婚約破棄されまして(笑)

連載

嫁入り支度 22

「その……婚姻し、新館に移っても週に一度はこちらに来て一緒に食事をとって欲しい。折角手元に帰って来たのに……こんなに早く婚姻するなんて……！」

まさかの男親の嘆き……いやボヤキが来るとは……いえ、私は週に一度所か三度は来ようと思ってました。
お父様が男泣きする前にちゃんと言っておこうっと。

「お父様、いつでも会える距離ですし食事だって一緒にとれる機会はもっとありますわよ」

ちょっとだけ潤んだ目で見られました。うん、そんな目で見られてもお母様と違ってどうフォロー入れて良いのか分からないので止めて下さい。

「うぅ……エリーゼェ……」

お父様が泣きそうです。アレク、何とかしてぇ！……ってムリそうです。お父様の後ろで「アニス……」とか呟いちゃってます。いや、アニスは毎朝頑張って本館の上級使用人用食堂に行くでしょうよ！キースもだけど！
何なの？年とると涙もろくなるって言うけど、それなの？

「お父様！それで良く王都で仕事出来ましたね……」

いや、本当に。お父様、外交で帝国に行ったりしてたのにちょっと離れるだけでションボリとか……

「領地に帰って来る間が楽しすぎて、離れるのが辛いんだよ……もっと一緒にあちこち行ったり、一緒にダンスを踊ったりしたかった……」

娘にベッタリしたい溺愛系パパになりたかったの？いや、ダメとは言わないけど……ダンスはキャスバルお兄様と死闘を繰り広げそうだから止めて下さい。

「そのうち出来ます」

多分、本当はいつでもやろうと思えば出来るんですよ。ダンスは本館のホールで踊れるし、あちこちだって婚姻前の今なら行ける筈なんですけど。でも行けないのはお父様の仕事が立て込んでたり、私の方が時間が取れなかったりするからかしら？

「婚姻式まで忙しいから無理だ……」

分かってるじゃないの。いや、それでも諦めきれないだけですね。

「お父様が時間をちゃんと取って下されば、私も合わせて時間を取ります。そしたらお出かけもダンスも出来ますから」

んー……？と考え込んだお父様。考え込むお父様は娘の目から見ても格好いいんですけど。

「そうだな……アレク、都合は付きそうか？」

「少し詰めたり回せば」

「そうか。じゃあ、頼む」

詰めるのは分かります。回すって……お兄様にかしら？ルークにかしら？まあ、どうにかなるのなら良いのかしら？