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獣人達の国
123ー裏:里の様子
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「ねえウォルフ。ウースがどこにいるか知らない?」
特にやることもなく家でゴロゴロとしていると妻に声をかけられた。
この間のアンドウ関係の面倒ごとの対処もだが魔物の氾濫の事後処理とかで久々にまともに動いて疲れてんだ。これは仕方がねえことだ。
「あん?しらねえな。なんか用でもあったのか?」
「そういうわけじゃないんだけど、ちょっと気になって…」
そう気にする必要があるとは思えねえが…まあいい。どうせ暇なんだ。
「ちっと待ってろ」
俺は立ち上がって一旦家の外に出ると、思い切り雄叫びをあげてから家の中に戻る。
「これでそのうち戻ってくんだろ」
だが、夕食を過ぎてもウースが戻ってくることはなかった。
「おいウォード」
帰ってこなかったあのバカ息子が行くところといったら怪我をして試練から戻ってきたイリンの所ぐらいしか思いつかなかった。だから俺は次の日にウォードの家に行って聞くことにした。
「どうした?お前からくるなんて珍しいな。だがこっちも用があったからちょうどよかった」
「用だと?なんだ?」
俺が来るのが珍しいっつってるが、お前が俺に用があるってのも珍しいだろうが。チッ、面倒ごとってのは重なるもんだな。
「イリンがアンドウを追って里を出て行った。もう試練は終わってるし自由にしてもいいんだが、一応報告をしておこうと思ってな」
「……それはいつのことだ?」
「昨日だな。昨日の朝出て行った」
「…チッ!」
クソッ!ウースのバカが!…どこに行ったかわかっちまった。あのバカ、イリンを追って行ったな?
「どうした?イリンに用でもあったのか?もしくは何かまずいことでも…」
「用はねえ。…だがまずいっちゃぁまずいな。これは俺の家の問題だがな」
「問題…。それはお前がわざわざここにきたことと関係しているのか?」
「…ウースがいなくなった」
「なんだと?…まさか!?」
「多分予想通りだろうよ。…あのバカ、イリンを追って行ったんだろうな」
「すぐに追いかけて連れ戻さないとまずいことになるぞ!」
ウォードが騒いでるが、俺はウースの件で特に動くつもりはない。
「…そうだな」
「おいウォルフ!なんでそんなに落ち着いているんだ!このままじゃウースはアンドウにまた勝負を挑むことになるぞ!そうなったらお前の息子は掟破りに──」
「うるせえ!んなこたぁわかってんだよ!」
俺は長だ。そんなことは理解している。だが…
「止めてなんになる!どうせまた出て行くだけだ!…それにこれはあいつが選んだことだ。その結果追放されたとしても、死んだとしても文句はねえはずだ」
「だが…」
ウォードは何か言いたそうにこっちを見てるが、俺は譲るつもりはねえ。アンドウと決闘した後に俺はちゃんと言った。もしイリンのことでアンドウに関わったら、その時は掟破りとして対処するってな。その末の選択だ。それがあいつの選択だってんなら、それにどうこう言うつもりはねえ。
「……いいんだな?」
「……ああ。ウースがもし戻ってきたら拘束しろ。尋問後にその処遇を決める。里の奴らにそう伝えておけ」
それだけ言うと俺はウォードに背を向けて歩き出す。
「そう言うわけだ。ウースは出て行った。今後あいつが戻ってきたら拘束しろ。抵抗するようなら殺しても構わない」
俺は家に戻ると妻たちにウースのことを話した。こんな嫌な役目はやりたかねえが仕方がねえ。
「そんなっ……」
四人の妻は全員驚いているが、その中でも一人、驚きを通り越して顔を青くしている奴がいる。ウースの母だ。俺の子は腹違いといえど、全員四人の母親に育てられたようなもので、妻たちも全員を自身の子供のように接してきていた。だがそうは言っても実際に自分が産んだ子とそのほかでは差があったみたいだ。まあ当然だがな。
「…ど、どうにか──」
「俺は長だ。掟を守らせる立場の俺が自身の子だからと言って見逃すわけにはいかねえ。押し付けられた役割だとしても、長になる事を俺は認めたんだ。そして今までやってきた。だっつうのにこれで自分の子供は嫌だなんてなぁふざけてるとしか言えねぇだろ。そんなのは里の奴らが許さねえ」
その場に崩れ落ちる自分の妻を見て俺はその場から離れた。
しばらく歩いて森の奥に来たところで立ち止まる。
俺は自身の内側で暴れる感情を発散する為に近くにあった木に力任せに拳を叩きつけると、木は轟音をたてて倒れた。
「…チッ。バカ野郎め……」
もう会うことはないだろう。もし会ったとしても、その時はもう掟破りの敵になってるはずだ。長としての俺に、敵としてあいつが会ったのなら俺は殺さなきゃならねえ。だから…
「…もう帰ってくんじゃねえぞ──バカ息子」
特にやることもなく家でゴロゴロとしていると妻に声をかけられた。
この間のアンドウ関係の面倒ごとの対処もだが魔物の氾濫の事後処理とかで久々にまともに動いて疲れてんだ。これは仕方がねえことだ。
「あん?しらねえな。なんか用でもあったのか?」
「そういうわけじゃないんだけど、ちょっと気になって…」
そう気にする必要があるとは思えねえが…まあいい。どうせ暇なんだ。
「ちっと待ってろ」
俺は立ち上がって一旦家の外に出ると、思い切り雄叫びをあげてから家の中に戻る。
「これでそのうち戻ってくんだろ」
だが、夕食を過ぎてもウースが戻ってくることはなかった。
「おいウォード」
帰ってこなかったあのバカ息子が行くところといったら怪我をして試練から戻ってきたイリンの所ぐらいしか思いつかなかった。だから俺は次の日にウォードの家に行って聞くことにした。
「どうした?お前からくるなんて珍しいな。だがこっちも用があったからちょうどよかった」
「用だと?なんだ?」
俺が来るのが珍しいっつってるが、お前が俺に用があるってのも珍しいだろうが。チッ、面倒ごとってのは重なるもんだな。
「イリンがアンドウを追って里を出て行った。もう試練は終わってるし自由にしてもいいんだが、一応報告をしておこうと思ってな」
「……それはいつのことだ?」
「昨日だな。昨日の朝出て行った」
「…チッ!」
クソッ!ウースのバカが!…どこに行ったかわかっちまった。あのバカ、イリンを追って行ったな?
「どうした?イリンに用でもあったのか?もしくは何かまずいことでも…」
「用はねえ。…だがまずいっちゃぁまずいな。これは俺の家の問題だがな」
「問題…。それはお前がわざわざここにきたことと関係しているのか?」
「…ウースがいなくなった」
「なんだと?…まさか!?」
「多分予想通りだろうよ。…あのバカ、イリンを追って行ったんだろうな」
「すぐに追いかけて連れ戻さないとまずいことになるぞ!」
ウォードが騒いでるが、俺はウースの件で特に動くつもりはない。
「…そうだな」
「おいウォルフ!なんでそんなに落ち着いているんだ!このままじゃウースはアンドウにまた勝負を挑むことになるぞ!そうなったらお前の息子は掟破りに──」
「うるせえ!んなこたぁわかってんだよ!」
俺は長だ。そんなことは理解している。だが…
「止めてなんになる!どうせまた出て行くだけだ!…それにこれはあいつが選んだことだ。その結果追放されたとしても、死んだとしても文句はねえはずだ」
「だが…」
ウォードは何か言いたそうにこっちを見てるが、俺は譲るつもりはねえ。アンドウと決闘した後に俺はちゃんと言った。もしイリンのことでアンドウに関わったら、その時は掟破りとして対処するってな。その末の選択だ。それがあいつの選択だってんなら、それにどうこう言うつもりはねえ。
「……いいんだな?」
「……ああ。ウースがもし戻ってきたら拘束しろ。尋問後にその処遇を決める。里の奴らにそう伝えておけ」
それだけ言うと俺はウォードに背を向けて歩き出す。
「そう言うわけだ。ウースは出て行った。今後あいつが戻ってきたら拘束しろ。抵抗するようなら殺しても構わない」
俺は家に戻ると妻たちにウースのことを話した。こんな嫌な役目はやりたかねえが仕方がねえ。
「そんなっ……」
四人の妻は全員驚いているが、その中でも一人、驚きを通り越して顔を青くしている奴がいる。ウースの母だ。俺の子は腹違いといえど、全員四人の母親に育てられたようなもので、妻たちも全員を自身の子供のように接してきていた。だがそうは言っても実際に自分が産んだ子とそのほかでは差があったみたいだ。まあ当然だがな。
「…ど、どうにか──」
「俺は長だ。掟を守らせる立場の俺が自身の子だからと言って見逃すわけにはいかねえ。押し付けられた役割だとしても、長になる事を俺は認めたんだ。そして今までやってきた。だっつうのにこれで自分の子供は嫌だなんてなぁふざけてるとしか言えねぇだろ。そんなのは里の奴らが許さねえ」
その場に崩れ落ちる自分の妻を見て俺はその場から離れた。
しばらく歩いて森の奥に来たところで立ち止まる。
俺は自身の内側で暴れる感情を発散する為に近くにあった木に力任せに拳を叩きつけると、木は轟音をたてて倒れた。
「…チッ。バカ野郎め……」
もう会うことはないだろう。もし会ったとしても、その時はもう掟破りの敵になってるはずだ。長としての俺に、敵としてあいつが会ったのなら俺は殺さなきゃならねえ。だから…
「…もう帰ってくんじゃねえぞ──バカ息子」
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