婚約破棄されまして(笑)

連載

新天地を！ 158

……慣れれば平気になるのかな……エリノユの街。
麓を見てソッと溜息を吐く。
さっき行った神社はここからでも分かる赤い鳥居が目印。その近くに大きな建物が二つ、エリノユ浴場とこの街を納める人の住まい。
街道沿いは基本的に大きめな建物でそれ以外は普通の一戸建てみたいな大きさ。
きっと作業や営業する場所の有無で変わるのかな。
蠢く隊員達はまだ手つかずな場所へと行ってる。
ん？一部はあの野営地だった場所で……って炊き出しっじゃなくて、お昼ご飯の準備してるのかな？

「やってるにゃ！」

「やってるにゃ？なぁに？トラジ何か知ってるの？」

トテトテと私の横に来たトラジが麓を見て大きな独り言を言ったから気になっちゃったわよ。

「なにかたべるものつくってるにゃ！ニオイがするにゃ！」

「フンフン……ニクとあまいニオイにゃ！」

タマはトラジの横にやって来て匂いを嗅いで判断してる。

「そうにゃ！ヤキニクとリンゴヤキにゃ！」

……焼き肉は分かる。リンゴヤキ……って焼き林檎の事か！
結構距離あるのに分かるんだ……

「ん～……ご主人！ちょっといってくるにゃ！」

トラジがキッ！と気合いを入れて叫ぶ。うん、そんな姿も可愛いです。

「良いよ」

「タマ！いくにゃ！」

「おうにゃ！」

タマとトラジが猫のように四つ足で駆け下りて行く。

「げんきピカ……」

ピカ太郎の呟きに少しだけ笑う。

「元気じゃなかったら困るでしょ」

「そうだったピカ……」

チラッと見たピカ太郎はスラ道に乗っかったまま駆けていく二匹を見ている。

「エリーゼ、俺達もそろそろ下に行くか」

「そうね……じゃあ、戻りましょう」

歩き出して下から上がって来る冷たい風を受ける。
この風が米作りには大事だと思う。風が無いと病気になるって川向こうの爺ちゃん（前世の村の人）が言ってた。
しかも海風だから（多分）お米が甘くなるかも。そこは期待しておこう。
……今、お米って何があったかな？何種類かあるんだよね……良く食べてるのは一番メジャーなやつだけど他にもあるしね。
品種改良って概念も無かった気がする。その辺もどうにかしたい。
イチゴの苗も石垣に植えたのは一種類だったし、ハウスも無いし……台風がある訳じゃないし、ガラスがあるなら温室作れるか……
待てよ……スーパー銭湯が出来たんなら、温室も作れるんじゃね？