『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―

文字の大きさ
61 / 499
獣人達の国

128:出オチ

しおりを挟む
「ん?どこか行くのか?」

 基本的には部位欠損を治す治癒に関する情報を集めているが、今日はたまたまキリーの店にいた。
 普段は外を歩き回って情報屋と会ったり、ちょっと黒い奴らと会ったりしているんだが、今のところそれらしいものは何もない。せっかくこの前収納具を売って金を作ったのに使う機会がない。
 …正直これほど見つからないとは思わなかった。ここは剣と魔法の世界だし、正直欠損の治癒なんてすぐにできるやつが見つかるだろうとも思っていた。

 もうこの街でやることが終わっているのでどうしようかと考えていたのだが、ふとキリーが外に出る準備をしたのが目に入った。

「ああちょっと冒険者ギルドにね」

 冒険者?もしかして依頼を受けるのか?本人曰く金級の冒険者らしいしおかしくはないだろう。だが、今から受けるにしても今日の店はどうするんだろうか?

「…依頼でも受けるのか?」
「まさか。依頼を受けるんじゃなくて依頼をしに行くんだよ」

 どうやら店で売っていないような食材は依頼として冒険者に頼んでいるらしい。なるほどな。たしかにこの店で扱ってるものを全部自分で揃えようとしたらかなり時間がかかるからな。
 だが俺はそこでふいに気づいたことがあった。

「…なあ、俺も一緒に行っていいか?」
「は?どうしたんだい?…まあ構わないけど、面白いものなんてないよ?」
「俺依頼を受けたことはあるんだけど、依頼を出したことがないからさ。一回どんな感じなのか知っておいたほうがいいなって思ってな」

 俺は治癒に関する情報を集めていたが、今まで自分が探す事しか思いつかなかったけど、依頼として探してもらうことも出来たんだと今更ながらに気づいた。だから依頼を出す方法を知っておきたかった。

「ふーん。ま、いいよって言っても特にこれと言ってやることなんてないんだけどね」
「俺も暇つぶしだから気にするな」

 依頼の出し方を覚えて今度依頼を出しておこう。今一緒に出しておけばいいんじゃないかとも思うけど、依頼を出した場合この街にとどまってなきゃいけない可能性もある。よく知らないうちに決めるのはまずいから話を聞いてからどうするか決めようと思っている。場合によってはその場で俺も依頼を出してもいいかもしれないけど。



「それではこちらが今回の依頼内容で間違いございませんか?」
「ああ、それで頼むよ」
「かしこまりました」

 受付はそういうと手慣れた様子で手続きを行った。

「さて、これでやることは終わりだけど…あんたはどうすんだい?」

 キリーは俺が何か依頼をしようとしていることに気がついていたようだ。俺は苦笑いしながら答えた。

「…そうだな。一応出しておこうかな」

 キリーみたいに物の受け渡しが必要なら一箇所に留まっていないとだけど、俺が求めているような情報であればいろんなところを点々としていても大丈夫らしい。定期的にギルドの寄らないといけないらしいが、それでも情報源は多いほうがいいだろう。

 ただ、問題なのは依頼料だ事実が確認でき次第で収納鞄一個でいいか?…幾つでも作れるし、収納魔術もスキルも使えるから俺としてはそれほどありがたみはないけど、一般人からしたらかなりの報酬だと思う。

「…できた。これでお願いします」
「…報酬は金銭と収納具とありますがよろしいのですか?」
「ええ。それでお願いします」
「かしこまりました。…一応報酬である収納具を確認させてもらいたいのですが、可能ですか?」

 書類を記入して提出。それを受付が確認する。こういうのは世界が変わっても変わらないもんなんだな。

「…確認いたしました。ではこれで受理させていただきます」
「お願いします」

 手続きが終わって依頼を出すことができたので、俺はキリーの方に振り返る。

「じゃあ帰るとするかね」
「ん。だな。…何か買うものとかはあるの──」
「おっ!なんだ。お前らここに来てたのかよ!声ぐらいかけてくれよな!」

 だが、俺たちが帰ろうとしたところで何故かガムラがやって来た。

「お前依頼を受けてたんじゃないのか?」

 朝からギルドに行ってくると言っていたからてっきり何か依頼を受けたものだと思っていたんだが。

「いや?明後日から大会だろ?怪我とかなんか無いように依頼には行かないでここの訓練場で鍛えてたんだ」

 俺はなんかの試合とか出たことないからわからないけど、印象としてはまるで受験前の追い込みみたいな感じなだな。

「俺たちはもう帰るんだが、お前はどうする?」
「あ?あ~、どうすっかな…。んじゃあ今日はこれで終わりにしとくか」
「そうか。なら待っててやるからさっさと荷物持ってこいよ」
「おう!」



「止まりな」

 四人で帰ったのだが、キリーの家の前に着くと突然キリーが警戒するように腰を落として腰にさしていた短剣を構え、それに従うようにガムラも即座に構えをとった。

 何があったのか分からないが、その様子からただ事では無いのは感じ取れる。俺は探知を広げキリーの家を範囲内に収める。

「…家の中に六人」
「分かるのかい?」

 その問いに俺はこくりと頷く。が、探知を行なったその結果に俺は顔をしかめる。

「どうする?」
「あの、少々失礼しますね」
「え? あ、ちょ……」

俺が呼び止める前にイリンは動き出し、まるで何事もないかのように玄関を開けるとその中へと入っていった。

「ちっ!」

慌てて追いかける俺と、その後に続くガムラ達だが……

「終わりました」

家の中に入ってイリンと敵の姿を探していると、横からいつも通りのイリンの声が聞こえ、床には見知らぬ男達が倒れていた。

……え? 今の一瞬で終わらせたのか?
しおりを挟む
感想 317

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。