婚約破棄されまして(笑)

連載

春が来た！ 98

さて、着替え終わって食堂に来ました。
……えーとデスね、ハッキリ言います。確かに一段落とした筈ですが、もう一段落とさないとダメな感じでした。
王国と帝国の違いとか、生まれた順番とか、様々な理由がありますが……ちょっと可哀想な気持ちになりました。
食堂入り口で佇むラーラルーナ様がちょっと切なそうです。

「……王国は立派なドレスを皆様着てらっしゃるんですね……」

小さな呟きだけど、ラーラルーナ様の声がハッキリと聞こえました。

「気落ちする事などありませんよ。王国の令嬢のみならずある程度の夫人も我が領のドレスメーカーへわざわざ発注をかけに来ますから」

は？お母様、それは初耳なのですが。
ほら！ラーラルーナ様もビックリしてるじゃないですか！

「あの……それは一体……」

「ホホホ……王国で流行を作り出しているのは我がシュバルツバルト領だと言う事です。その中でも我が領主館こそが最も優れ、最も美しいドレスを作り続けているのです」

「そうなんですのね……」

「それよりもラーラルーナ嬢、キャスバルの隣の空いてる席が貴女の席です。暫くはそこが貴女の席なので覚える様に」

「はい」

静々と歩き、キャスバルお兄様の隣の空いてる席に向かうとメイドがサッとイスを引きラーラルーナ様が座るタイミングでイスを押します。

「うむ、今日はキャスバルが帰ってきた事だし好物を出すように言ってある。ラーラルーナ嬢も良ければ我が家の食事を楽しんでほしい」

お父様がキメ顔で渋カッコイイ声で堂々と言ってます。が、今日の晩ごはんはから揚げをメインに組み立てたって事なんですね。
キャスバルお兄様が嬉しそうです。
から揚げとフライドポテト（くし切りが我が家のデフォです）の大盛り皿がドカンドカンと置かれて行きます。
サラダの入ったボウルが間に置かれて……サイズはから揚げの皿に比べたら一回り……いや二回りは小さいです。
スープだとか箸休め的な小鉢とかが個人の前に置かれていきますが、ラーラルーナ様がちょっと遠い目になってるのが気になります。大丈夫でしょうか？

「ああ、久しぶりだからご飯大盛りで」

キャスバルお兄様、ヤンチャ食いする気ですね。目がギラギラしてますよ。
聞いた話しだと野営では安全の為、揚げ物は出来ないらしいので我慢してたんでしょうね。
ラーラルーナ様が驚く前にお腹の虫が鳴らない内に晩ごはんスタートして下さい。お父様。