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1巻
1-2
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終了です。もぐもぐタイムは終了です。お父様が家族を見回しました。
「うむ……皆、食事は済んだようだな。話があるが長引くかもしれん、サロンで話す」
サロン……いわゆる談話室ですわー。なんかね、面倒くさいです。
根っこが庶民だからかな? いちいち移動しなくてもいいじゃん! とか思っちゃうんですよ。
まぁ、面倒くさくても移動はしますけどね。
そんなわけで到着~♪ サロン、オシャレだな~。長椅子とかロマンチック~。
「皆、席に着いて楽にしなさい。今日エリーゼの身に起きたこととこれからのことを話す」
サロンの様々な場所に、個々人が気に入った椅子が置かれている。
エリーゼのお気に入りは寝椅子でした。ぐうたらですか? ぐうたらですね(笑)
寝椅子自体が柔らかめで、さらに枕よろしく大小様々なクッションが置かれてます。
ただでさえ座り心地がいいのに、パフンとクッションにもたれかかると、うっかり寝てしまいそうに……
パーラーメイドが紅茶を置いてくれました。
サロンや応接室がメインの職場となるパーラーメイド、誰も利用しないときは隅っこで立ちっぱらしいです。
大変ですね! 私には無理ですっ!
ちなみに紅茶はストレートティーです。砂糖もミルクもレモンもないです。
あー午後のやつとか飲みたーい。……ないものねだりですね、言ってみただけです。
お父様は一人用の大きめソファですっ、革張りの豪華な逸品です! カッコイイです! そんなお父様は、ハインリッヒって名前です。
お母様は布張りの長椅子に座ってます。可愛らしい花柄ですが、価格は可愛くないです。あの花柄、全部手描きなんですよ。しかも長椅子なんで結構な数があります。お母様はフェリシアですよ、可愛いお名前ですよね♪
そしてお兄様、その一。私、一人っ子じゃないんです。彼のお気に入りは、布製の一人がけの椅子です。
肘かけ付きの猫脚の椅子で、ちょっとオシャレなデザインに見えます。
お兄様その一、キャスバルいいますのん……
そのうちキャスバル兄さん! とか言っちゃいそうで脇腹痛い。
で、お兄様その二はというと。
布張りの一人がけソファです……この世界のソファって割と高さがあるんですよね。
喫茶店とかにありそうなやつですわ。
お兄様その二は、トールって名前です。言いやすい名前ですね。
ウチ、五人家族です。いや……祖父と祖母もいますが、領地の港街(二つあるけど小っさい方)にて暮らしてます。
仲が悪いわけじゃないですよ、単に祖母が老後は好きな魚食べて暮らしたいって言い出して、祖父がヨッシャ! かなえたろ! って感じで引っ越しただけですから。
ラブラブですか? ラブラブですよ! な老夫婦なんですよ。羨ましいこって! 憧れるわ!
……やだ、お話に突入してない。
「今日はエリーゼの卒業パーティーだったが、ジークフリート王子が開始直前に婚約破棄を宣言した。あまりにも勝手な言い分と振る舞いだったので、陛下がいらしてすぐにお暇させていただいた。ついでに言うと、領地に帰る宣言してきた」
お父様、簡単に言いすぎですぅー(笑)
パーティー開始→国王陛下祝辞→王妃陛下祝辞→卒業生が順次国王陛下と王妃陛下に挨拶→全員の挨拶終了後、卒業生代表として殿下と私が二人で踊る→通常の夜会へと変わる。
というのが、本来の卒業パーティーの流れだったのよね。
ダンス開始まで時間がかかるから、父親以外の家族は後からやってくるのが普通。だから来賓の貴族も少なかったんだけど……
それでもやっぱり噂好きな貴婦人とかチラホラ来てましたからー。明日には全貴族が知ることになるわ!
前世の世界のオカンネットワークといい勝負なんだから! アナログな分だけなおさらすごいと感じるけど(笑)
「王都にいなくて大丈夫ですの? ハインリッヒ、貴方……外務大臣でしょう」
はい、お母様のツッコミ来たー。
「知らん! とりあえず、明日王城に行ったら関税と通行料を正規の金額に戻す手続きを進める」
やっぱりかぁ、これまで大分安くしてたみたいだからなぁ……
「まぁ、そうですのね。関税も通行料も正規の五分の一でしたから、これで領地も潤いますね」
マジか! お母様、ぶっちゃけてますやん(笑)
五分の一は安すぎるよ……お父様、思い切りがよすぎです。
「全くだ、だが陛下は最初、十分の一の金額を提示してきたからな。……ふざけやがって……」
ぎゃー! 国王陛下ってば何考えてんのよ! いや、辺境侯が力をつけすぎないようにとか考えたかもしれないけど!
ウチは私兵の数も多いから、お金かかるんだよ! 五分の一にしたお父様、さすがです! さす父ですわ!
「全く……だが、これで領地運営に余裕ができれば、新しいことが色々できますね」
「兄上の言う通りです」
おぉ、お兄様たち仲いい~。ところで色々って何かしら?
「ふふ……あのダメ王子を押しつけられるだけでなく、大切な収入源も抑え込まれておりましたが……ダメ王子のおかげで盛り返せますわ!」
オゥフ……お母様のやる気スイッチ入りましたわ。
「明日は議会が紛糾するだろうし、キャスバルも一緒に来い。やり込めてやる」
「はい! 我が領地に有利に話を進めましょう!」
お父様とキャスバルお兄様もやる気スイッチ入りましたー!
「お二人とも、頑張ってくださいね。私は領地に帰る準備をしたいと思っております」
私は私で色々やりたいことがありますから!
「…………そうか、準備か…………」
「はい、お父様」
えー、お父様なんでガッカリ感出してるのよ。何か問題があるのかしら?
……ぬぅ……思いつかないわ。
「領地に持ち帰るものを購入したいと思っておりますの。そのためにも時間が必要ですわ」
王都にしかないものとかあるかもしれないしー、ひょっとしたら誰か何か面白いものを作ってるかもしれないじゃん。
「エリーゼ、私に何か手伝えることはあるかい?」
トールお兄様が助っ人してくれるの? 助かるぅ!
「分かりません。ですが、お手伝いしてくださるなら嬉しいと思いますわ、トールお兄様」
「そうか、では明日は邸で声がかかるのを待つよ」
ニッコリ笑顔のトールお兄様は本当に優しげで、ご令嬢方が騒ぐのも分かるわ。
……よく見たら、我が家の人々って顔面偏差値高めなのよねー。
私の顔だって、可愛い系ではないけど美人顔だしね。
「ふむ……特に必要なものはあるか?」
お父様に聞かれて考える。
……うーん? 植物図鑑とか…………持ってないし欲しいけど、売ってるのかな?
よし、聞いてみよう!
「植物図鑑があれば、欲しいと思っておりますが……」
「また珍しいものを欲しがるな。だが確かにあれは王都でしか売っていないな。いいだろう、トール、一緒に行って買ってこい。ジャスパー商会で扱っているはずだ」
返事はっや! さす父!
トールお兄様が一緒なら、お金はお兄様が用意してくれるってことよね! ラッキー!
ジャスパー商会って、確か貴族よりも学者や魔術師相手の商売が多いって噂の商会だ。
図鑑とかこの世界じゃ珍しいし、学園でも見かけなかったのよね。
「エリーゼ、貴女どうして植物図鑑なんて欲しがるの?」
「お母様?」
やだ、思わず聞き返しちゃった。
「植物図鑑なんて、普通欲しがらないでしょう? 何かあるのかしら?」
ツッコミ鋭いわー(笑)
「えぇ、色々調べてやりたいことがありますの。できれば王都ではなく、領地で試したいと思っております」
嘘は言わないわよ! 本当だもん。
「試したい……一体何を試したいのかしら」
クッ! さらなるツッコミとか厳しいわ、ナンデヤネン。…………これはひょっとしたら、高価な本だからなのか?
そうだよ学園にないってことは、学園でも買えないような金額なんじゃないの? いや学園にある本は貴族からの寄付がほとんどだけど、寄付するのがもったいないくらいの本とか?
どちらにしても、高価なのは確定だな。
正直に話そう、それが一番早くて正しい気がする。
「そうですね、食べられる植物を調べたいと思っております。野菜や肉などと一緒に食べることで、何か効果が得られるものがあるのではないかと」
おっ? ちょっと興味ありそうな顔してるぞ。もう一押し行っとくか。
「また、何か加工することで食べる以外に使うこともできるのでは? と思っております」
「なるほど、エリーゼなりに思うことや気付いたことがあっての考えなのね。できればきっかけを教えてくれるとお母様、嬉しくてよ」
きっかけね……言うと食いつくかもだけど……言っとくか。
「はい。学園でポーションを作る授業がありまして、ある草の汁が手についたのですが、そのことに気が付いたのはかなり時間が経ってからでした。それも学友からの指摘によって気が付いたのです……その、一部分だけツヤツヤしてる……と」
「まぁ! ツヤツヤですって!」
お母様食いつきすぎー! やっぱり美容ネタは食いつくよねー(笑)
「はい、ツヤツヤです。ですので色々試したいのです。もちろんそれだけではありません。これは噂で聞いたのですが、巷には怪しげな薬が売られているとか……何も知らないより、知識はある方がいいと私は考えております。お母様、私の我が儘を聞いてくださいませ」
ペコリと頭を下げて、しおらしさアピール!
「そうね、知らないよりは知っている方がいいでしょう。その噂は私も聞いたことがあるわ。……知識があれば対抗策になるかもしれないのね……」
お母様ったら何か思うところがあるのか、無言になっちゃったわ。
何やら思案するお母様を見つめるお父様。
……やだ……何かしら、よろしくない雰囲気が漂ってる。
「父上も母上も何か思うところがおありのようだ、明日のこともあるし我々は解散しよう。トール、お前は後で父上の執務室に寄って金をもらっておけ。エリーゼ、もう遅い……早く寝た方がいい」
キャスバルお兄様、何か隠してるわね!
まぁ、いいや! 疲れてるし寝よう!
「えぇ、ではお先に失礼いたしますわ。お休みなさい、お父様、お母様、キャスバルお兄様、トールお兄様」
静かに立ち上がり、挨拶した順に近づいて頬にキスをする。って欧米かっ!
いや、やりますよ♪ 美形家族にチュウとか映画みたいじゃん♪
「ゆっくり、お休み」
「今日は大変だったわね、お疲れ様エリーゼ。いい夢を」
「安心して構わないよ。私もエリーゼの味方だからね」
「エリーゼ、明日は一日一緒だね、楽しみだ」
お母様とお兄様たちが優しい言葉をくれる。
もう、お父様がちょっぴり寂しそうにしてるじゃない。ハァ……お父様に向かってスマイル!
………………よし! 嬉しそう! さっ、寝よう(笑)
はいはい、自分の寝室ですよ。湯浴みも済ませて、寝間着ですわよ。お色気シーンはショートカットです。サービスなんて、しないんだからね!
……ただ今、一人きりの部屋で一人きりのベッドの上です。
目の前には枕がたくさんあります。ちなみに羽根枕ではありません。この世界に羽毛だとか羽根だとかはまだ流通しておりません。
基本、羊毛です。ヘンなところで古いのです。
今日の出来事を思い返して大きく息を吸う。すぅー。
「ふざけんなやクソがぁっ! なんも人前でやることあるかぁ! あったま悪い上に性格まで悪いとか、どうなっとんじゃあ! ただで済むと思うなよぉ! 顔だけ男のクセにぃ!」
はい、顔を枕に押しつけての絶叫です。つ・い・で・に、枕に思い切りワンパンじゃ!
バッスゥ!
…………え? なんで枕貫通してるの? しかも二個目の枕に拳が突き刺さってるし。
や……や……やばい! 私の拳、シャレになんない!
ハハハ……これは夢だ、夢に違いない。
そうだ、腕を上げてみよう。きっと目が覚めるはずだ。
………………あーっ! 一個目の枕がブレスレットのように腕にハマってる~。
しかも二個目はグローブのようになってる~。
夢じゃない……夢じゃないよ……ママン……
フゥ。ちょっと落ち着いて考えてみよう。エリーゼになってからの体力とか、なんかそのあたりを。
……なんか……ご令嬢にしては、かなりアクティブだった記憶が……
なんで、物心つく頃から片手剣(木製)振り回したり、小っさい弓で石の鏃がついた矢を撃ったりしてるの?
男の子みたいな格好でお兄様たちと一緒に駆け回ったり、お父様に馬に乗せてもらったり……
それだけじゃない……お母様から短剣の扱い方、仕込まれてましたぁ!
文武両道はお兄様たちだけじゃない、私もだわ!
黄金の右もお母様からの指導によるものだったわ。オッカナイ女だわよ、お母様ったら。
お父様とお母様は、お兄様たちだけじゃなくて私にも戦う術を教えてくれた。
武器を持って戦う術、素手で抗う術、戦略や戦術まで……人を騙す方法、騙されない方法、各種交渉術……さらに使える魔法は可能な限り高めて……
ベッドの上で息を整え、拳に軽く力を入れる。闘気が拳に集まっていくのを感じる。
腕にハマったままの枕を見つめ、そのまま流れるように拳を見つめる。
「私、鬼のように強かったんだわ……」
思わず口から出た言葉に、ちょっぴりダメージを食らう。あのバカ王子……殴らなくって、本当によかったぁ!
まぁ、よく考えれば陸側は国境だし山はあるわ谷もあるわだし。
海もあるでよ! の方は、沖からデカい魔物がやってくることがあるから漁師もキレやすくて荒っぽい人が多いしな。
……この国って、ウチと隣の領以外は海岸線が断崖絶壁な上に、海はシャレにならないほど険しい岩場に囲まれてて魔物が来ない代わりに船も近寄れないんだよね……
魔物が襲うのはウチと隣の領だけなんだけど、隣は遠浅だから、デカい魔物は滅多に来ないみたいなのよねーウラヤマシー。
ウチの領の海岸線だけ、急にガクンと深くなっててさ……デカい船とか入り込めるからだんだん船が集まって港になって……
気の荒い漁師の子どもたちとケンカしたりもしたっけ。
やだ、ヘコんでくるわー。頑張って令嬢感出してたけど、かなりアクティブだったよね。
ただアクティブってだけじゃない、根っこはかなり武闘派だ。
…………記憶をたどればたどるほど、見た目は令嬢なのに中身が……中身が残念すぎる! 昭和のヤンキー感がヒドイ!
まさに、細けぇことはいいんだよ! 難しいことは言わねぇで拳で語ろうぜ! みたいな……頭はいいけど、気を抜くと脳筋寄りになるって……エリーゼ様……アカンやん。
いや、性格が男前すぎて他の令嬢方からの人気がすごすぎる。あぁ……なんか思い出したらダメな記憶がたくさんある気がしてきた……
ダメだ、寝よう!
拳の突き刺さった枕を左手で押さえて抜く。
改めて見ても小っさくないなー厚みもあるわー。
フゥ……溜息しか出ない。
続いて腕にハマった枕をソーッと抜く。たぶん思い切り抜いたら中身が飛び出してダメな感じになるだろうからね。
ド真ん中にポッカリ穴の空いた枕を、ベッドの向こうに軽く投げる。
よし! 見なかったことにしよう!
もう一つの枕をチラッと見て、同じようにベッドの向こうに投げた。
私は何もしてない! 何も見てない! たとえ明日、怒られるとしても!
寝る! お休み!
婚約破棄・翌日
ギヤァァァァァア。
ギィィヤァァァァァァ。
………………うるせぇ!
ギヤァァァァァア。
ギィィヤァァァァァァア。
………………うるせぇんだよ! あー、おかげで目が覚めたわ。
なんなのよ、もう! 普通、朝はチュンチュンでしょうよ。
前世ではホルッホーとかピーヒョロロとかもあったけど。
………………………………うん?
この鳴き声、エリーゼが可愛がって餌やってた野鳥だ。
餌の要求鳴きか、なんて鳴き声なのよ。
とりあえず餌やりだ。サイドチェストを開けると干した果物がある。片手で鷲づかみにして、バルコニーへと出る。
瑠璃色の首長鳥で、見た目は実に美しい。
餌を片手ずつに分けて差し出すと、実に優雅に啄む……頭もよくて人気のある鳥なんだけど、捕まらないことでも有名な鳥なのよね。餌付けして、見て楽しむのがせいぜいだ。
ガッ。
ガッ。
…………どうやら、食べ終わった挨拶らしい。
グガァァァァァァ。
ギガァァァァァァ。
…………なんだ、その鳴き声…………分かってる、さようならの挨拶だと。
キラキラと光る瑠璃色の翼、長い尾羽は先に向かって色濃くなるグラデーション。
本当に美しく優雅……残念なのは鳴き声だけっ!
まぁ爽やかな朝だし、きっと今日はいい一日だ。部屋に戻って、侍女に支度してもらおう。
って…………うわっ‼
振り返って目に入ったのは、額に怒りマークがついてそうな笑顔のアニスでした。
両手には穴の空いた枕があり、存在感アピールしてました。
「おはようございます、エリーゼ様。この枕のことは今から奥様に報告してきますね」
‼ ヤバイ‼
「待って! やめて!」
「無理です。もう何個目だと思ってるんです? 奥様からもさんざん注意されてるのに! では」
確かにやってた! かなりの数、穴空けまくってた!
ここで止めたら、説教タイムが延びる! 私のバカ! ちゃんと思い出して対策しとかないなんてっ! …………腹を括ろう、女は度胸だ。
うぅ…………お母様の説教怖いよぅ……
報告されました。朝の支度を済ませた頃にお母様がいらっしゃいました。
…………お母様の説教は短かったです。ただ、今度穴を空けたら地獄の特訓ね♪ と素敵な笑顔で仰られました。
最悪です。どこぞのブートキャンプの倍以上厳しい特訓です。体力と精神力をガリガリ削る特訓です。
……気を付けよう……本当に。
さぁ! 気を取り直して、朝ごはんに行こう!
というわけで食堂到着……そうだ……ごはんの残念感のこと、忘れてた……
いかにも硬そうなパン(古代のパンのようだ……)、目玉焼き(塩振って、しっかり焼いてまーす)、焼き野菜(味付けなし)、茹でた肉(塩味)、野菜たっぷりスープ(うっすら塩味)、リンゴ(丸のまま置いてあります)。
この世界では、かなり豪華な朝食です。
………………塩味ばっかり、食ってられるか! 内臓やられるわ!
ちなみに朝はバラバラに食事とるんだよねー。今は私一人でテーブルについてます。
どーしよっかなぁ、トールお兄様呼んでもらおっかなぁ?
「エリーゼ、おはよう。今日は楽しみだね」
呼ばなくても来たぁ! 以心伝心ですわぁ!
「おはようございます、トールお兄様。高価な本を買っていただけると思うと、胸が高鳴りますわ」
カマかけたろ! 引っかかれ!
「うむ……皆、食事は済んだようだな。話があるが長引くかもしれん、サロンで話す」
サロン……いわゆる談話室ですわー。なんかね、面倒くさいです。
根っこが庶民だからかな? いちいち移動しなくてもいいじゃん! とか思っちゃうんですよ。
まぁ、面倒くさくても移動はしますけどね。
そんなわけで到着~♪ サロン、オシャレだな~。長椅子とかロマンチック~。
「皆、席に着いて楽にしなさい。今日エリーゼの身に起きたこととこれからのことを話す」
サロンの様々な場所に、個々人が気に入った椅子が置かれている。
エリーゼのお気に入りは寝椅子でした。ぐうたらですか? ぐうたらですね(笑)
寝椅子自体が柔らかめで、さらに枕よろしく大小様々なクッションが置かれてます。
ただでさえ座り心地がいいのに、パフンとクッションにもたれかかると、うっかり寝てしまいそうに……
パーラーメイドが紅茶を置いてくれました。
サロンや応接室がメインの職場となるパーラーメイド、誰も利用しないときは隅っこで立ちっぱらしいです。
大変ですね! 私には無理ですっ!
ちなみに紅茶はストレートティーです。砂糖もミルクもレモンもないです。
あー午後のやつとか飲みたーい。……ないものねだりですね、言ってみただけです。
お父様は一人用の大きめソファですっ、革張りの豪華な逸品です! カッコイイです! そんなお父様は、ハインリッヒって名前です。
お母様は布張りの長椅子に座ってます。可愛らしい花柄ですが、価格は可愛くないです。あの花柄、全部手描きなんですよ。しかも長椅子なんで結構な数があります。お母様はフェリシアですよ、可愛いお名前ですよね♪
そしてお兄様、その一。私、一人っ子じゃないんです。彼のお気に入りは、布製の一人がけの椅子です。
肘かけ付きの猫脚の椅子で、ちょっとオシャレなデザインに見えます。
お兄様その一、キャスバルいいますのん……
そのうちキャスバル兄さん! とか言っちゃいそうで脇腹痛い。
で、お兄様その二はというと。
布張りの一人がけソファです……この世界のソファって割と高さがあるんですよね。
喫茶店とかにありそうなやつですわ。
お兄様その二は、トールって名前です。言いやすい名前ですね。
ウチ、五人家族です。いや……祖父と祖母もいますが、領地の港街(二つあるけど小っさい方)にて暮らしてます。
仲が悪いわけじゃないですよ、単に祖母が老後は好きな魚食べて暮らしたいって言い出して、祖父がヨッシャ! かなえたろ! って感じで引っ越しただけですから。
ラブラブですか? ラブラブですよ! な老夫婦なんですよ。羨ましいこって! 憧れるわ!
……やだ、お話に突入してない。
「今日はエリーゼの卒業パーティーだったが、ジークフリート王子が開始直前に婚約破棄を宣言した。あまりにも勝手な言い分と振る舞いだったので、陛下がいらしてすぐにお暇させていただいた。ついでに言うと、領地に帰る宣言してきた」
お父様、簡単に言いすぎですぅー(笑)
パーティー開始→国王陛下祝辞→王妃陛下祝辞→卒業生が順次国王陛下と王妃陛下に挨拶→全員の挨拶終了後、卒業生代表として殿下と私が二人で踊る→通常の夜会へと変わる。
というのが、本来の卒業パーティーの流れだったのよね。
ダンス開始まで時間がかかるから、父親以外の家族は後からやってくるのが普通。だから来賓の貴族も少なかったんだけど……
それでもやっぱり噂好きな貴婦人とかチラホラ来てましたからー。明日には全貴族が知ることになるわ!
前世の世界のオカンネットワークといい勝負なんだから! アナログな分だけなおさらすごいと感じるけど(笑)
「王都にいなくて大丈夫ですの? ハインリッヒ、貴方……外務大臣でしょう」
はい、お母様のツッコミ来たー。
「知らん! とりあえず、明日王城に行ったら関税と通行料を正規の金額に戻す手続きを進める」
やっぱりかぁ、これまで大分安くしてたみたいだからなぁ……
「まぁ、そうですのね。関税も通行料も正規の五分の一でしたから、これで領地も潤いますね」
マジか! お母様、ぶっちゃけてますやん(笑)
五分の一は安すぎるよ……お父様、思い切りがよすぎです。
「全くだ、だが陛下は最初、十分の一の金額を提示してきたからな。……ふざけやがって……」
ぎゃー! 国王陛下ってば何考えてんのよ! いや、辺境侯が力をつけすぎないようにとか考えたかもしれないけど!
ウチは私兵の数も多いから、お金かかるんだよ! 五分の一にしたお父様、さすがです! さす父ですわ!
「全く……だが、これで領地運営に余裕ができれば、新しいことが色々できますね」
「兄上の言う通りです」
おぉ、お兄様たち仲いい~。ところで色々って何かしら?
「ふふ……あのダメ王子を押しつけられるだけでなく、大切な収入源も抑え込まれておりましたが……ダメ王子のおかげで盛り返せますわ!」
オゥフ……お母様のやる気スイッチ入りましたわ。
「明日は議会が紛糾するだろうし、キャスバルも一緒に来い。やり込めてやる」
「はい! 我が領地に有利に話を進めましょう!」
お父様とキャスバルお兄様もやる気スイッチ入りましたー!
「お二人とも、頑張ってくださいね。私は領地に帰る準備をしたいと思っております」
私は私で色々やりたいことがありますから!
「…………そうか、準備か…………」
「はい、お父様」
えー、お父様なんでガッカリ感出してるのよ。何か問題があるのかしら?
……ぬぅ……思いつかないわ。
「領地に持ち帰るものを購入したいと思っておりますの。そのためにも時間が必要ですわ」
王都にしかないものとかあるかもしれないしー、ひょっとしたら誰か何か面白いものを作ってるかもしれないじゃん。
「エリーゼ、私に何か手伝えることはあるかい?」
トールお兄様が助っ人してくれるの? 助かるぅ!
「分かりません。ですが、お手伝いしてくださるなら嬉しいと思いますわ、トールお兄様」
「そうか、では明日は邸で声がかかるのを待つよ」
ニッコリ笑顔のトールお兄様は本当に優しげで、ご令嬢方が騒ぐのも分かるわ。
……よく見たら、我が家の人々って顔面偏差値高めなのよねー。
私の顔だって、可愛い系ではないけど美人顔だしね。
「ふむ……特に必要なものはあるか?」
お父様に聞かれて考える。
……うーん? 植物図鑑とか…………持ってないし欲しいけど、売ってるのかな?
よし、聞いてみよう!
「植物図鑑があれば、欲しいと思っておりますが……」
「また珍しいものを欲しがるな。だが確かにあれは王都でしか売っていないな。いいだろう、トール、一緒に行って買ってこい。ジャスパー商会で扱っているはずだ」
返事はっや! さす父!
トールお兄様が一緒なら、お金はお兄様が用意してくれるってことよね! ラッキー!
ジャスパー商会って、確か貴族よりも学者や魔術師相手の商売が多いって噂の商会だ。
図鑑とかこの世界じゃ珍しいし、学園でも見かけなかったのよね。
「エリーゼ、貴女どうして植物図鑑なんて欲しがるの?」
「お母様?」
やだ、思わず聞き返しちゃった。
「植物図鑑なんて、普通欲しがらないでしょう? 何かあるのかしら?」
ツッコミ鋭いわー(笑)
「えぇ、色々調べてやりたいことがありますの。できれば王都ではなく、領地で試したいと思っております」
嘘は言わないわよ! 本当だもん。
「試したい……一体何を試したいのかしら」
クッ! さらなるツッコミとか厳しいわ、ナンデヤネン。…………これはひょっとしたら、高価な本だからなのか?
そうだよ学園にないってことは、学園でも買えないような金額なんじゃないの? いや学園にある本は貴族からの寄付がほとんどだけど、寄付するのがもったいないくらいの本とか?
どちらにしても、高価なのは確定だな。
正直に話そう、それが一番早くて正しい気がする。
「そうですね、食べられる植物を調べたいと思っております。野菜や肉などと一緒に食べることで、何か効果が得られるものがあるのではないかと」
おっ? ちょっと興味ありそうな顔してるぞ。もう一押し行っとくか。
「また、何か加工することで食べる以外に使うこともできるのでは? と思っております」
「なるほど、エリーゼなりに思うことや気付いたことがあっての考えなのね。できればきっかけを教えてくれるとお母様、嬉しくてよ」
きっかけね……言うと食いつくかもだけど……言っとくか。
「はい。学園でポーションを作る授業がありまして、ある草の汁が手についたのですが、そのことに気が付いたのはかなり時間が経ってからでした。それも学友からの指摘によって気が付いたのです……その、一部分だけツヤツヤしてる……と」
「まぁ! ツヤツヤですって!」
お母様食いつきすぎー! やっぱり美容ネタは食いつくよねー(笑)
「はい、ツヤツヤです。ですので色々試したいのです。もちろんそれだけではありません。これは噂で聞いたのですが、巷には怪しげな薬が売られているとか……何も知らないより、知識はある方がいいと私は考えております。お母様、私の我が儘を聞いてくださいませ」
ペコリと頭を下げて、しおらしさアピール!
「そうね、知らないよりは知っている方がいいでしょう。その噂は私も聞いたことがあるわ。……知識があれば対抗策になるかもしれないのね……」
お母様ったら何か思うところがあるのか、無言になっちゃったわ。
何やら思案するお母様を見つめるお父様。
……やだ……何かしら、よろしくない雰囲気が漂ってる。
「父上も母上も何か思うところがおありのようだ、明日のこともあるし我々は解散しよう。トール、お前は後で父上の執務室に寄って金をもらっておけ。エリーゼ、もう遅い……早く寝た方がいい」
キャスバルお兄様、何か隠してるわね!
まぁ、いいや! 疲れてるし寝よう!
「えぇ、ではお先に失礼いたしますわ。お休みなさい、お父様、お母様、キャスバルお兄様、トールお兄様」
静かに立ち上がり、挨拶した順に近づいて頬にキスをする。って欧米かっ!
いや、やりますよ♪ 美形家族にチュウとか映画みたいじゃん♪
「ゆっくり、お休み」
「今日は大変だったわね、お疲れ様エリーゼ。いい夢を」
「安心して構わないよ。私もエリーゼの味方だからね」
「エリーゼ、明日は一日一緒だね、楽しみだ」
お母様とお兄様たちが優しい言葉をくれる。
もう、お父様がちょっぴり寂しそうにしてるじゃない。ハァ……お父様に向かってスマイル!
………………よし! 嬉しそう! さっ、寝よう(笑)
はいはい、自分の寝室ですよ。湯浴みも済ませて、寝間着ですわよ。お色気シーンはショートカットです。サービスなんて、しないんだからね!
……ただ今、一人きりの部屋で一人きりのベッドの上です。
目の前には枕がたくさんあります。ちなみに羽根枕ではありません。この世界に羽毛だとか羽根だとかはまだ流通しておりません。
基本、羊毛です。ヘンなところで古いのです。
今日の出来事を思い返して大きく息を吸う。すぅー。
「ふざけんなやクソがぁっ! なんも人前でやることあるかぁ! あったま悪い上に性格まで悪いとか、どうなっとんじゃあ! ただで済むと思うなよぉ! 顔だけ男のクセにぃ!」
はい、顔を枕に押しつけての絶叫です。つ・い・で・に、枕に思い切りワンパンじゃ!
バッスゥ!
…………え? なんで枕貫通してるの? しかも二個目の枕に拳が突き刺さってるし。
や……や……やばい! 私の拳、シャレになんない!
ハハハ……これは夢だ、夢に違いない。
そうだ、腕を上げてみよう。きっと目が覚めるはずだ。
………………あーっ! 一個目の枕がブレスレットのように腕にハマってる~。
しかも二個目はグローブのようになってる~。
夢じゃない……夢じゃないよ……ママン……
フゥ。ちょっと落ち着いて考えてみよう。エリーゼになってからの体力とか、なんかそのあたりを。
……なんか……ご令嬢にしては、かなりアクティブだった記憶が……
なんで、物心つく頃から片手剣(木製)振り回したり、小っさい弓で石の鏃がついた矢を撃ったりしてるの?
男の子みたいな格好でお兄様たちと一緒に駆け回ったり、お父様に馬に乗せてもらったり……
それだけじゃない……お母様から短剣の扱い方、仕込まれてましたぁ!
文武両道はお兄様たちだけじゃない、私もだわ!
黄金の右もお母様からの指導によるものだったわ。オッカナイ女だわよ、お母様ったら。
お父様とお母様は、お兄様たちだけじゃなくて私にも戦う術を教えてくれた。
武器を持って戦う術、素手で抗う術、戦略や戦術まで……人を騙す方法、騙されない方法、各種交渉術……さらに使える魔法は可能な限り高めて……
ベッドの上で息を整え、拳に軽く力を入れる。闘気が拳に集まっていくのを感じる。
腕にハマったままの枕を見つめ、そのまま流れるように拳を見つめる。
「私、鬼のように強かったんだわ……」
思わず口から出た言葉に、ちょっぴりダメージを食らう。あのバカ王子……殴らなくって、本当によかったぁ!
まぁ、よく考えれば陸側は国境だし山はあるわ谷もあるわだし。
海もあるでよ! の方は、沖からデカい魔物がやってくることがあるから漁師もキレやすくて荒っぽい人が多いしな。
……この国って、ウチと隣の領以外は海岸線が断崖絶壁な上に、海はシャレにならないほど険しい岩場に囲まれてて魔物が来ない代わりに船も近寄れないんだよね……
魔物が襲うのはウチと隣の領だけなんだけど、隣は遠浅だから、デカい魔物は滅多に来ないみたいなのよねーウラヤマシー。
ウチの領の海岸線だけ、急にガクンと深くなっててさ……デカい船とか入り込めるからだんだん船が集まって港になって……
気の荒い漁師の子どもたちとケンカしたりもしたっけ。
やだ、ヘコんでくるわー。頑張って令嬢感出してたけど、かなりアクティブだったよね。
ただアクティブってだけじゃない、根っこはかなり武闘派だ。
…………記憶をたどればたどるほど、見た目は令嬢なのに中身が……中身が残念すぎる! 昭和のヤンキー感がヒドイ!
まさに、細けぇことはいいんだよ! 難しいことは言わねぇで拳で語ろうぜ! みたいな……頭はいいけど、気を抜くと脳筋寄りになるって……エリーゼ様……アカンやん。
いや、性格が男前すぎて他の令嬢方からの人気がすごすぎる。あぁ……なんか思い出したらダメな記憶がたくさんある気がしてきた……
ダメだ、寝よう!
拳の突き刺さった枕を左手で押さえて抜く。
改めて見ても小っさくないなー厚みもあるわー。
フゥ……溜息しか出ない。
続いて腕にハマった枕をソーッと抜く。たぶん思い切り抜いたら中身が飛び出してダメな感じになるだろうからね。
ド真ん中にポッカリ穴の空いた枕を、ベッドの向こうに軽く投げる。
よし! 見なかったことにしよう!
もう一つの枕をチラッと見て、同じようにベッドの向こうに投げた。
私は何もしてない! 何も見てない! たとえ明日、怒られるとしても!
寝る! お休み!
婚約破棄・翌日
ギヤァァァァァア。
ギィィヤァァァァァァ。
………………うるせぇ!
ギヤァァァァァア。
ギィィヤァァァァァァア。
………………うるせぇんだよ! あー、おかげで目が覚めたわ。
なんなのよ、もう! 普通、朝はチュンチュンでしょうよ。
前世ではホルッホーとかピーヒョロロとかもあったけど。
………………………………うん?
この鳴き声、エリーゼが可愛がって餌やってた野鳥だ。
餌の要求鳴きか、なんて鳴き声なのよ。
とりあえず餌やりだ。サイドチェストを開けると干した果物がある。片手で鷲づかみにして、バルコニーへと出る。
瑠璃色の首長鳥で、見た目は実に美しい。
餌を片手ずつに分けて差し出すと、実に優雅に啄む……頭もよくて人気のある鳥なんだけど、捕まらないことでも有名な鳥なのよね。餌付けして、見て楽しむのがせいぜいだ。
ガッ。
ガッ。
…………どうやら、食べ終わった挨拶らしい。
グガァァァァァァ。
ギガァァァァァァ。
…………なんだ、その鳴き声…………分かってる、さようならの挨拶だと。
キラキラと光る瑠璃色の翼、長い尾羽は先に向かって色濃くなるグラデーション。
本当に美しく優雅……残念なのは鳴き声だけっ!
まぁ爽やかな朝だし、きっと今日はいい一日だ。部屋に戻って、侍女に支度してもらおう。
って…………うわっ‼
振り返って目に入ったのは、額に怒りマークがついてそうな笑顔のアニスでした。
両手には穴の空いた枕があり、存在感アピールしてました。
「おはようございます、エリーゼ様。この枕のことは今から奥様に報告してきますね」
‼ ヤバイ‼
「待って! やめて!」
「無理です。もう何個目だと思ってるんです? 奥様からもさんざん注意されてるのに! では」
確かにやってた! かなりの数、穴空けまくってた!
ここで止めたら、説教タイムが延びる! 私のバカ! ちゃんと思い出して対策しとかないなんてっ! …………腹を括ろう、女は度胸だ。
うぅ…………お母様の説教怖いよぅ……
報告されました。朝の支度を済ませた頃にお母様がいらっしゃいました。
…………お母様の説教は短かったです。ただ、今度穴を空けたら地獄の特訓ね♪ と素敵な笑顔で仰られました。
最悪です。どこぞのブートキャンプの倍以上厳しい特訓です。体力と精神力をガリガリ削る特訓です。
……気を付けよう……本当に。
さぁ! 気を取り直して、朝ごはんに行こう!
というわけで食堂到着……そうだ……ごはんの残念感のこと、忘れてた……
いかにも硬そうなパン(古代のパンのようだ……)、目玉焼き(塩振って、しっかり焼いてまーす)、焼き野菜(味付けなし)、茹でた肉(塩味)、野菜たっぷりスープ(うっすら塩味)、リンゴ(丸のまま置いてあります)。
この世界では、かなり豪華な朝食です。
………………塩味ばっかり、食ってられるか! 内臓やられるわ!
ちなみに朝はバラバラに食事とるんだよねー。今は私一人でテーブルについてます。
どーしよっかなぁ、トールお兄様呼んでもらおっかなぁ?
「エリーゼ、おはよう。今日は楽しみだね」
呼ばなくても来たぁ! 以心伝心ですわぁ!
「おはようございます、トールお兄様。高価な本を買っていただけると思うと、胸が高鳴りますわ」
カマかけたろ! 引っかかれ!
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