婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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初陣 2 (ルーク)

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「中々領都から出ないな」

まだまだ領都の中でどんどん人が増えてく。ふと「ルーク殿下万歳!」と帝国語で言われ瞬間的にそちらに満面の笑みを向け手を振った。目に入ったのは帝国の商人だろう団体だった。
この広大なシュバルツバルト領は街一つも大きい。それは前回の旅でも感じた。とにかく街壁もきちんと作られてるし、様々な事が行われてる。
代々の領主がしっかりとしている証拠であり、常に領民を気遣ってる証拠である。
そういった所は帝国の領主に通じていて好感しか持てない。
王宮に行く途中に通った領地は様々だった、領地経営が出来てる所ばかりかと思ったらある領地を境に酷い有り様でげんなりする事この上なかった。
最近になって分かったのは領地経営が出来てる所は全てシュバルツバルト家の寄子貴族の領地だった。

「こちら側は少し長いですからね、次の街までは少し距離がありますが一休みするにはうってつけの町がありますから」

「じゃあ、その町で昼かな?」

「そうですね」

昼は塩味オンリーか……早々にホームシックになりそうな予感だ。
いっそ野営で料理担当の隊員に作って貰った方が美味しい食事にありつけそうだなんて言えないな。

「やっと大門が見えてきましたね、ルーク様」

「ああ。必ず討伐する、絶対にだ。相手が飛竜だとしてもだ」

自然と体に力が籠る。

〈ご主人様よ、昂るのは分かるが今からそんなに力んでは先が思いやられる〉

クワイが笑うような鳴き声で言ってきて、少し照れる。

「そうだな、その通りだ」

キースに聞こえないように小声で呟いて、体から力を抜く。
大門を抜けた先に広がるのは麦畑らしく、秋蒔きなのかチロチロと生えている。
その向こうに生えてるのはきっと桃の木だろうな、大分広範囲に作られている。あちらこちらに見える電柱(木製)らしき物は魔物避けだろう。

「春になったら美しい眺めだろうな」

「そうですね、この辺りの街はどこも桃の木を植えてますからね。春はどこもかしこも桃色で多くの者が桃の花を見に来ますよ。俺も家族で良く見に行きました」

「桃の花見か……花を楽しみ、実も楽しむ。良い特産物だな」

クスクスとキースが笑う。何か変だったか?

「ルーク様、桃の木の最大の活用は桃の葉が蜜水の原料だからですよ。多くの女性や老人達が春から夏の終わりまで葉摘みに勤しむんですよ」

「そうか……」

思いもよらなかった。確か桃の葉って肌に良かったよな……一石二鳥ならぬ一石三鳥か……凄いな……
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