婚約破棄されまして(笑)

竹本 芳生

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連載

新天地を! 144

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刺繍は嫌いじゃない。他愛ない話しをしながら刺していく時間はどこかゆったりとしてるようだけど、全然ゆったりなんてしてない。
何せ話しながら刺繍を刺しているのだ、前世みたいにチャコペンで図案を軽く描いてから刺してるのと違ってソラで刺してるのだ。
下手なうちは歪んだり、めが荒くなったりと下手なのが丸わかりで注意されたけどもうそんな事は無い。
鮮やかな緑で刺繍した紋章は艶々として……天蚕の糸だから艶々で間違ってない。手布も天蚕の糸を織った物だった。
……正絹の艶めき……高級品じゃない!良いと思っテンノッ!
良いのか。うちが供給元になるだろうし、それこそ専売特許みたいな事になるだろうからなぁ……
そうしてルークのイニシャルを刺して、桜や桜の花びらを散らすように刺していく。
緑の紋章とイニシャルの周りの桜が控えめなのにどこか鮮やかで優しい印象になる。

「わぁ……素敵です!でも見た事無い花ですね」

「そうね、珍しい花ね。でもルークの知ってる花だから大丈夫よ」

私の言葉を聞いてチラリと私の、手元を見て怪訝なお顔をされたけど特に追求はされなかった。
きっと喜んでくれる……そう思いながら水面に浮かぶ乙川の花筏を思いだしながら刺していく。

刺し終わって枠を外し、手布を広げて見る。
緑色はルークの隊色でもある。そこに愛らしい桜の花と花びらが散っている。
バランスも悪く無い。

「ふふっ出ー来た♪」

「凄く美しいです……」

アニスが溜息混じりに褒めてくれる。

「ありがとう、アニスはどんな刺繍を刺したの?」

いったい何を……って紫の花にキースの名前!イニシャル所か名前ですか、アニスよ!その下に愛を込めてってメッセージ刺してある!愛が深くて処理できないわヨッ!

「エヘッ……思いの丈を込めて刺しました♡」

思いの丈……重いわよ。いや、情熱的って言わないとね。引いたら負けよ!

「素敵な仕上がりね!キース、喜ぶわよ」

そんな気がしてしょうがないです。私の勘がそう叫ぶ(笑)キースは結構なM男だと!でもフレイには負けるな!

「そう思いますか?思いますよね!あー……でもルーク様には負けちゃうかしら?」

「何が?」

ん?アニスったらなにか言ってるのかしら?

「側近は主至上主義な方が殆どなので」

「負けても良いじゃない、付き合いの時間が違うのだもの。アニスだってキースと私ではどちらが上なの?」

「そんなのエリーゼ様に決まってます!」

「ほらね。同じよ」

「そうですね!」

アニスと二人してコロコロと笑う。
だって本当の事だから。
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