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書き換えその一 ジャックの盗みをやめさせたい①
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扉を開けて入ってきたのはまだ10歳くらいの女の子だった。おさげにした頭に黄色い帽子を被り、小学校の制服だろうか。白いセーラー服のような物に袖を通している。そしてその腕の中には一冊の本が大切そうに抱きかかえられていた。
縁はすぐさまその子に近寄り、しゃがんで目線を合わせる。
「いらっしゃいませお客様。どのようなご要件でしょうか。」
少女は答えない…。というより戸惑いと緊張で上手く話せないようすだった。
縁が言葉を続ける。
「どうやら本をお持ち頂いたようで…。ひょっとすると〝書き換え〟のご依頼でしょうか?」
『〝書き換え〟ってなんだろう…。』
少女はその言葉に小さくうなずき、初めて口を開く。
「あ、あの…えと…う、うわさで聞いて…。」
「そうですか。では詳しいことをお伺いしますのでこちらの席へどうぞ。」
そう言うと部屋の片隅にあるテーブルに誘導する。
少女を椅子に座らせると縁はこちらに近づいてきて栞に囁く。
「よかったら一緒にあちらのお客様のご依頼をお聞きしませんか?この店がどういうお店なのか知っていただけると思うので。」
栞はこの提案にのることにした。〝ご依頼〟も〝書き換え〟の意味も知りたかったし、なにより、あんな小さい子が一体何のために店を訪れたのか気になった。
「えぇ、ぜひお願いします。でも、あの子はいいと言うでしょうか。」
「ご心配には及びません。すでに許可はとってあります。」
そういうわけで栞と縁とその女の子の三人で円形のテーブルを囲んだ。
縁が少女に尋ねる。
「まずお名前からお教えください。」
「さ、斎藤 夕(ゆう)です。」
少女はうつむきがちに答えた。
「なるほど…。斎藤様ですね。ではどのような書き換えをご所望でしょうか」
そう言われた夕という少女は腕に抱いていた本をテーブルにそっと置く。その本の表紙には巨大な蔦(つた)のようなものを登っている少年の絵が描かれていた。
『ジャックと豆の木』
『ジャックと豆の木って主人公のジャックが豆の木を登って雲の上にいる巨人からお宝を盗んで大儲け…。みたいな話だったっけ』
縁が話を続ける。
「ジャックと豆の木ですか。いい物語です…。それでこのお話をどのように書き換えればよろしいのでしょうか。」
夕は初めて顔を上げて縁と目を合わせる。そしてしっかりした声で言った。
「ジャックくんの盗みをやめさせてほしいんです。」
縁はすぐさまその子に近寄り、しゃがんで目線を合わせる。
「いらっしゃいませお客様。どのようなご要件でしょうか。」
少女は答えない…。というより戸惑いと緊張で上手く話せないようすだった。
縁が言葉を続ける。
「どうやら本をお持ち頂いたようで…。ひょっとすると〝書き換え〟のご依頼でしょうか?」
『〝書き換え〟ってなんだろう…。』
少女はその言葉に小さくうなずき、初めて口を開く。
「あ、あの…えと…う、うわさで聞いて…。」
「そうですか。では詳しいことをお伺いしますのでこちらの席へどうぞ。」
そう言うと部屋の片隅にあるテーブルに誘導する。
少女を椅子に座らせると縁はこちらに近づいてきて栞に囁く。
「よかったら一緒にあちらのお客様のご依頼をお聞きしませんか?この店がどういうお店なのか知っていただけると思うので。」
栞はこの提案にのることにした。〝ご依頼〟も〝書き換え〟の意味も知りたかったし、なにより、あんな小さい子が一体何のために店を訪れたのか気になった。
「えぇ、ぜひお願いします。でも、あの子はいいと言うでしょうか。」
「ご心配には及びません。すでに許可はとってあります。」
そういうわけで栞と縁とその女の子の三人で円形のテーブルを囲んだ。
縁が少女に尋ねる。
「まずお名前からお教えください。」
「さ、斎藤 夕(ゆう)です。」
少女はうつむきがちに答えた。
「なるほど…。斎藤様ですね。ではどのような書き換えをご所望でしょうか」
そう言われた夕という少女は腕に抱いていた本をテーブルにそっと置く。その本の表紙には巨大な蔦(つた)のようなものを登っている少年の絵が描かれていた。
『ジャックと豆の木』
『ジャックと豆の木って主人公のジャックが豆の木を登って雲の上にいる巨人からお宝を盗んで大儲け…。みたいな話だったっけ』
縁が話を続ける。
「ジャックと豆の木ですか。いい物語です…。それでこのお話をどのように書き換えればよろしいのでしょうか。」
夕は初めて顔を上げて縁と目を合わせる。そしてしっかりした声で言った。
「ジャックくんの盗みをやめさせてほしいんです。」
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