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第二章 異世界っぽい世界で学校生活

第84話 嘘はきらいなので

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「こっほん……いやあ、さっきはお見苦しい姿をお見せしました」

「本当にな」

 呪詛状態から元に戻ったルーアの謝罪を聞きながら、達志たちはルーアの家に向かって歩いていた。
 若干赤くしたルーアの頬は、恥ずかしがっているからかそれともビンタの影響か。

 なんにしても、とりあえず元に戻って何よりだ。

「いや、別にいいけど。それにしても、まさか異世界人から現代技術についての指摘を受けるなんてな。
 すごいなんて言うか……迫力もあったし」

「あっはは、お恥ずかしい。あんなことしてる輩に人権なんてないと思ってるのが事実とはいえ」

 今度こそ照れ臭そうに笑うルーアだか、話の内容が物騒というか、切れ味がありすぎる。人権まで否定するとは。
 当のルーアは、鼻唄を歌いながら歩いている。
 どうやら今のは、ナチュラルに毒を吐いたらしい。天然毒吐きロリだ。

「ま、まあその話は置いとこう。それより、ルーアん家ってあとどれくらい?」

「あぁ、もうすぐですよ。そこの角を曲がって少しすれば……ゲホ! ゲホゲホっ! うぇっ!」

「!?」

 自宅まであとどれくらか、それを聞かれたルーアは、指をさす。言葉通り、そこの角を曲がるジェスチャーをしながら答えるが……
 突然、すんごいむせ始めた。

「ど、どうしたルーア! 大丈夫かっ?」

 口を押さえて激しい咳をするルーア、その様子に当然ながら慌てる達志。
 二人の様子は、周りからも若干注目を集めていた。

「だ、大丈夫です……これはそう、発作のようなもので……」

「発作!? ルーアお前、持病持ちなの!?」

 徐々に落ち着いていくルーアの口から、聞き逃せない言葉が聞こえた。発作だとは、初耳である。
 なんらかの病気か、それとも……

 悪い方へ悪い方へと考えがいってしまう達志に対して、しかし本人は冷静に対応する。

「だから大丈夫ですって。発作っていっても、タツが想像してるようなヤバいものじゃないですから」

 おろおろしている達志の肩をポンポンと叩き、落ち着くように促す。しかし、大丈夫とは言われても、そうもいかない。

「ほら見てください、あそこ。タバコを吸ってる人がいるでしょう?」

 落ち着いて落ち着いてと、なぜかルーアになだめられてしまう。とりあえず彼女の言う通り、指差す方向に視線を向ける。
 そこには、タバコを吸いながら歩いている人がいた。

「おう、そうだな」

「私タバコダメなんですよね。煙を吸うだけでもう……うぇっほん!」

「お前それ社会で生きづらくないか?」

 最近はどうか知らないが、道でタバコを吸っているなんて結構いるだろう。
 だというのに、この調子ではもはや心配の領域だ。

「だ、大丈夫ですよ、へへ……これくらい、なんてこたぁなんですよ」

「お前結構余裕だろ。あとそれを発作と呼んでいいのかは微妙なとこだが」

 思い返せば。タバコをどうのこうのと、先日猛と一会話あったところだ。
 この十年の間に、タバコを吸うようになった猛。達志同様タバコ嫌いだったはずだが、付き合いやなんかで吸い始め、今じゃ立派な喫煙者だ。

「まったく、周りの気持ちも考えてほしいですね。自分の周りの人間全て煙大好きとでも思ってるんでしょうか、まったくおめでたい」

「さっきから辛辣っすね……」

「私、嘘は嫌いなので!」

 どやぁ、となぜか誇らしげ。嘘が嫌いだというのはいい心がけではあるが。

「けど、俺の友達は、慣れれば悪くないもんだって言ってたぞ」

「私は慣れようとは思いませんねー」

 うげー、とルーアは、形のいい眉を寄せ、舌を出している。
 女の子がそんな顔するんじじゃありません。

「タツのお友達を悪く言うわけではありませんが……なぜ、タバコを?」

「付き合いがどうとか、言ってたなぁ」

「かーっ。体を悪くしないといけない付き合いなんて、ごめんこうむります」

「そういうわけにもいかんのだろ」

 人にはどうしても避けては通れない付き合いがあるし、そもそも好きで吸っている人だっている。
 ルーアほど、達志は正直者にはなれない。

「実は私の両親も、喫煙者だったのですが……はぁ、心労が堪えませんよ」

「へぇ、ルーアの両親……って、異世界人がタバコ?
 それって……」

「えぇ。この世界に来て、タバコという概念にハマって、吸うようになってしまったのです」

「お、おぉ……それはなんとも……」

 わりと思い切ったことまで、話してくれるルーア。
 それは達志と少しでも打ち明けられたからか、それとも元々こういう性格だからか。

 ルーアが話し、達志が聞く。そんな時間が、ふいに終わりを告げる。

「あ、あれが私の住んでる家です!」

 足を止める、ルーアが。嬉しそうに告げる、彼女の住んでる家がそこにあるのだと。ようやく……というほどの距離でもなかった。
 話し込んでいたおかげで、そんなに長くは感じなかった。

 ルーアの指した先……そこには、一軒のアパートがあった。住宅地から少し離れた位置に、建っていた。
 アパートの一室、そこにルーアは住んでいるというのだ。

 水色の外装であり、やや黒ずんでいるのが、アパートが建っている年月を思わせるようだ。
 ルーアの案内で、彼女の後ろを着いていく。二階に位置する、彼女の部屋へと向かって、階段を上っていく。
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