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獣人達の国
187:祭りの終わり
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「あー……寝過ぎた……」
祭り自体はまだ続いているが、大会は昨日で終わったので今日は朝から起きることもなく昨日までの疲れを相殺するかのように惰眠を貪った。
とはいえ、時刻は既に正午を越えている。流石に寝すぎだろう。
こういう休日って眠いから寝てると、起きた時に後悔するんだよなぁ。
「おはようございます」
「──っ!?」
それまでは気配なんてなかったのに、突然かけられた声に驚き慌てて声のした方をみると、ベッドのすぐ横にイリンが立っていた。こんなにも近くにいたのに全く気がつかなかった……。
「……ずっとそこに居たのか?」
「はい」
「……何してたんだ?」
「特にこれと言って何かをしていたわけではありません。しいてあげるのであれば、ご主人様のお顔を見ていました」
「いつから?」
「起床後、キリーさんのお手伝いをしてからです。……どうかされましたか?」
「……ああ、うん。なんでもない」
キリーの手伝いってそんなに多くないよな? 今日は昨日に引き続き店は休みにするみたいだし、手伝いって言ったら朝食と掃除くらいだ。
なのにキリーの手伝いからずっといたってことは、どれだけ短く見積もっても六時間はそこにいたってことだ。
六時間。それは言葉にすればそれだけだが、一日の四分の一だ。そんな時間を見られ続けたということになる。
……あ、やばい。ちょっと背筋がゾクッときた……。
イリンの行動は今更だが、こう、注意していない時に来ると未だにちょっと戸惑う。
「あー、なんだ。悪かったな。起きるのを待っててくれたんだろ?」
そう好意的に解釈しておく。円滑な人間関係は何事も好意的に受け止めることが重要だからな。決してイリンが頭がアレだとか、精神が病んでるとかじゃない……こともないかもしれないけど、今回は違うだろう。そう思っておこう。
……まあそんな事はおいておけ。それよりも今日これからだ。
とは言ってもさっきも言ったとおり既に良い時間だ。これから動くにしても、使える時間はそう多くはない。
「一緒に祭りに行かないか?」
ふとイリンのことを見ていたらそんなことを口に出していた。
つい先日同じような事をしたわけだが、まさかまた自分から誘うとは思ってもいなかった。多分イリンの怪我を治すことに目処がついたおかげで、俺もいろいろと緩んでいるんだろうな。
「はい!」
イリンは俺の言葉を聞くと、ピンッと背筋だけでなく耳と尻尾までもを伸ばして返事をした。
普段よりも心持ち身綺麗にしてから、イリンと共にキリーの家を出ていく。
その際キリーに声をかけたほうがいいかと思ったんだが、キリーもガムラもいなかった。
「キリーさん達はお昼前にお出掛けになられました」
どうやらそういう事らしい。
ならば仕方がない、と店側の扉には鍵をかけて裏口から出ていくことにした。少々無用心かもしれないけど、キリーにもそれで構わないって言われてるし平気だろう。一応魔術具を使って扉の隠蔽をしてきたし。
「じゃあ行こうか」
「結構いろんなものがあるな」
こうして改めて祭りを回ってみるとかなりいろんな種類の出店が出ており、俺はそこに書かれている商品の名前や絵のほとんどに見覚えがなかった。それだけで俺がどれだけ周りを見ていなかったか、見えていなかったかが分かる。
「街全体を回るのは時間が足りませんので、ある程度決めてから行動した方が良いかと思います」
俺の呟きにイリンがそう答えた。
確かにそうだな。まあ時間がなくなったのは俺のせいなんだからなんとも言えないけど。
でも、ある程度決めるにしても、俺はどこに何があるのかまったく知らないのだから決めようがない。前回の回った時のことなんて緊張しすぎて全然覚えていない。精々が肉料理を買って二人で食べた位しか覚えていない。加えて言うならその料理の名前すら知らない。
だから、ここはイリンに任せた方がいいだろう。こういう時にエスコートできないのは情けない限りだが、迷った挙句たいして楽しめないんなら初めから任せてしまった方がいい。
イリンもそれ程詳しくは知らないかもしれないが、少なくとも俺よりも詳しいだろうから。
「どこか行きたい場所とかあるか? 悪いけど、どこに何があるかわかってないんだ」
「……でしたら大通りを歩くのが良いのではないでしょうか? 大通りからそれた場所には変わったものもありますが、それはまたの機会にした方がよろしいかと」
イリンは一瞬だけ目を細めた後にそう言った。
イリンの言うように、流石に街全体で開かれている祭りを数時間で制覇というのは不可能なので、大通りだけというのは妥当なところか。
「ん、じゃあそうしようか」
初めて参加したこの国、というか世界の祭りだが、日本にいた時に参加したものと似ていた。祭りなんてどこでやってもそんなものだと言われてしまえばそれまでだが。
違いといえば日本みたいに所狭しとは並んでいない事だろうか。店舗の間隔がそれなりに取られていて、作業場自体も数人が動き回れるほどには確保されていた。
祭りを回って思ったことは、やたらと肉料理系の店が多いということだった。この祭りの出店のほとんどが肉料理と酒を扱う店で満たされている。十軒ぐらい肉料理が並んだ時は「流石だな……」なんて妙な関心をしたくらいだ。
とはいえ、その店達は全て違うものだ。使っている肉が違ったり味付けが違ったり。
以前に別の場所でもあったように特定種族専用の料理もあって、やっぱりというべきかイリンはそれが気に入ったらしい。なので、俺はそれをまとめ買いして収納の中に入れておいた。
……でもこれだと俺が出さないとイリンが好きに食べることができないんだよな。今度食べ物用の収納具でも作っておくか?
「そろそろ日が暮れるな」
「そうですね……」
もう祭りは終わる。これで鐘がなれば明日からは日常に戻ってしまう。楽しい時間は永遠には続かない。その事を少しだけ寂しく思った。
「帰ろうか」
「はい」
祭り自体はまだ続いているが、大会は昨日で終わったので今日は朝から起きることもなく昨日までの疲れを相殺するかのように惰眠を貪った。
とはいえ、時刻は既に正午を越えている。流石に寝すぎだろう。
こういう休日って眠いから寝てると、起きた時に後悔するんだよなぁ。
「おはようございます」
「──っ!?」
それまでは気配なんてなかったのに、突然かけられた声に驚き慌てて声のした方をみると、ベッドのすぐ横にイリンが立っていた。こんなにも近くにいたのに全く気がつかなかった……。
「……ずっとそこに居たのか?」
「はい」
「……何してたんだ?」
「特にこれと言って何かをしていたわけではありません。しいてあげるのであれば、ご主人様のお顔を見ていました」
「いつから?」
「起床後、キリーさんのお手伝いをしてからです。……どうかされましたか?」
「……ああ、うん。なんでもない」
キリーの手伝いってそんなに多くないよな? 今日は昨日に引き続き店は休みにするみたいだし、手伝いって言ったら朝食と掃除くらいだ。
なのにキリーの手伝いからずっといたってことは、どれだけ短く見積もっても六時間はそこにいたってことだ。
六時間。それは言葉にすればそれだけだが、一日の四分の一だ。そんな時間を見られ続けたということになる。
……あ、やばい。ちょっと背筋がゾクッときた……。
イリンの行動は今更だが、こう、注意していない時に来ると未だにちょっと戸惑う。
「あー、なんだ。悪かったな。起きるのを待っててくれたんだろ?」
そう好意的に解釈しておく。円滑な人間関係は何事も好意的に受け止めることが重要だからな。決してイリンが頭がアレだとか、精神が病んでるとかじゃない……こともないかもしれないけど、今回は違うだろう。そう思っておこう。
……まあそんな事はおいておけ。それよりも今日これからだ。
とは言ってもさっきも言ったとおり既に良い時間だ。これから動くにしても、使える時間はそう多くはない。
「一緒に祭りに行かないか?」
ふとイリンのことを見ていたらそんなことを口に出していた。
つい先日同じような事をしたわけだが、まさかまた自分から誘うとは思ってもいなかった。多分イリンの怪我を治すことに目処がついたおかげで、俺もいろいろと緩んでいるんだろうな。
「はい!」
イリンは俺の言葉を聞くと、ピンッと背筋だけでなく耳と尻尾までもを伸ばして返事をした。
普段よりも心持ち身綺麗にしてから、イリンと共にキリーの家を出ていく。
その際キリーに声をかけたほうがいいかと思ったんだが、キリーもガムラもいなかった。
「キリーさん達はお昼前にお出掛けになられました」
どうやらそういう事らしい。
ならば仕方がない、と店側の扉には鍵をかけて裏口から出ていくことにした。少々無用心かもしれないけど、キリーにもそれで構わないって言われてるし平気だろう。一応魔術具を使って扉の隠蔽をしてきたし。
「じゃあ行こうか」
「結構いろんなものがあるな」
こうして改めて祭りを回ってみるとかなりいろんな種類の出店が出ており、俺はそこに書かれている商品の名前や絵のほとんどに見覚えがなかった。それだけで俺がどれだけ周りを見ていなかったか、見えていなかったかが分かる。
「街全体を回るのは時間が足りませんので、ある程度決めてから行動した方が良いかと思います」
俺の呟きにイリンがそう答えた。
確かにそうだな。まあ時間がなくなったのは俺のせいなんだからなんとも言えないけど。
でも、ある程度決めるにしても、俺はどこに何があるのかまったく知らないのだから決めようがない。前回の回った時のことなんて緊張しすぎて全然覚えていない。精々が肉料理を買って二人で食べた位しか覚えていない。加えて言うならその料理の名前すら知らない。
だから、ここはイリンに任せた方がいいだろう。こういう時にエスコートできないのは情けない限りだが、迷った挙句たいして楽しめないんなら初めから任せてしまった方がいい。
イリンもそれ程詳しくは知らないかもしれないが、少なくとも俺よりも詳しいだろうから。
「どこか行きたい場所とかあるか? 悪いけど、どこに何があるかわかってないんだ」
「……でしたら大通りを歩くのが良いのではないでしょうか? 大通りからそれた場所には変わったものもありますが、それはまたの機会にした方がよろしいかと」
イリンは一瞬だけ目を細めた後にそう言った。
イリンの言うように、流石に街全体で開かれている祭りを数時間で制覇というのは不可能なので、大通りだけというのは妥当なところか。
「ん、じゃあそうしようか」
初めて参加したこの国、というか世界の祭りだが、日本にいた時に参加したものと似ていた。祭りなんてどこでやってもそんなものだと言われてしまえばそれまでだが。
違いといえば日本みたいに所狭しとは並んでいない事だろうか。店舗の間隔がそれなりに取られていて、作業場自体も数人が動き回れるほどには確保されていた。
祭りを回って思ったことは、やたらと肉料理系の店が多いということだった。この祭りの出店のほとんどが肉料理と酒を扱う店で満たされている。十軒ぐらい肉料理が並んだ時は「流石だな……」なんて妙な関心をしたくらいだ。
とはいえ、その店達は全て違うものだ。使っている肉が違ったり味付けが違ったり。
以前に別の場所でもあったように特定種族専用の料理もあって、やっぱりというべきかイリンはそれが気に入ったらしい。なので、俺はそれをまとめ買いして収納の中に入れておいた。
……でもこれだと俺が出さないとイリンが好きに食べることができないんだよな。今度食べ物用の収納具でも作っておくか?
「そろそろ日が暮れるな」
「そうですね……」
もう祭りは終わる。これで鐘がなれば明日からは日常に戻ってしまう。楽しい時間は永遠には続かない。その事を少しだけ寂しく思った。
「帰ろうか」
「はい」
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