婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

文字の大きさ
398 / 756

紅蓮 2(キャスバル&レイ)

しおりを挟む
火竜は自分に真っ直ぐ突き進んで来る人間を焼き殺す為にその長い首をもたげ喉を震わす。その特徴的な動作にキャスバルは対抗魔法を即座に展開解放する。

「アイスウォール!」

火竜がファイヤーブレスを吐き出す直前、巨大な氷の壁を出すキャスバル。この僅かな時間に的確に魔法を繰り出し、対策を立てる。二番隊の面々は散開し、攻撃を仕掛ける。当然キャスバルもその巨体へと駆け寄る。

「チッ!もうダメか!」

キャスバルの目に火竜の脚を拘束していた氷が溶け始めてるのが見えた。そのままにしておける訳が無い。再度脚を氷で拘束する。火竜のファイヤーブレスはアイスウォールに阻まれ、誰一人として攻撃は受けてない。二番隊の三分の一は魔法を得意とする者が居り、その彼等が数人ずつ点在したのを確認する。

「魔法支援は頼んだ!行くぞ、レイ!」

「「「了解です!」」」

「はいっ!キャスバル様!」

絶え間なく氷魔法が火竜の脚に掛けられ続け、僅かに残ったアイスウォールにも氷魔法が掛けられその氷の壁も厚さを取り戻していく。氷魔法が使えない者達でも水魔法は使える為、彼等は火竜に直接水魔法で攻撃していた。
振り回される巨大な尾に数十人で立ち向かっているのが見える。

「隙を見てヤツの下に潜り込め!尾の付け根は安全地帯だ!」

「「「おう!」」」

何人もの隊員が尾の動きを見て潜り込んで行く。キャスバルは迂回し半分倒れかかった火竜の背へと回り込む。草むらの中を駆け抜けて行くキャスバルとレイの姿を火竜は見付けられなかった。それどころか四方八方から与えられる攻撃に対抗しようと暴れているが、思うようにいかない事に焦ってもいた。

その様子にキャスバルは勝てる!だがその為には翼を封じなければ……思い出す父の言葉。竜種は翼の内側の付け根の深い所に剣を突き刺せば翼は動かなくなる。そう教えてくれた。ならば俺も突き刺そう。走りながら剣を鞘から抜く。その青白く光る剣はキャスバルの氷魔法を良く受け付け、威力を増させた。
ブゥン!と振り回し、思い切りその翼の付け根の深い所へと突き立てる。

ギャオォォォォォォ!
 
火竜が大きく吠え、翼の片方がクタリと力無く地面に落ちる。痛みに火竜が暴れるが、最早勝利しか見えなかった。

「キャスバル様!私は尾に向かいます!頭を取って下さい!」

「任せろ!」

火竜の背へと駆け登り、火竜の頭を目指す。巨体故、一度乗ってしまえば簡単には攻撃を受けない。レイは動きの鈍くなった尾の付け根へと向かう。その手には双剣が握られているが、キャスバルの剣と同じく青白い光を放っている。その双剣を突き刺し、レイは氷魔法を剣に流す。剣の刀身から無数のツララが発生した。下からの攻撃と上からの攻撃で尾は深い切り傷に耐えきれなくなりブチブチと音を立てドサリと落ちた……尾の重さに耐えきれなくなったのだ。

声なき絶叫を上げる火竜。

その頭へと駆け登って行く。最も手早く討伐するには頭を落とすか脳天を貫くかだ。キャスバルは脳天を貫く事を選択していた。
辿り着いた火竜の頭の天辺でブンブンと剣を振り回し、一気に脳天に突き刺し氷魔法を剣に流す。剣は氷を纏い巨大な青白い剣となり火竜の頭を貫き剣先は顎から突き出ていた。
火竜の頭がゆっくりと倒れて行く。その高さ故、キャスバルは柄を両手でしっかりと掴み落ちないように体制を整えた。

大して傷付けずに討伐した火竜を見てキャスバルは笑った。

「レイ!こいつで新しい武装を作ろう!きっと良いモノが出来る!せっかくの竜種だ!解体して直ぐに領都に戻る!たらふく火竜の肉を食って帰るぞ!」

けたたましい音を立てて走ってきた後方支援の馬車から何十人もの人間が降りて来る。怪我の治療もだが、竜はその血の一滴すら素材だ。

今回の大型討伐は目的地に行かずに終わったかな?と思い笑う。その隣にはレイがいて優しく、だが熱っぽい何かをたたえていた。
しおりを挟む
感想 3,411

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

処理中です...