史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第一章 魔導学園入学編

2話 魔法と魔術

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 この世界には、魔力というものがあふれている。
 それを一般的には魔導という力に変換する。自分の力として扱う者を、魔導士と呼ぶ。

 さらに、魔力を使うものには魔術と魔法、二つの種類がある。

「では、復習だ。
 エラン、魔法と魔術の違いは?」

「はい!
 魔法とは、自分の中に流れる魔力を使う術のこと。
 魔術とは、大気中に流れる魔力を使う術のことです」

 この世界にあふれている魔力という力……しかし、それは人間の中にも流れている。
 すべての人間の中に、少なからず魔力は存在するのだ。

 もっとも、すべての人間が自分の中に流れる魔力を感じ取れるかは、また別の話だけど。
 中には、魔力を扱えず一生を終える人間も少なくないと聞く。

「そうだ。
 では、魔法と魔術、それぞれの利点と欠点を述べよ」

「はい!
 魔法の利点は自分の身の丈にあった力を使えること、欠点は自分の魔力が少なくなると不調をきたすこと。
 魔術の利点は自分の魔力以上の力を使えること、欠点は……ええと……」

 自信満々に答えるが、魔術の欠点を考えたところで言葉に詰まってしまう。
 自分の魔力しか使えない魔法より、魔術の方が利点が大きい。

 その、欠点か……
 自分の魔力を使えば、当然体力も減る。魔力を使い続ければ、体調を崩してしまう。それに比べて、大気中の魔力を使う魔術で不調をきたすことはない。
 集中力はめっちゃ使うけどね。

 ううんと考える私に、師匠は薄く笑う。

「時間切れだ」

「そんなぁ、聞いてないです!」

「言ってないからな」

 師匠は、意地悪に笑う。
 師匠め。たまにこうして、私で遊んでくるのだ。

「魔術の欠点、それは精霊の機嫌に左右されるってところだ」

「あぁ!」

 言われて、はっと気づく。そうだ、精霊さんだ!
 こんな大切なことを、忘れていたなんて! 当たり前すぎて逆に出てこなかったよ。

 そんな私の姿を見つめながら、師匠は続ける。

「魔術とは大気中の魔力を使うが、厳密には少し違う。
 精霊の力を借りて、魔力を使わせてもらうんだ」

 そう、この世界には目に見えない、"精霊"という存在がいる。目に見えないのだから、どんな姿をしているのかもわからない。
 精霊を通じて、大気中の魔力を使わせて"もらう"のだ。

 だから、そもそも精霊と心を通わせなければ、魔術は使えない。
 魔法より利点は多いが、魔法以上に扱うのが難しいとされている。

「ご機嫌取り、という言い方はよくないが。
 魔術は精霊頼りになるため、精霊の機嫌を損なうと使えない」

「機嫌、ですか」

「あぁ。そうだな……
 たとえば、エランが仲良くしている子が、実はものすごい悪いことをしていたら、どう思う?」

「それは……嫌ですね」

「そういうことだ」

 精霊は目に見えない……だから近くにいるのか、いないのかもわからない。
 でも、きっと精霊は、私たちを見ている。どこからでも、いつも見ている。そう、心構えるようにしている。
 実際、存在は感じられる。

 心を通わせた相手が、悪いことをしていたら、精霊だって嫌な気持ちになるだろう。
 そんな相手に、力を貸そうとは思わない。

 だから、精霊と心を通わせた者は……精霊に見限られない、自分に恥じない生き方を心がけるようになる。

「他にも、精霊の力が弱まる場所では、魔力を借りられない場合もある」

「そんな場所が、あるんですか?」

「あぁ。たとえば……毒のある空間、とかな。
 精霊が嫌う場所だ」

 精霊とは偉大なる存在だ。とはいえ、苦手なものがないわけはない。
 苦手な場所では、力は発揮できないということだ。

 例として、聖なる存在である精霊は、邪である毒を嫌う性質がある、と言われている。

「そういう場所では、逆に自分の魔力頼みになる、と」

「そう。己の魔力は、体調で変動しても場所には作用されないからな。
 だから、魔法や魔術、片方より両方を極めるのが、理想的だ。
 ちなみに、人や地域によっては魔術を精霊術とも呼ぶようだ」

「精霊術……」

 魔法も魔術も極める。簡単に言うけれど、それはとても難しい。

 私が師匠から、魔力について教わり始めたのは、果たしていつだったか。
 私から頼んだのか、師匠から言い出したのか。
 多分、私がねだったんだろうな。

「師匠は、魔術も魔法も使えるんですもんね」

「まあな。一応、それなりの術師のつもりだ」

「なら、精霊と仲良くなるコツとか教えてくださいよ!」

「自分で考えないと、それは意味ないことだから」

「ぶー」

 こう言って、師匠は肝心なことは教えてくれない。
 たまに、本当に精霊は存在するのか、と疑いたくなるほどだ。

 でも、それを意地悪とは思っても、だから嫌いになることはない。

「というか、エラン……キミは、すでに精霊と仲良しだろう。
 正直、時々エランが羨ましくなるくらいだ」

「えへっ」

「…………さて、魔法と魔術について、理解したか?」

「はい、師匠!」

 彼が、私の師匠だから。
 私の尊敬する、私の師匠だからだ。

 その後も、魔道士に必要なものなど、これまで習ってきたことを復習する。
 それにしても、今日はやけに、復習の多い日だな、と思った。師匠のやることだから、受け入れているけど。

 復習の多い理由……それは、その日の晩、明らかになった。
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