなくって……」

「行わなければ慣れません。明日からは必ず先触れをお出しなさいませ！宜しいですね！」

「はぁい……」

「返事は間延びさせない！良いですか、貴女は貴族平民全ての女性の手本とならなければならないのですよ。立ち居振る舞い全てがですわよ！いつまでも平民の子供みたいな真似をなさっていては馬鹿にされるだけですのよ。それも貴族だけでなく、平民も貴女の事を悪し様に言うでしょう。誰しも良い事より悪い事を言う方が簡単なのですから。」

「そんな……」

「お黙りなさい。本当の事です。私達は貴族と言うだけで平民から妬まれたりする立場。更に王族に嫁いだ身であれば、注目されほんの僅かな事で悪し様に言われるのです。特に第三王子である私達の夫の評判は地に落ちてます。」

「え……」

「ご自分の為さった事でしょう。もっと自覚なさいませ！もっと細々とした事から気をつけなさいませ。皆が貴女の事を見て、貴女の無様な有様を吹聴してるのですよ。」

「ヒドイ……」

「何も酷い事はありません。これが私達の世界なのよ。城中に蔓延した噂は城の外に流れ、平民達の格好の話題となるのです。そう遅くない内に、貴女に憧れた娘達は貴女を責め立てるでしょう。面白おかしく。」

「そんな……」

「分かったのなら、貴族子女として立ち居振る舞いを改めなさい。」

「……はい。」

「アンネローゼ様、ミネルバ様がお仕度済み次第参られるとの事です。」

「……どうか為さったの？」

「少々気怠かったとかで、お仕度に時間が掛かると……」

「そう。……私も気怠かったけど、何かあったかしら？」

変な物を食した訳でも無いのに……