『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―

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獣人国での冬

189:問題発生?

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「家具探しって言ってもすぐに終わったな」
「そうですね」

 家具を用意しようと思っても家具屋が分からなかったので、聞こうと思って適当にそこらへんの店に行ったのだが、どうやらこの世界では家具の作り置きはしていないらしかった。家具が欲しい場合は専属の商人に話を持っていくか、どこかの工房に直接行って作ってもらうのだと言う事だ。

 俺たちに専属の商人なんているはずもなく、直接教えてもらった工房に行ったのだが、予約が入っているのですぐに作る事はできないと言われてしまった。
 せめてどうにかイリンのベッドだけでも作って貰えることになったが、他は最低でも一週間はかかるらしい。

 そんなわけで、注文はしたが家具探しは始まって一時間足らずで終わってしまった。
 まあ、一応明日以降細かいサイズやデザインを書いたものを持っていかなくちゃいけないんだけど、少なくとも今日やる事は終わりだ。

「この後はどうするか……」

 だいぶ時間が空いてしまったのでそのまま適当に歩いていると、ふと視界に冒険者ギルドの建物が見えた。

 ……そういえば、 確か俺って依頼出してなかったっけ?

 ふと、そんな事を思い出した。

 イリンの怪我を治すために何かしらの情報が集まらないものかと思って、部位欠損の治療法に関する情報収集の依頼をだしていたのだが、もうコーキス達の里にいる神獣が治せるってことも、その神獣に会うための手筈も整ったので依頼は必要ないだろう。
 であれば、依頼は解除? 解約? まあしておいた方がいいだろう。

「イリン。悪いんだが、ちょっとだけ付き合ってくれ」
「はい。どこへでもご一緒します」

 いつも通り悩むことすらないイリンの返事を受けて俺は冒険者ギルドの中に入っていく。

 建物の中には、一見するとチンピラ達のたまり場にしか見えない食事どころが併設されており、そこには強面のオッサン達がたむろしている。

 以前見た時よりも人が多く感じるのは気のせいだろうか?

 そんなことを思いながら受付に行こうとするが、俺達の道を塞ぐように冒険者が立ちはだかった。

 ……えっ? 今更イベント発生?

 俺は何度か来た事がある筈なのに、今になって絡まれる理由がわからない。知らずのうちに不況を買うようなことをしていたのだろうか?

 一応穏便に済ませるつもりではあるが、何があっても対応できるように少しだけ警戒を強めるが、後ろにいたはずのイリンの気配が変わった。
 具体的には探知圏内の筈なのにその存在が薄れて感じづらくなっている。まあいつものことといえばいつもなんだが、俺が警戒しなくちゃいけないのは目の前の冒険者よりも、イリンがやり過ぎないように気をつけないといけないのかもしれない。

 と、俺はそんな事を考えながらそいつらに話しかける。

「何か用でしょうか?」

 俺もこの世界に馴染んできたからか、敬語を使って話す事は減ってきたものの、初対面のやつには未だに敬語が出てしまう。それが悪いってわけじゃないんだけど、この場ではちょっと場違い感がする気がするな。

「アンドウ、でいいんだよな?」
「ええ。そうですが」
「そうか。──おめでとう!」
「……は?」

 目の前の強面が、いきなりニカリと笑って祝ってきた。わけが分からない。

 聞いてみると、先日の大会は人間族が優勝した事はほとんどないらしい。だから人間族である俺が勝った事を祝いにきたのだと言う。赤の他人にそんな事をするのかと思ったが、この国では強いやつに敬意を払うのは普通なので、そう言う行動をしても不思議に思われないそうだ。

 その後も何人かが同じように俺の側にやってきたが、そのせいでまったく前に進めないでいる。

 俺を敬っているのはわかるけど、ほどほどにしてくれないだろうか?


「えっと……お疲れ様です?」
「ああ、ありがとうございます」

 集まってくる冒険者達をやり過ごして受付にたどり着く事ができた。まだそんなに動いていない筈なのに、もう大分疲れた。

「それと、大会おめでとうございました、アンドウ様。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「少し前に依頼を出したんですけど、その取り消しって出来ますか?」
「はい、出来ますよ。依頼はおひとつでよろしいですか?」
「はい」
「それでは、少々お待ちください」

 そのまま待っていると、少し困った表情の受付嬢が戻ってきた。

「ご依頼の破棄についてなのですが、現在報告待機中の方が一人います」

 どうやら俺が出した依頼は受けた奴がいたようだ。だが、俺がしばらくギルドにこなかったから報告できずにいたと言う。
 まあ俺自分の家とか無かったし、キリーの家を俺の住所として登録するわけにもいかなかったから連絡先は無登録のままだったんだよなぁ。 

「ですので、ご依頼の破棄はその方とお話しして頂かないとならないのですが……」
「分かりました。ではその依頼を受けた方と連絡は取れますか?」

 もう依頼を受けた奴がいるなら仕方がない。というか俺が依頼を出して受けてくれたんだから仕方がないどころか、寧ろありがたい事だ。
 それに、神獣の元に行けば怪我が治るとは聞いているが、もしかしたら治らない可能性、というものがある。
 その場合に備えてもう一つ手段があったとしてもいいだろう。

 神獣のところに行って治ったのなら、もう一つの手段の方はいざというときにとっておけばいい。決して無駄にはならないだろう。

「それが、先ほどまではいらっしゃったのですが、帰ってしまわれたようで……。毎日同じ時間にいらっしゃいますので明日は今よりも早く来ていただければ会えるかと思います」
「分かりました。ではまた明日来ることにします」
「では受注者の方にはその事をお伝えして引き留めておきますね」
「お願いします」



 というわけで、次の日また冒険者ギルドにやってきたのだが……

「どういうわけよ! 依頼の破棄だなんて! 絶対に認めないわよ」

 ギルドの個室に案内されて部屋の中に入ると、中にいた人物に開口一番そう言われた。

 ……なんかめんどくさそうな気がするんだが、気のせいだよな?
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