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転生魔王は友達を作る
尾行コンビ
しおりを挟む「さて……」
「……」
「……」
現在俺たちは、近くの公園に来ている。
俺は腕を組み仁王立ち、目の前のベンチにはあいと鍵沼を座らせている。
二人とも、気まずそうに視線をそらしていた。
「あ、あの、光矢クン」
「なんだ」
「私たち、なんで座らされてるんでしょうか」
「言わなきゃわからんか?」
「……わかります」
それに合わせて、鍵沼もこくこくとうなずく。
どうやら、こうなった原因はわかっているようだ。
俺が二人に問い詰めたいのは、もちろん尾行の件についてだ。
言っておくが俺は、怒ってはいない。
が、怒っていないのと今回の件を問い詰めないのとは、また別の話だ。
「で、お前らはいつから俺たちの後を追っていたんだ?」
「……最初から、です」
やはりか……大方、俺の考えていたとおりということらしい。
それにしても、最初からって……待ち合わせ時間、俺もさなも予定より早く合流したんだが……
「よく俺たちが合流する時間を知ってたな」
「ええと……私は、今日のデートのことさなちゃんに相談されてて。
で、さなちゃんなら、多分待ち合わせ時間より早く来るだろうな~って思って。
待たせたほうがいいよ~ってアドバイスはしたんだけど、一応行ってみたらやっぱりね。あはは……」
あいは、なるほどさなから相談を受けていたか。
まあ、デートを申し込んだあの場にはあいも一緒にいたし、帰宅後にあいに相談しても不思議はないか。
で、問題は……
「鍵沼は?」
そもそも、この男にはデートの情報なんて入ってこないはずだが……
はて、どこから嗅ぎつけたのか。
なぜか、あいの顔色が悪い。
「いやあ、それが、静海に相談されてさぁ」
「……あいに?」
あいが、鍵沼に相談? 今回のデートのことを?
どういうことだ?
あいに視線を向けると、うつむいている。
構わず、鍵沼は続ける。
「如月さんが、真尾にデートに誘われたから、どうしたらいいか的な相談を静海から受けてな。
で、そんときに待ち合わせ時間も聞いて。真尾なら、確実に時間より早く行くだろうなって思って」
「……あい」
「だ、だって、仕方ないじゃん!
さなちゃんから相談されたのはいいけど、私も男の子とデートした経験なんてないし……
だから、鍵沼に、男の子はどういうのが喜ぶのかとか、相談を……」
……つまり、さなの相談を受けたあいが、その相談を鍵沼にした、と。
これで、鍵沼もデートの件を知ることになった。
なんでそんなことを……と思ったが、あいもあいでわからないことが多かったということらしい。
「それにしても、なんで鍵沼なんかに……」
「なんかって」
「だって……こんなこと相談できるの、不本意だけど鍵沼くらいしかいないし……」
「不本意って」
他に、相談する異性がいなかった……ということらしい。
気軽に相談できたのが、鍵沼だと。
やっぱりこの二人の関係、よくわからん。
「じゃあ、二人はそれぞれ待ち合わせ時間より早めに来て、俺たちが来るのを待ってた、と」
「うん。あ、別に鍵沼と一緒に待ってたわけじゃないからね?
こそこそ、怪しい動きをしてたから放っておけなくてつい……」
「なにを!? 完璧な変装だっただろ!」
「どこがよ!」
二人で、ギャアギャアと言い合っている。
尾行中にこんな騒ぎを起こさなかったのは、なんだかんだ自分たちの立場をわかっていたのが大きいだろう。
俺は、小さくため息を吐いた。
「いや、別にいいんだ。さっきも言ったように怒ってないし……
ただ、こそこそしていたのが気になっただけだ」
怒っていない……そう伝えると、二人は安心したような顔になった。
「ただし、さなにもちゃんと話しておくように」
「ぅ……はい」
いくら心配だったからとはいえ、さなだってこそこそ見られていていい気はしないだろう。
二人に改めて忠告したことで、今日は解散となった。
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