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獣人達の国
152:治癒の方法
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「先程は愚息が申し訳ありませんでした。他者の命を救った者を侮辱するなどあってはなりません。殴られたとしても、それは当然でしょう」
それはとても一国の王の発言とは思えない。
いや、たしかに言っていること自体は正しいのかもしれない。
だが、それは同格の存在であった場合だ。もしくは多少なら格の差があったところで許されるのかもしれないが、殴られたのはこの国の王子で、殴ったのは一般人であり、そもそもこの国の国民ですらない旅人の俺だ。
どう考えても許されるようなことではないだろう。
「……よろしいのですか?」
だから俺はつい聞き返してしまった。
俺はお前の息子を──王子を殴ったが本当に罪に問わないのか?と。
「ええ。先ほども言いましたが、こちらから呼んでおいて侮辱するなどあってはなりません。そんな恥を晒す者を殴ったところで罪に問うつもりはありません」
その言葉は俺に向けられていたが、ちらりと向けられた視線から、その言葉は殴られたアグティースにも向けられているようだ。
「それで、話を戻しましょう。──治したいというのはそちらのイリンさんということですが、間違い無いですか?」
「え、ええ。そうです」
何事もなかったかのように進められる話に多少の混乱をしながら俺は頷く。
「なるほど。それならば構いません。治癒の秘法についてお話ししましょう」
『秘法』か。という事はなんらかの魔術具や回復薬じゃないのか。
となると魔術師か。よくいたなこの国に。
「この国には神獣という存在がいるのはご存じですか?」
神獣か。イリンの里の近くにいたのもそうだったよな?
「はい。強力な力を持った存在とそれを祀っている者達がいるのですよね」
「ええ。そのうちの一つに、どんな傷も病も治すことのできる存在がいます。その場所を教えましょう」
マジか……。まさかこんなところでわかるとは思いもしなかった。棚からぼたもちってこんな感じなのか?
まあいい。大会なんて無視して明日からでもその場所に行くか?
とりあえずはこの場からさっさと帰らないと。
「ありがとうございます」
「喜んでいただけたようで何よりです」
目の前の王は相変わらずなにを考えているのかわからない優しげな笑みを浮かべている。
だが、その姿からなんだか違和感を感じた。あの王女と対面していた時のような知らないところで利用されている、利用されようとしている感じだ。
「ただ、教えておいてなんですが、一つ問題があります」
きた。これが感じた違和感の正体かだろう。これから何か押し付けられるのか?
「あの一族は外部のものをほとんど受け入れません。我が国の領土内にありますが、実質他国と思ってくださって構わないほどです。そんな状況ですので、入る事は不可能ではないかと」
「そんなっ!?」
せっかく方法が見つかったと思ったのに会うことができないだと!?
「念のため言っておきますと、力尽くというのはやめておいた方がいいですよ?あそこのものは疲れを知らない、まさに不死身の戦士達が守っていますから」
不死身の正体。それはその身に宿した神獣の力だろう。神獣を祀る一族はその神獣の能力を宿すって聞いている。イリンの身体能力はそのせいらしい。それと同じで、回復の力を宿しているのだろう。
「……神獣に会う方法はないのでしょうか?」
十中八九答えてくれるだろうと思いながら訊ねる。
ここで断るような事はないだろう。だってそうすると俺を利用出来ないから。
そう考えると、俺の事も利用したいから神獣のことを教えたんだろう。
俺の利用方法として考えられる事は、その一族にあって何かしろってところだろう。それか件の神獣の力が篭った治癒の涙とか血とかそんな感じのを回収して来いってとこか?
「あります。大会に出る事です」
「は?」
大会? なんでその言葉がここで?
それがどうつながるのかわからなく、たまらず俺は聞き返してしまった。
「……大会ですか? 大会とは今やっている祭りの?」
「ええ。本日予選の一日目が終わって三日後に本戦が始まる大会です」
「……それがどう関係するのでしょうか?」
「実は今大会にはその一族の者が出場するのですよ。そこで力を認められれれば、彼らの里に入る事も可能になるはずです。彼らは認めた者であれば他種族でも受け入れますから」
それはイリンの里でもそうだったな。もしかして神獣を祀る一族ってのは全部がそんな感じなのか?
「全部というわけではありませんが、そういう者達が多いのは事実です」
!? こいつエスパーか!? 俺まだ何にも言ってなかったぞ!
俺が驚愕に眉をよせていると、グラティース王は王様らしくない様子で肩を竦めた。
「考えることは皆同じということです」
どうやらこいつ自身同じことを思ったことがあるようだ。それが本当かはわからないけどな。
「ですのであなたが大会に出てその一族の者と戦って勝てれば里に招いてもらえるのではないでしょうか?」
それだけか? もっと違う何かがあると思っていたんだが……。
いや待て。そもそもなんでこいつは俺を大会に出させたがる? 大会でなくとも戦うだけならの試合でもいいじゃないか。わざわざ大会である必要はないはずだ。
「そうですね! アンドーが大会に出るのでしたら人数の不足もなんとかなりそうですし!」
「今は私が話しているのです。少し静かになさい」
そう言われてシュンと落ち込むアルディス。
だが、人数の不足とは何だ? 話の流れからして大会の人数の事だよな? でも不足っていうのは? 予選で切り捨てるくらいなんだから定員割れってことはないだろ?
それに予選はまだ明日もある。なのに今の状態で悩んでいるとなると、今日の事で何かあったわけだが、そうなると……。
「……本戦辞退者が出た、か?」
それはとても一国の王の発言とは思えない。
いや、たしかに言っていること自体は正しいのかもしれない。
だが、それは同格の存在であった場合だ。もしくは多少なら格の差があったところで許されるのかもしれないが、殴られたのはこの国の王子で、殴ったのは一般人であり、そもそもこの国の国民ですらない旅人の俺だ。
どう考えても許されるようなことではないだろう。
「……よろしいのですか?」
だから俺はつい聞き返してしまった。
俺はお前の息子を──王子を殴ったが本当に罪に問わないのか?と。
「ええ。先ほども言いましたが、こちらから呼んでおいて侮辱するなどあってはなりません。そんな恥を晒す者を殴ったところで罪に問うつもりはありません」
その言葉は俺に向けられていたが、ちらりと向けられた視線から、その言葉は殴られたアグティースにも向けられているようだ。
「それで、話を戻しましょう。──治したいというのはそちらのイリンさんということですが、間違い無いですか?」
「え、ええ。そうです」
何事もなかったかのように進められる話に多少の混乱をしながら俺は頷く。
「なるほど。それならば構いません。治癒の秘法についてお話ししましょう」
『秘法』か。という事はなんらかの魔術具や回復薬じゃないのか。
となると魔術師か。よくいたなこの国に。
「この国には神獣という存在がいるのはご存じですか?」
神獣か。イリンの里の近くにいたのもそうだったよな?
「はい。強力な力を持った存在とそれを祀っている者達がいるのですよね」
「ええ。そのうちの一つに、どんな傷も病も治すことのできる存在がいます。その場所を教えましょう」
マジか……。まさかこんなところでわかるとは思いもしなかった。棚からぼたもちってこんな感じなのか?
まあいい。大会なんて無視して明日からでもその場所に行くか?
とりあえずはこの場からさっさと帰らないと。
「ありがとうございます」
「喜んでいただけたようで何よりです」
目の前の王は相変わらずなにを考えているのかわからない優しげな笑みを浮かべている。
だが、その姿からなんだか違和感を感じた。あの王女と対面していた時のような知らないところで利用されている、利用されようとしている感じだ。
「ただ、教えておいてなんですが、一つ問題があります」
きた。これが感じた違和感の正体かだろう。これから何か押し付けられるのか?
「あの一族は外部のものをほとんど受け入れません。我が国の領土内にありますが、実質他国と思ってくださって構わないほどです。そんな状況ですので、入る事は不可能ではないかと」
「そんなっ!?」
せっかく方法が見つかったと思ったのに会うことができないだと!?
「念のため言っておきますと、力尽くというのはやめておいた方がいいですよ?あそこのものは疲れを知らない、まさに不死身の戦士達が守っていますから」
不死身の正体。それはその身に宿した神獣の力だろう。神獣を祀る一族はその神獣の能力を宿すって聞いている。イリンの身体能力はそのせいらしい。それと同じで、回復の力を宿しているのだろう。
「……神獣に会う方法はないのでしょうか?」
十中八九答えてくれるだろうと思いながら訊ねる。
ここで断るような事はないだろう。だってそうすると俺を利用出来ないから。
そう考えると、俺の事も利用したいから神獣のことを教えたんだろう。
俺の利用方法として考えられる事は、その一族にあって何かしろってところだろう。それか件の神獣の力が篭った治癒の涙とか血とかそんな感じのを回収して来いってとこか?
「あります。大会に出る事です」
「は?」
大会? なんでその言葉がここで?
それがどうつながるのかわからなく、たまらず俺は聞き返してしまった。
「……大会ですか? 大会とは今やっている祭りの?」
「ええ。本日予選の一日目が終わって三日後に本戦が始まる大会です」
「……それがどう関係するのでしょうか?」
「実は今大会にはその一族の者が出場するのですよ。そこで力を認められれれば、彼らの里に入る事も可能になるはずです。彼らは認めた者であれば他種族でも受け入れますから」
それはイリンの里でもそうだったな。もしかして神獣を祀る一族ってのは全部がそんな感じなのか?
「全部というわけではありませんが、そういう者達が多いのは事実です」
!? こいつエスパーか!? 俺まだ何にも言ってなかったぞ!
俺が驚愕に眉をよせていると、グラティース王は王様らしくない様子で肩を竦めた。
「考えることは皆同じということです」
どうやらこいつ自身同じことを思ったことがあるようだ。それが本当かはわからないけどな。
「ですのであなたが大会に出てその一族の者と戦って勝てれば里に招いてもらえるのではないでしょうか?」
それだけか? もっと違う何かがあると思っていたんだが……。
いや待て。そもそもなんでこいつは俺を大会に出させたがる? 大会でなくとも戦うだけならの試合でもいいじゃないか。わざわざ大会である必要はないはずだ。
「そうですね! アンドーが大会に出るのでしたら人数の不足もなんとかなりそうですし!」
「今は私が話しているのです。少し静かになさい」
そう言われてシュンと落ち込むアルディス。
だが、人数の不足とは何だ? 話の流れからして大会の人数の事だよな? でも不足っていうのは? 予選で切り捨てるくらいなんだから定員割れってことはないだろ?
それに予選はまだ明日もある。なのに今の状態で悩んでいるとなると、今日の事で何かあったわけだが、そうなると……。
「……本戦辞退者が出た、か?」
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