婚約破棄されまして(笑)

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新天地を！ 143

……良し！何とか平静に乗り切ったわ！

「アニス、行き……そんな目で見ない！」

アニスよ……オシャレしてキメキメで可愛いのに……いつもより可愛いのに目が……目がギラついてます。

「キース……イイ……」

語彙力も無くなってるぅ！アニス、正気に戻ってェ！

「アニス！しっかりして！」

「うう……」

ダメだ、早くここから離れないと正気に戻らない気がする！
グイとアニスの手を掴んで邸を目指して歩く。
スタスタと歩いてエントランスに戻った所でアニスがしおしおな顔して私のドレスコートを脱がしてくれた。

「申し訳ありません……私ったら自分の事ばっかり……」

「良いわよ、それは私も同じだもの。アニス……夜まで待ちましょう、ね？」

「はい……」

とりあえず湯の館に突撃しないように見張っとこう。サロンで一緒にいればアニスが私を止めてくれるだろうし、アニスを止めるのは私の役目の筈！……お母様達がいればもっと安心なのだけど。
アニスはドレスコートをエントランスにいたドアボーイに手渡すと私の横に来た。

「どうしますか？お部屋に戻りますか？」

「いえ、サロンに行くわよ。このまま自室に戻っても、外が気になるでしょ？だったらサロンの方が気も紛れるでしょ」

「はい……」

こうしてサロンに入れば午前中と同じ顔ぶれが揃って待ってました。

「エリーゼ。今日はここでゆっくり過ごしましょう。お喋りも良いし、刺繍をしても良いでしょう？」

「はい。刺繍……そうですね、サロンで刺すのも楽しそうですね」

いつもは自分の部屋の中で黙々とやってたけど、サロンでお母様やお祖母さまと刺すのは楽しい気がするわ。

「お道具も糸も布も用意出来ております。アニス、あなたも刺しなさい」

エミリの言葉に一つ頷いてソファに座って待つ。そう、待つのです！アニスが手元に持って来てくれるのを！……貴族ってこういうのがね……面倒くさい。

「エリーゼ様、何を刺されますか？」

アニスが色糸を手に聞いてくる。
ルークに贈るなら紋章とイニシャル、後はワンポイント的なものかしら？ふむ……

「鮮やかな緑と深い緑、薄い桃色を持って来て頂戴」

「畏まりました」

鮮やかな緑で紋章を、深い緑でイニシャルを……そして周りに桜を刺そう。
この世界では見ない桜……
アニスに色糸を手渡され白い手布を枠を嵌め、刺し始める。