婚約破棄されまして(笑)

竹本 芳生

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新天地を! 138

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「ハッハッハッ!早く昼メシにしよう!目出度い夜の祝いの席に領主が食べれないとかあり得んからな!さっさと食べて、夜は皆とたらふく食って飲まんとな!」

お祖父さまの言葉で私達も自分の席に着いて、出されたスープを口にする。
お祖父さまらしい仕切りに少しだけ笑う。お祖父さまだって心配してたのが分かる。だって普段は港の方に行ったり、邸の護衛騎士の訓練に行ったりと体を動かして食事の時間がずれ込むなんて日常茶飯事だもの。
それなのに今日はきっちり食堂で……食堂でワインを飲んでらしたようです。
お祖父さまの所にだけ、チーズとか何か置いてあるしワイングラスも汗かいちゃってる。

「エリーゼ、もう少し落ち着いて食事なさい」

「えっ?」

目線を落として手元を見れば、既にメインとなる魚のムニエルが半分以上無くなってた……
いつの間に?
チロリと視線をお母様に向ければ、お母様はまだ温野菜サラダを食べてた。
ソッと視線を彷徨わせれば、私だけがメイン食べてた……

「エリーゼ、美味しいかしら?」

「……分かり……ません」

お母様の問いにちゃんと答えれなかった。味わいもせずに食べてた……

「フェリシア、エリーゼは一刻も早く会いたくて心が何処かに行っていたのよ。そんな責めるような目をするものでは無いわ」

私……何も考えずにボンヤリと食べてた?無意識にただ、食べ進めて?

「たとえ心が何処かに行っていたとしても、料理を作ってくれた者運んでくれた者……材料を用意してくれた者達の事を蔑ろにするような事があってはなりません。感謝の気持ちと尽くしてくれた者達の為にも気持ち良く頂く事は大事な事なのです。エリーゼ、私達は生かされてるのです。笑顔で食事なさい」

全くその通りだ。神に感謝し、手を賭けてくれた人々に感謝する。
領主の娘だからこそ、尽くしてくれる人々に報いなければならない。

「はい。私が至らなかったです。肉も魚も何もかも、人の手に寄って私達の口へと来る事を失念してました。感謝の気持ちとして美味しく頂く事を忘れてました」

ナイフとフォークで切り分け、一口食べる。
ホロホロと口の中で崩れた魚の味はほんのり甘く、バターを吸った衣は僅かに塩っぱい。
添えてあるニンジンのグラッセをフォークで刺して口に運ぶ。
バターと砂糖で甘く煮てあるニンジンはホクホクとして、甘くて美味しい。こっちの野菜は香りが強くて、前世の子供の頃食べた野菜に似てる。
そしてお昼ご飯を済まし、またサロンへと戻った。
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