婚約破棄されまして(笑)

連載

嫁入り支度 42

カチャカチャと目の前に置かれていくラーメン丼。
ラーメンのスープは醤油。具材は炒められた野菜とミンチと生のニラと茶色くゴロッと存在感をアピールしてくるニンニク。
フフッ……一度スープを飲んでからトッピングを考えれば良いわ。
スプーン（レンゲはまだ無いけど、いずれ作らせるわ！）でスープを掬って啜る。
ん～！美味し～い！でも、もう少し辛いのが食べたいわ！

「ラー油を持ってきて頂戴」

近くにメイドが控えてるので、チラッと見て言うだけで……

「畏まりました、少々お待ち下さい」

気配がスッと消える。ンフフフ～ラー油チョイ足し久しぶり～。
待ってる間も楽しい。

「へぇ……ニンニクの欠片がそのままで入ってるのか。それに一度揚げてるのか？」

隣のルークがマジマジと具材を見ながら呟く。

「そうなのよ。揚げニンニクも足された野菜炒めと生のニラとミンチ。美味しいのよ～」

「お待たせ致しました」

メイドが私の側に小さなトレーをコトリと置いて下がる。相変わらずの食べるラー油ですが、やっぱり容器はキラキラしい。
トレーも豪奢なら容器も豪奢、添えられた小さなスプーンも凝っている。
容器の蓋（蓋付きなのよ！）を手に取り、スプーンで掬って食べるラー油を自分のラーメン丼の具材の上に載せる。
トロリと流れる朱色の油が食堂の灯りにキラキラと光って食欲が刺激される。

「エリーゼ、俺にも」

「はい」

スプーンをラー油の容器に刺して隣へとトレーを動かす。
ウキウキと食べるラー油を一杯二杯とラーメンに載せていくルーク。
え？辛くない？辛いの平気……なの？

「これ位かな～。俺、辛いの結構好きなんだよな」

「えっ？そうなの」

ルークが幸せそうにラー油で赤々とした所に箸を突っ込んでる。

「ほら、赤い鍋とかあったじゃん。実家帰ると食べに行ってた」

あぁ……と思い浮かべる。確かにあった。見た目が辛そうで結局食べずじまいだった鍋。一度スンドゥブなる物を頼んで、食べきれなかった事を思い出す。
手を動かして適度に混ぜ、麺を箸先でとって持ち上げる。
ホワリと上がる湯気に頬が緩む。
パラリと目の端に見えた髪の毛を慌てて空いた手で押さえつけて麺を啜る。

「ンふ～っ！」

やっぱり冬の夜食はラーメンに限る！しかもラー油でちょっと辛くなってるのも良い！
ストレート麺だけど、スープもちゃんと絡んでるし美味しい！
チュルン！と啜りきって鼻から抜ける香りも堪らない。
これこれ！この感じよ！堪らないわ！